特集未来に向けた自然尊重の取り組み
――「2049」万科館のエコパビリオン
 
 

 

施然=文・写真

科学技術は私たちの未来の生活に無限の可能性をもたらす一方、避け難い災難をも予感させる。この迫り来る近未来の「現実」に万博会場の「2049」万科館は五つの「尊重」をテーマにした物語で解決に向けた方策を提示した。二〇四九年、私たちの都市に「生態建築」が出現し、完全なごみ処理システムが完備し、大自然には希少種の動物も生息できるようになるなら、それは私たち一人ひとりの願う未来であるだけでなく、都市全体の、また国家全体の、ひいては地球全体の願いがかなえられる未来でもあることを万科館は伝えているのである。

「2049」館内の廃棄基板で飾られた「メビウスの帯」

アリ塚から見えてきた未来の「生態建築」

万科館は中国の不動産業界のリーディング企業である万科企業株式会社の企業館として出展されたものだ。パビリオンの建物の壁は中国の農村でごく普通に見られる麦わらでつくられている。現在、麦わらの多くは燃されて重大な大気汚染を引き起こし、大気中の二酸化炭素の量を増加させているが、熱圧縮を加えることによって新建築材料に変えるなら、二酸化炭素を固定できるだけでなく、さまざまな点から環境保全にも大きく貢献できる。麦わらでつくられた壁板は自然の模様とその黄金色の色つやが人々に生命の力を感じさせるだろう。しかし、すべての生命がやがては衰え死に至るように、この壁板も時間の移り変わりにしたがって色あせてしまう。万科館は、自然はやがて色あせて変わってしまうという現実を通じて、そうした自然本来の状態を尊重するよう人々に訴えているのである。また万科館の天井部は透明の採光膜と一体になっており、七つの建物を囲むようにして水面面積千三百平方メートルの池が造られている。池は景観上に必要なだけでなく、外気温が摂氏三〇度を超え、相対湿度が七〇%を超えたときには水の蒸発によって館内の室温が低下するように設計されている。このほか、万科館には風圧と熱圧という自然の通風システムが応用されており、かなう限りエアコンを使わない工夫が凝らされている。館内の「アリ塚探検ホール」では、アフリカのシロアリがつくるアリ塚の「ハイテク建築技術」がアニメで紹介される。シロアリの大きさからすると、このアリ塚はあらゆる高層ビルをはるかに超える大きさで、しかもエアコンなしで一定の室温を保つことができ、育児室や高速道路などに当たる機能も備えている。二〇四九年までに人類は、こうした動物の生態系からも多くのことを学び、「生態建築」の観念を確立しているかも知れない。このことに触れて、蕭莉館長は次のように語った。「万科館は自然採光、自然通風、そして雨水の収集と循環などのシステムを応用してつくられていますが、将来、万科社がつくる住宅、コミュニティー、オフィスビルなどでも広く応用したい。実際に、ソーラーシステムや自然通風は新しくつくられる住宅に用いられています」

20万個のプルットプ缶を使った壁面(東方IC)

ごみゼロに向けて尊重すべきこと

ごみは人類の生活から発生する。万科館の「メビウスのホール」内には、未来都市でのごみ問題に関して、実現可能な方策が示唆されている。ここでは、「メビウスの帯」が資源の循環を象徴しているが、壁には二十万個のプルトップ缶でつくられた装飾がある。LEDディスプレーになっている「メビウスの帯」は多くの廃棄基板でつくられ、不思議な美観をたたえている。ごみを分別・回収して再利用するなら、ごみを宝に変えることができ、資源を無限に循環させると呼びかけているのである。王石万科企業取締役会長は、自身の二度にわたるチョモランマ(エベレスト)峰登頂の経験を踏まえ、「都市の発展過程ではごみがたいへん大きな問題になっている。チョモランマ峰でごみを捨てず、またごみの分別をするのは困難をきわめるが、ああした極端に困難な環境のもとでも自分の行為には責任を持たなければならない。日常生活の中ではなおのこと、ごみの分別とリサイクルのために一人ひとりが行動を起こさなければならないのです」と語っている。

麦わらを熱圧縮した新建築材で二酸化炭素を固定した壁(cnsphoto) 「生命の樹ホール」では「退耕還林」政策についての影像が見られるcnsphoto)

環境のために尽くした先駆者を敬う

パビリオンの他の三ホールでは環境保護に関した内容、環境保護に尽くした人たちの物語が語られている。「メビウスのホール」のごみ処理の物語以外に、「雪山の精霊ホール」では、来場者は生存がおびやかされている雲南金糸猴(キンシコウ)が、生きるチャンスを得る物語を見ることができる。赤い唇を持ち人間によく似た貴重な保護動物である雲南金糸猴は、長く絶滅の危機に瀕している。奚志農カメラマンは、カメラによって人々の雲南金糸猴の絶滅危惧に対する関心を呼び覚ました。その後、梁従誡氏が設立した中国初の民間公益環境保護組織「自然之友」が雲南金糸猴とその生息地保護の呼びかけと行動を開始した。「生命の樹ホール」の中では、三百六十度LEDディスプレー、ホログラフィー、砂絵、映像などを通して、記者はほかの来場者とともに、世界でも最大規模の公益エコ行動――中国の「退耕還林(耕地を林に戻す)」政策について知った。流砂が消え、緑の芽が顔を出し、生命の木が茂り、鳥たちが飛び回る美しい光景の中、私たちは大きな砂漠に{かんがい}灌漑によって生まれた生命の得がたく貴重なことを知った。

万科館最大のテーマホールが「尊重・可能のホール」で、三百六十度LEDディスプレーとドーム型天井による巨大な球型スクリーンで環境保護の先駆者たちへの敬意をテーマとする映画を上映する。映画の中では、奚志農、梁従誡、馬軍や阿拉善(アラシャ)SEE生態協会などの人や組織の環境保護行動から、それぞれの個の力がいかに中国の環境保護活動として結集していったかを見ることができる。そこには、「自然」「生命」「震撼」と「感動」が全体を貫いている。蕭館長は記者に「万科館のキーワードは『自然』『震撼』『感動』『思考』『尊重』で概括できます。『自然』の建築と五つの展示内容で、異なった角度から人、都市と自然の間の物語について述べています。小さなシロアリの緑の摩天楼であろうと、「退耕還林」政策がもたらした環境の一大変化であろうと、はたまた個の力が中国の環境保護活動として結集していった過程であろうと、どれもが観客の感動を引き出します」と語った。蕭館長は、また未来には人々が都市や人、環境について深く「思考」をめぐらせ、考えた後にはできることから行動をスタートさせ、「尊重」の態度で自然に向き合ってほしいと述べている。

 

人民中国インターネット版 2010年7月16日

 

 

 
 
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