パビリオンを覆う奇抜な「壁」に注目!  
 

高鑫=構成

「大豆繊維」「麦わら」「ラタンのつる(籐づる)」……こんなもので壁が造れるのだろうか?

これこそ奇想天外というものではないか。エコロジーな万博パビリオンの外壁は、国家や民族情緒の特色をよく表すと同時に、より大胆な発想で、建物の外壁は木や石あるいは鉄筋とコンクリートという既成概念を打破し、ユニークなアイデアで建築分野の「不可能」を塗り替えている。

清新で鮮やかな草花の壁

発信地・テーマ館

テーマ館の壁は4種類の低木を植え込んだ「垂直庭園」になっている(新華社)
草花は地上に植えないならどこに植えるというのだろう? テーマ館が出した答えは壁に植えるというものだった。東西六千平方メートル近くの外壁に、テーマ館は植物を建築材料として使用し、自然の雰囲気に満ちた「垂直庭園」を構築することに成功した。入念に組み合わされた四種類の低木により、まるでテーマ館は清新で鮮やかな上着をまとったようだ。そして、これは現在のところ世界で最も大きなエコロジー・グリーンウォールである。

もちろん、エコロジー・グリーンウォールの働きは、美しさにとどまらず、空気を浄化する働きのほか、ほこりの進入を防ぎ、騒音を防ぐ効果もある。また、この壁は夏の暑い日には室内の温度を下げることができ、エアコンの負荷を一五%軽減し、省エネ目標もクリアしている。

万博の「グリーン建築」技術の縮図とも言うべきこのグリーンウォールは温度、湿度など気候的要素によって自動水やりを実現、また使用される土と肥料は、枯葉など有機廃棄物で作られており、フラワーポットは古紙を加工して作られているのである。

古紙とプラスチックの「アイスキューブ」の壁

発信地・フィンランド館

遠くから見ると、「アイスキューブ」の名で知られるフィンランド館の外壁は、多くの氷塊を積み上げて出来ているように見える。近づいて見ると、外壁は魚のうろこのように見える。しかし、これらのうろこを見くびってはいけない。これは、新型特殊建築材料なのだ。

フィンランド館の外壁に使用されているのは、古紙とプラスチックの{はざい}端材を主要原料として混合したもので、木の外観と特質を持つ型材と板材である。表面は硬く丈夫でこすれに強く、水分含有量が少なく軽く、色あせもしない。万博終了後、「アイスキューブ」は簡単に解体でき、再度別の場所で組み立てることもたやすくできる。つまり、すべての材料が回収可能なのである。

自然を尊ぶラタンの壁

発信地・スペイン館

「ラタンのかご(籐のかご)」と称えられるスペイン館は、万博会場でも最も本来あるべき姿のパビリオンの一つであると言えよう。パビリオンの外壁はすべてスペイン伝統の籐工芸で出来ているのだ。八千五百二十四の異なった品質、色の籐づるの板を、精緻な設計を通じて、魚のうろこのように鉄骨構造の梁に並べ、堅牢でしなやかな形を作り出している。地中海の波のようであり生き生きとしたフラメンコ衣装のようでもある。

外壁に使用された籐づるの板を敷き詰めると一万二千平方メートルにもなる。技術はスペインの工芸によるが、すべて山東省の手工芸職人たちが編んで作ったもので、いかなる染色も行われていない。籐づるを熱湯で五時間煮るととび色になり、九時間では褐色に近くなる。これによって一定ではない色彩を生み出しているのである。このほか、中国の伝統文化に対する尊敬を示すため、デザイナーは籐づるの天然の色の違いを生かし、「日」「月」などを象徴する文字を入れ、中国の書道と西欧文化の美しい融合を見せている。

藤づるを編んだ板の壁はまるでフラメンコ衣装のようだ(東方IC)

大豆繊維の幔幕で覆われたスイス館(CPF)

インタラクティブな「大豆」まん幕

発信地・スイス館

まん幕は滝のように高いところからしなやかに垂れ下がっている。その幕には一面が一万以上の真っ赤な半透明の小さな円盤が飾り付けられていて、太陽の光の中できらきらと輝く。カメラを取り出しシャッターを切るなら、不思議なことが起きるはずだ。フラッシュを受けた小さな円盤も輝き始め、その近所の円盤たちもそれに呼応して、まん幕の上では一面の光の海が現れるのだ。これこそスイス館最大の特徴のひとつ、インタラクティブな電子知能まん幕外壁である。

この不思議なまん幕は大豆繊維でできており、自然に分解することができる。赤い小円盤の中に仕込まれた太陽電池により、太陽エネルギーと熱エネルギーを吸収し、光エネルギーに変換しているのだ。そのほかの光源、例えばカメラのフラッシュもそれらをアクティブにすることができ発光させる。そのためスイス館は昼間でも発光する唯一のパビリオンになっている。夜になると、これらの電気エネルギーは外の灯りにも供給され、スイス館の夜景を変化に富んだものにしている。万博終了後は、これらの赤い小円盤は記念品として販売されることになっている。

呼吸する「紫のオーバー」

発信地・日本館

「心の和、技の和」をテーマとする日本館では、館内にハイテク製品が展示されているほか、巨大な「かいこ」の美しい「紫のオーバー」の上にも多くのハイテク技術が取り入れられている。

この「紫のオーバー」は実は一枚の発電膜であり、高透光性発電膜を採用し複層構造になっており、中間に空気を入れ空気枕のようになっている。中にはさらに太陽電池パネルが組み入れられており、木の葉の光合成作用のように、太陽光を吸収し発電できるのである。また、暑い夏の日には自らのため温度を下げることもできる。薄膜の上の小さな金属ボタンには多くのノズルがつけられ、気温が高い時に空気枕に対し水を吹きかけ、一層の水の膜を形成し、熱を逃がすと同時に、館の表面をほこりから守り、きらきらと透き通った状態にするのである。

「紫のオーバー」には、さらに三カ所のへこんだ穴と三つの外に伸びた「触角」がある。この六つの通り道は実は循環式呼吸柱である。「生命体のように呼吸する環境建築」のアイデアはここから来ているのである。それらを通して、外部の光線が建築物の中に差し込み、雨が降ると呼吸柱は自動で水を蓄える。このほか、外部の風を取り入れて冷やすこともでき、これによって室内の空調の負荷を抑えることができる。

寓意に満ちた麦わらの壁

発信地・万科館

畑に積み上げられた麦の積みわらを見て何を思うだろうか。豊作、幸福あるいは満足? 万博の浦西エリアには、金色にさんさんと輝く七つの麦の積みわらがそびえている。

それは形状が麦の積みわらに似ているだけではなく、主要材料として収穫後の麦わらを熱圧成形し板状にしたものが使われているのである。農作物の光合成で作られる産物の半分以上が麦わらの中にあるというから、生成された麦わら板はCO2の固定化を実現しているのである。この材料は環境にやさしいだけでなく、麦わら板の自然の模様や黄金のつやは人々に生命の健康と盛んなさまを感じさせるだろう。この麦わら板は、現在世界でも最もエコな人造板材の一つだという。麦わら板は農作物の再利用であり、森林資源の保護にも役立っている。さらに、麦わら板の色つやも時間の推移とともに変化していき、自然の退色変化に対する観念を通して、人々が自然本来の状態を尊重することを訴えているのである。

魅力発散の「光ディスク」壁

発信地・上海企業連合館

遠くから見ると「水立方」のようで、近寄って見ると「鳥の巣」のような上海企業連合館はまさにルービックキューブのような不思議に満ちている。もし、参観する機会があるなら、あわててパビリオンに近づかず、まず外部の半透明な「網状構造」をつぶさに見ることだ。このファッショナブルで美しい網状構造の原材料が、実は廃棄された光ディスクだということに気づくだろうか?

統計によると、上海で毎年の廃棄ディスクは三千万枚以上であるのに対し、回収再利用されるのはその二五%に過ぎない。パビリオンは古いディスクをきれいに洗い再度新しいポリカーボネートの顆粒にし、LEDプラスチックパイプを作り出した。それで外壁面の一枚のグリッドをすっぽり包み、パビリオンに未来主義の色彩を加えた。さらに絶妙なのは、それはキューブ全体を包む技術設備のパイプであるだけでなく、コンピュータプログラム・コントロールを通して、LEDが違ったリズムで違った色に変わるようになっているのである。パビリオンの周辺の広場に立つと、キューブの色と模様が多彩な変化を見せるのを楽しむことができる。

 

人民中国インターネット版 2010年8月10日

 

 

 
 
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