エコパラダイズ 熱帯の宝島――海南  
 

喬振祺=文

海南では「グリーン都市」の風貌が至るところで見られる。海南人はまるで花園の中で暮らしているかのようだ。海南は2030年を先取りしているのかも知れない。

「健康のために、たびたび海南にいらっしゃい」

ここは北緯18度に位置する中国第二の大きさを誇る熱帯の島で、宇宙から望むならちょうど、広々とした南中国海に透き通った翡翠をはめこんだかのように見えるに違いない。「青い海、白い砂、山々が連なり、熱帯の木々が生い茂り、河川が縦横に走る」おそらくこうした言葉から読者は海南のアウトラインを描き出すことができるだろう。奥深い多元文化の息吹に加え、さんさんと降り注ぐ太陽の光とあふれんばかりの緑を有する。それは人々が理想とする「住みよい」場所に不可欠な要素であり、海南島が近年の発展の中で守りとおしている生命線でもある。

 凝縮した海南を万博会場へ

上海万博に出展した中国の31の省・直轄市・自治区の一つ、海南省は中国最大の経済特区である。海南の生態、健康、保養、開放の理念を来場者に理解してもらうことは海南館設計者たちの最大の願いである。

面積3.5万平方キロの風光明媚な陸地を囲む面積200万平方キロの果てしなく広がる海洋。600平方メートルの展示空間にはそうした海南がどのように凝縮されているのだろうか。「より良い海南、より良い生活」のテーマはどのように展開されているのだろう。

「海南館は業績や歴史を展示するのではなく、理念とテーマが中心です。私たちは未来世界の発展の潮流と理念を、万博を通じて人々に伝え、人々が最善の方向に向かって進むよう導いていけたらと考えています」と海南館の陳忠文館長はこう語った。

「海南館は海南の美しさを紹介します。来場者に海南と他の場所の違いを感じてもらい、皆さんが海南を好きになり、あこがれてくださるなら、さらに多くの方が海南を訪れることになるでしょう」

この構想に従って、海南館は館全体を内外2層の絹のスクリーンで囲み、外側の青色のクスクリーンは風を受けて宙を舞うようなしくみにした。ヤシの木を吹く風の音と海の潮騒は海外旅行先としても人気上昇中の海南のイメージを来館者にも印象づけるだろう。同時にスクリーンは独特の半透明の色感で美しくロマンチックな雰囲気をかもし出している。内側の白いスクリーンは投映される影像と一体化し、あるときは天空、あるときは陸地、あるときは深い海底となって、360度全方位の海南島の情景を疑似体験できる空間を作り出している。 海南館は国際的な観光の島として、青い海、青い空、白い雲、砂浜、グリーンの生態および島の文化の精華を展示する。スクリーンは海南館のテーマのためにビジュアル的な機能を提供するだけでなく、同時に透明で霞がかったような雰囲気をつくることで、美しくロマンチックな海南島に想いをはせるよう呼びかける。

いつまでも記憶に残る海南での休日

「海南館ではよく見、よく知ってもらい、来場者すべてに心地良さを感じていただければ」と陳館長は強調する。

「天国の島」と呼ばれる視覚体験のコーナーでは、海南省から運び込まれたきめ細かい白い砂と貝殻が敷いてある。「内陸では、海砂や貝殻を目にすることが難しいでしょう。そこで、私たちは主要なスクリーンの前に海南の最も良い海砂を置くようにしました。砂をつかんでみれば、とても心地良い感覚を得られるはずです。さらさらとした砂は手を洗うこともできるほどで、砂が手に付くこともなくとても清潔です」と陳館長。

すべての照明が投映されると、階段状の床面に海水と海砂がまじりあって美しい色彩を放ち、白い貝殻が飾りになって、夢幻の世界をつくり出す。来館者はまるで海の波紋の中に浸っているかのようだ。

「深海の趣」コーナーでは、スクリーンの中の深海の魚、クラゲ、ウミガメなどの美しい海洋生物と一緒に深海に潜っているような錯覚をおこすに違いない。

海南館ではまた、有名な「海南三宝」を見学することができる。リー(黎)族の伝統的な絹織物である黎錦、海中の難破船から引き上げられた宋・元代の磁器、貴重なカリン材。この展示は工芸品を陳列するだけでなく、海南の多彩な民族文化を紹介する。リー族は3000年も前に紡績技術を発明したとされ、無形文化財である「黎錦」はリー族が優れた織物技術を持っていることを証明するものでもある。黄道婆が元代の初めに今の上海・松江区から遠路をいとわず海南まで紡績技術を学ぶために訪れた話は有名だ。彼女は技術を内地に持ち帰り、江南でも織物が盛んになったのである。海南のもう一つの無形文化財「ミャオ(苗)の髪刺繍」を披露している。ミャオ族の女性は知的で手先が器用だ。館内では少女の髪の毛を用いて精巧で美しい図案の刺繍を作り出している。

海南は、2030年を先取り 

今日、多くの都市がすでに経験を蓄積し分かち合う段階に達している。グリーン活動、低炭素、環境保護、持続可能な発展を共有する段階に来ているのである。上海万博の主要テーマでもあるこれらのキーワードは、全世界が未来都市に対していだく共通の認識である。実は、私たちがともに考えなければならない多くの問題は人類がその発展の過程で出た共通問題なのである。

「都市は大きくなればなるほど良くなるとは言えないでしょう? 都市はどのようにして人々により良い生活をもたらすのか? 陽光、気候、水、空気の質が劣ってしまっていては、より良い生活を語ることができますか?」そう語る陳館長は海南で生まれ育った海南人である。彼は良好な自然環境こそが人々に高品質の生活環境と深い生活体験をもたらすと考えている。

「多くの大都市は空気中のほこりも多く、人々は目が乾燥し、喉が乾く。しかし海南の空気はいつもきれいでさっぱりとしていて、すがすがしさを与えます。整った生活施設、スムーズな交通、商店、学校、病院などが十分に揃っていれば、それで良い生活といえるのでしょうか?そうした生活インフラの上に澄んだ空気、光り輝く陽光などの生態環境を加えれば、さらに住みよくなるでしょう?海南はこれらのすべてを備えています」

万博会場の多くのパビリオンが「グリーン都市」の概念を打ち出している。そしていずれも2030年の未来の生活を展望している。ベストシティ・プラクティス区にあるパリ館は、「美しい川と肥沃な大地が、素晴らしい生活をはぐくむ」とのテーマの下、展示を通じて「グリーン」といったコンセプトを広めるため積極的にアピールしている。

「実は海南はとっくに『グリーン都市』を実現しています。多くのパビリオンが、未来の生活を展望する影像を放映していますが、その中に出てくる要素、つまり合理的な建築物、広範囲な緑化、鳥が空を飛びまわるイメージなどは、今日の海南では、実際の光景として、すでに至る所で目にすることができます」。陳館長はさらに続けて「私たちはあたかも花園の中に居住しているかのようで、これが未来の都市の生活だとするならば、海南を訪れれば、2030年を先取りした光景が見られるのです」と語った。

海南島に住めば、美しい生活を送ることができる。陳館長は最後に「内地にはぜんそくや気管支炎の年寄りが多いと聞きますが、海南に来ればそうした病気は良くなります。海南にやってきた多くの人々はここにちょっと住んでみただけで離れがたい気持ちになると話していますよ」とその話を結んだ。

 

人民中国インターネット版 2010年8月19日

 

 

 
 
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