緑のふるさと 藍色の夢  
 

楊波 羅慧鈞=文 写真=広西館

キンモクセイの木をかたどった大きな骨組みに、灕江の清らかな流れ、桂林のシンボル・象鼻山、カルスト地形に特有の鍾乳洞といった広西チワン族自治区を代表する景観が見事にマッチし、館全体がキンモクセイの甘い香りで包まれる。生態環境と詩意に満ちた風土を守り、南部が海洋に臨む地理的優位性を生かして海洋経済を振興する。広西館には環境保全の発展理念と未来への自信そして希望があふれている。

中国省・直轄市・自治区連合館の14号出入り口の前に立つと、目の前には大きなキンモクセイの木があたりを覆うように茂り、かぐわしい香りが鼻をつく。

「蒼蒼たり森たる八桂、この地 湘南に在り。江は青羅の帯を作し、山は碧玉の簪の如し」

張振東館長は唐代の詩人、韓愈の有名な詩句をすらすらと朗誦してから、「広西は古来キンモクセイの木が多く、それで秦代以前から『桂』『八桂』の美称で呼ばれてきました。『桂』はキンモクセイのこと、『八桂』は多くのキンモクセイの木のことです。地元には桂樹が幸せを運んでくるという美しい伝説が語り継がれています。広西館は、香りとともに幸せをもたらすキンモクセイからインスピレーションを得て設計されたのです」と語ってくれた。

広西館のテーマは「緑のふるさと、藍色の夢」。「緑」は広西の自然、すなわち大地の色で、生命と生気を象徴し、「緑のふるさと」は広西の住みよい生態環境と大きな発展のチャンスを秘めた都市の潜在力を表す。「藍色」は広西の空と海の色で、広々とした開放感と未来への希望を象徴し、「藍色の夢」は北部湾(トンキン湾)経済開発区の地理的な優位性と世界に開かれた広西の海洋経済の繁栄する未来を表す。

居ながらにして広西を遊覧

「山歌を歌おうよ。こちらで歌えば、あちらで応え……」

広西は「歌の海」にもたとえられ、数々の伝説で有名な歌仙、劉三姐のふるさととしても知られる。館の入り口ではその劉三姐が山歌を歌い、広西の郷土舞踊を舞って来館者を迎えてくれる。近くに寄ってみて、はじめてそれが精巧に作られた動く人形(ロボット)であると分かるほどに良くできていて驚かされる。

温家宝国務院総理は広西を視察した際、その生態環境と豊かな歴史性・文化性を高く評価し、次のような対句でたたえた。

「山青水秀生態美、人傑地霊気象新」(山は緑に染まり、水は清く澄み。傑出した人物を生んだこの土地は、いま新しい気風がみなぎっている)

第一展示ホールは「緑のふるさと」で、広西の優れた生態環境と観光資源が紹介されている。横十五メートル、縦六・三メートルの大きなLEDスクリーンに広西のいまを伝えるハイビジョン映像『新しい広西 新しい到達点』が投映されるが、美しい映像は大自然に囲まれた少数民族の村をはじめ広西チワン族自治区のあちらこちらにあなたを案内してくれる。

広西はまた「銅鼓の里」としても知られ、ホール内には多くの銅鼓が展示されているが、中でも千四百年前の「累蹲蛙飾変形羽人紋銅鼓」は広西館の「館宝」とも言える逸品だ。鼓面はカエルをかたどった文様で飾られ、チワン(壮)族が代々カエルを崇拝してきた歴史が見て取れる素晴らしい出来栄えの作品。是非お見逃しなく。

足元にも注意してもらいたい。床は直径九メートルの大きな銅鼓の鼓面にデザインされていて、周囲を八匹のカエルが囲んでいる。カエルの背にはタッチパネルが取り付けられていて、指でパネルに触れると、広西の十四の市の景観を次々と目にすることができる。ホールの向かって右側には強化プラスチックで造られた巨大な銅鼓が置かれているが、実はこの半透明の銅鼓の内部は小さな舞台になっていて、中に明かりがともり、ステージでダンサーが踊り始めると、その姿が銅鼓の中に見え隠れして、幻想的なシーンをつくり出す。独特の風情があり、その工夫には目を見張らされる。

展示品は銅鼓に限らない。さながら小さな民族博物館に身を置いたかのようだ。今回の出展のためにわざわざ焼かれた泥塑の大きな花瓶は高さ二・二メートルもあり、「世博縁 壮郷情」(万博のえにし チワン族の村からのメッセージ)の六字が刻まれている。さらには世界最大級の陶芸作品「八桂漂香」(キンモクセイの香かおる広西)、広西北部に産する鶏血碧玉(赤い血のような斑紋のある碧玉)の彫刻作品「全家福」(一家団欒)、四十分の一の縮尺で造られた模型「侗郷(トン族の村)風雨橋(飾り屋根のある木造橋)」と「経略台真武閣(区東南部の容県にある明代の楼閣)」……広西の豊かな物産と巧みな伝統工芸がつくり出した素晴らしい作品の数々が陳列されている。

ASEAN諸国との橋渡し役

緑の木々に彩られた象鼻山を通り抜け、カルスト地形の鍾乳洞をくぐりぬけると、そこは「藍色の夢」の世界だ。柔らかな藍色の照明の下、真珠で飾られた王冠をいただく「珠女」(真珠姫)の像が据えられているが、像が右手にかざしているのは直径二十五ミリはある大きな真珠。「広西南珠」は世界三大真珠の一つとされ、国際真珠市場でも高値で取引される。像が手にする特大真珠は近年に採取された天然海水真珠の中では中国国内最大のもので、二百万元の値がついた。王冠は二百二十八個の真珠で造られており、さらに千八百八十個のダイヤモンドがあしらわれ、その価値ははかりしれない。

この第二展示ホールの天井には、ASEAN加盟の十カ国を表す写真がちょうど十個の真珠のように、中国‐ASEAN博覧会のシンボルマークを囲んで同心円状に掲げられている。また四面の壁には十の大型ディスプレーがセットされていて、ASEAN十カ国の風光や人々の暮らしの様子、広西チワン族自治区とのかかわりなどの映像を絶えず流している。広西とASEAN諸国が北部湾経済開発区を中心に国際間の経済協力を進めている現状と将来の展望を映像から理解することができよう。

「珠女」の背後にある大型球状スクリーンには、中国‐ASEAN博覧会の会場である南寧国際コンベンションセンターなど広西の十大ランドマークのホログラムが投映されていて興味深い。「藍色の夢」は中国とASEAN加盟十カ国が交流と協力を進める中で、ウインウインの関係でともに発展する麗しい未来の青写真であるとも言えよう。

張館長の説明では、広西は、中国の華南と西南、ASEAN諸国という三つの経済圏を結ぶ重要な役割を果たしており、中国とASEAN諸国とを陸上で結んでいるだけでなく、海上のルートも開けていて、中国からASEAN諸国に向かう陸海空の交通網がすでに形成されているとのこと。広西では二〇〇四年以来すでに六回にわたって中国‐ASEAN博覧会を開催しており、中国とASEAN諸国との橋渡しの役割を果たしてきた。館内には博覧会をテーマにした展示も行われている。上海万博にはASEAN加盟十カ国も出展しているが、広西館では前後してASEAN諸国の館長を招いてさまざまな交流を行ってきた。こうした交流は中国とASEAN諸国との友好協力と貿易などの相互往来にとっても好ましい効果をもたらすだろう。

山は水があってこそ生き生きとし、水は山地を流れることでより美しく映え、町は水が流れていることで活力を取りもどす。山も水も美しい緑の町に――これが広西チワン族自治区の人々の変わらぬ願いである。

 

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