「提灯で叔父を照らす」って?

中国と外国の合弁企業のプロジェクトの期限が満了となり、引き続き事業を続けるかどうか、双方が話し合った。中国側のマネージャーは即座に「甥が提灯で舅(叔父)を照らす──つまり照舅です」と言った。これを聞いた外国側マネージャーは怪訝そうに「我々のプロジェクトに、どうして提灯が必要なのですか」とたずねた。

実は「照舅」は「照旧」と中国語の発音が同じで、「照旧」は「これまで通り」を意味する。中国側は、事業を従来どおり継続するということを、しゃれた言葉で言ったのである。

こうした言葉遊びを、中国では「歇後語」という。そして「歇後語」の多くは、漢字の同音異字と関係がある。中国で常用されている漢字は約三千七百字だが、文字の発音は四百種しかなく、同音の漢字がかなり多いのだ。人々は長い時間をかけてこの同音の文字を使い、おもしろい「歇後語」を数多くつくり出して、中国語の大きな特徴の一つになった。

だが、「歇後語」を外国語に翻訳することは不可能である。直訳しても意味がわからない。外国人が「歇後語」を理解できないのは当たり前である。中国側のマネージャーが「歇後語」を使ったのはユーモアのつもりだったろうが、いいところを見せようとして結果はかえってしくじることになった。

中国語の成語を使う時も、気をつけなければならない。成語にはほとんど典拠となる故事があるので、それを知らなければ成語の寓意を理解するのは難しい。例えば、「胸有成竹(胸に成竹あり)」(成算があること)という成語があるが、これは「竹を描く前に、胸中には竹の絵がすでにできあがっている」という宋の文人、晁補之の詩から来ている。これを「胸の中に竹が生えている」と直訳してもだめだが、意味を取って訳したとしても、蝋を噛むようにまったく味気ないものになってしまう。

スピーチをするときや即席で挨拶を求められたときは、生き生きとして人を感動させるようつとめなければならない。しかし古典から成句や故事をするときには、とくに注意が必要だ。正確に翻訳することができる成句や故事を引用してこそ、外国人はそれを聞いて、中国の格言や詩の名句の深い意味を理解できるのである。

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

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