「私たちの心は海宝とひとつに」
――上海万博青年ボランティアに聞く
 
 

董彦=文

「心身両面で忍耐力が養われました」

傅恵雯さん 上海外国語学院ポルトガル語学部三年生

ボランティアエリア ポルトガル館

傅恵雯さん(写真=董彦)

洗練された身ごなし。見るからに聡明そうな二十歳。一九九〇年六月生まれの「90後」(一九九〇年以降生まれ)世代だ。

朝八時四十五分には持ち場に就き、四十五分間の昼休みをはさんで、夜の十時半までボランティア活動に従事する。家に帰るのは午後十一時半。このスケジュールが半月間続く。

「最初の日、ずっと立ち続けている仕事でしたから、家に帰ってみると両足がむくんでしまっていて……。一週間たって、やっと慣れました」と語る。

それでも体力面の問題は、精神面に比べればまだまだほんの序の口。精神面の試練は、ほんとうに大変だったとか。館内では輪番で持ち場を受け持つが、悩まされたのは、来場者が差し出す「万博パスポート」にポルトガル館の記念スタンプを押す作業。

ポルトガル館では、記念スタンプを押すのは一人三冊までという決まりがあるが、多くの来館者が五冊、六冊、十冊とたくさんの万博パスポートを持参して、スタンプを押してほしいと申し出る。そのつど、彼女は館の決まりを説明するのだが、なかなか納得してもらえない。怒った来館者からひどい言葉でののしられることもしばしばだったという。

「融通のきかない子だな。そんなことで嫁にいけると思っているのか」

「かわいらしい顔をしているくせに、どうしてそんなに意固地なんだ」……

「そうしたひどい言葉を浴びるたびに、耐えがたい気持ちを抑え、我慢しなければと自分に言い聞かすのがせいいっぱいでした」と傅さん。ボランティアを始めたばかりのころは我慢するのに一所懸命だった傅さんも、だんだんと事情が分かるにつれて気持ちに変化が生まれた。来館者は暑い日中に何時間も待ち行列に並び、やっと入館できたのだから、記念のスタンプを持参した「万博パスポート」に押してもらいたいという要求が拒まれるなら、心穏やかでないのもしかたないのだ。

「自分が同じ立場ならきっとむかむかするに違いありません。そう考えると、面罵されても我慢できるようになりました」

傅さんは、そう自分の忍耐心の「成長ぶり」を明かしてくれた。

苦あれば楽ありのことわざ通り、仕事中の楽しい出来事に話が及ぶと、傅さんの顔がぱっと明るくなった。

「毎日が同じ仕事の繰り返しなのですが、自分のやっていることがお客さまに気に入っていただけたときは、ほんとうにうれしくて……」

スタンプを押す作業をずっと続ける傅さんの苦労を分かってくれたのか、ある来館者が作業台にそっとチョコレートを置いていってくれたこともあったという。

「大勢のお客さまをお見送りしたあとで、ほっと一息つくと、作業台にチョコレートが置かれてあるのに気づきました。その時のうれしい気持ちといったら……」

ボランティアの仕事での収穫について聞くと、傅さんは「心身両面で忍耐力が養われました」と語り、「それでもまだまだ自分には欠点があります」と正直に答えてから、次のように語ってくれた。

「仕事に集中できない時には、ついつい携帯電話を取り出してみたり、周囲の仲間とおしゃべりしたくなったりしてしまいます。規則では許されないことですから、改めるよう努力しなければなりません。ボランティアの活動を通して私は規則を順守し、きちんと守ることの重要性を学びました」

 

 

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