発展もたらしたインフラ建設

 西部大開発の戦略が実施されてから、西部の各省、直轄市、自治区のインフラは大きく様変わりした。チベット自治区と青海省を結ぶ青蔵鉄道、「西電東送」「西気東輸」といった象徴的な大規模プロジェクト建設は、西部地区の交通、水利、エネルギー、通信などを大きく改善した。インフラ建設が先行したことは、西部の大発展をもたらした重要な要素となっている。

アジア第一のトンネル

「蜀道の難きは 青天に上るよりも難し」――唐代の詩人、李白は、秦嶺山脈の道を行く困難をこう描写した。秦嶺山脈は陝西省と四川省との境にあり、長江流域と黄河流域の分水嶺で、山は険しく、気候の変化は激しい。

秦嶺終南山道路トンネルは、世界で最初に一方通行の二本のトンネルを採用した特徴のあるもの(写真・張春侠)

古代より、標高3000メートル以上の秦嶺山脈は、南北の経済、交通を隔てる天然の障壁であり、秦嶺山脈をどう越すかは、長年、人々を悩ませてきた歴史的難題であった。近年では、多くの道路や鉄道が秦嶺山脈を通っているが、西部大開発戦略の実施にともなってつくられた秦嶺終南山道路トンネルは、「蜀道の難き」の歴史にピリオドを打った。

この南北を貫く大トンネルは、車でわずか15分で通過することができる。

案内人によれば、世界の道路建設史上、これまでにもっとも長い道路トンネルはノルウェーのラールダールトンネルで、全長24.5キロメートル、アジアでもっとも長いトンネルは日本の関越トンネルで、全長10.9キロであった。

2007年1月20日に開通した秦嶺終南山道路トンネルは、長さが18.02キロで、日本の関越トンネルを一挙に追い越した。そればかりでなく、一本のトンネルに上りと下りの車両が走るラールダールトンネルに比べ、秦嶺終南山道路トンネルは、世界で初めて一方通行の二本のトンネルを採用した特徴のあるもので、二本のトンネルを合わせた長さは36.04キロ。世界の道路建設史上の最長記録を更新した。  

トンネルの完成後、「天下の険」は「便利な道」となった。陝西省西安市から秦嶺山脈の奥深くにある柞水県城への距離は、146キロから64キロに短縮され、移動時間は以前の3時間余りから40分となった。  

秦嶺終南山道路トンネルは、西部の交通建設の縮図である。西部大開発が実施されてから十年、青蔵鉄道に代表される多くの重点プロジェクトが相次いで完成した。鉄道、道路、民間航空路線は、西部地区を中部地区、東部地区と結びつけた。

ラサから西寧に向かう列車で勤務する青蔵鉄道初のチベット族女性車掌長、ソッランデギェさん(新華社)

統計によると、2008年末までに、西部地区の車両が通行できる道路の総キロ数は2.67倍増加し、142万キロに達した。そのうち高速道路は1万6400キロを占めている。

西部地区の鉄道の営業キロ総数は、2000年は2万キロだったが、3万キロ近くに増えた。また、重慶、甘粛省敦煌、青海省西寧などの多くの空港は、相次いで拡張工事が完成した。これにより旅客数は大幅に増加した。現在、西部地区の民間空港は79あり、これは全国の半数近い。  

交通の急速な発展は、西部地区の経済発展と人々の生活の改善を大いに促進した。2001年、青海省同仁県曲庫郷賈加村のチベット族の牧畜民であるヤンジブツァイランさんは、三日三晩、車に揺られてラサに参拝に行ったが、2007年に青蔵鉄道が開通した後は、24時間、汽車に乗り、ラサに着いた。「青蔵の天の道はありがたいものだ」とヤンジブツァイランさんは言った。

 西部大開発の大動脈として、青蔵鉄道は2007年の開通以来、2009年末までに、延べ1800万人の旅客と九千万トン近い貨物を運び、青海・チベット高原の、環境に優しい農牧畜業や特色あるチベット薬品業、民族的な手工業、観光業など特色のある有力産業を輸送の面で強くサポートした。2007、2008の二年、チベットの国内総生産(GDP)は前年比で14%、10.1%それぞれ成長した。青蔵鉄道も、高原に住む各民族から「豊かになる道」「団結の道」「幸福への道」と称えられている。

鉄道部発展計画司(局)の厳賀祥副司長は「中長期の鉄道網調整計画では、2020年までにわが国の鉄道網の規模は12万キロ以上になり、西部地区は5万キロ以上まで拡大し、鉄道網の骨格が基本的に形成される。交通インフラの改善は、西部地区の長期的発展にとってその基礎をしっかりと固めることになる」と言っている。

農民を喜ばせた水利建設

広西チワン族自治区の区都である南寧市には、「水街」と呼ばれる有名な古い街がある。この珍しい街の名前の由来は、かつては夏になると、ここが氾濫した河川の水の中に水没したためである。

ピーマンを収穫する広西チワン族自治区田東県林逢鎮英和村の農民(新華社)

60歳を過ぎた盧おばさんは、この水街に住んで数十年になるが、河川の水かさが増した季節のことを、いまもよく覚えている。「以前は毎年、夏になると水かさが増し、家の中でも棹でさして舟で行かなければならず、家の二階に上るには、水に飛び込まなければなりませんでした」と言う。盧おばさんと同様に、水街の住民たちはみな、以前に遭った水害の状況をはっきりと覚えている。

しかし2005年以後は、「大水は門前を過ぎ、舟は家の中に浮かぶ」といった水街の情景はすっかり変わった。現在の水街は、商売は繁盛し、人々は生き生きとしているという印象を受ける。こうなったのは200キロ以上離れている百色水利ターミナルプロジェクトのおかげなのだ。このプロジェクトによって、水街は水害を免れたばかりでなく、南寧市全市の洪水防止能力が高まり、百年に一度の洪水にも耐えられるレベルまで高まったのである。

内蒙古自治区のジュンガル(准格爾)旗にある黄河の万家寨水利ターミナルプロジェクト(新華社)

百色水利ターミナルは、同自治区の郁江上流の右江につくられ、珠江流域総合利用計画の中では、郁江を治水、開発する大型の主要な水利プロジェクトであり、国が西部大開発戦略を実施する重要な、象徴的なプロジェクトの一つに数えられている。このプロジェクトは2006年に完成した。総投資額は53億3300万元で、ダムの貯水量は56億6000万立方メートル。洪水防止を主とし、発電、灌漑、水運、水の供給などにも役立つ多目的の水利ターミナルである。

右江下流にある田東県林逢鎮は、野菜栽培の盛んなところである。冬でも、自治区特有の気象条件の下では、ピーマンが大きく育つ。農場の責任者である韋勝さんは「我々が選んだのは国内最良の品種ですが、水に対する依存度が非常に高い。百色水利ターミナルプロジェクトが完成する前は、灌漑は、井戸を掘って解決してきました。いまは、直接、農場に水を引いて点滴灌水をすることができます。これによって水源が確保されただけでなく、コストを大きく節約できました」と言った。

百色水利ターミナルの建設は、右江下流の広い農地に新たな活力をもたらした。プロジェクトが完成した後、右江盆地の農業灌漑や沿岸の都市や町、企業の生産や生活に十分な水が供給された。拡大・改善された水田の灌漑面積は15万ムー(1ムーは6.667アール)を超え、沿岸の人々に幸せをもたらした。統計によると、百色水利ターミナルによって守られる人口は187万3000人、耕地は7万2800ヘクタールで、年平均の洪水防止による利益は7億7500万元に達する。

百色水利ターミナルは、国が西部大開発を実施した後の最初の大型水利プロジェクトである。水利部(省)の矯勇副部長によると、西部地区の年平均水資源総量は6949億立方メートルで、このうち利用可能な量は1473億立方メートル、水資源の開発利用率はわずか20.89%に過ぎない。水資源の欠乏や水土の流失、砂漠化の激化、生態系や環境の悪化は、西部地区の経済・社会の発展を厳しく制約している。

西部大開発が始まってから10年、中央政府は絶えず西部大開発の水利関係への投資を拡大してきた。西部地区の水利インフラ建設への総投資は1270億元に達し、同じ時期の中央の水利投資の34%を占めている。嫩江のニルジ(尼爾基)水利ターミナル、寧夏黄河沙坡頭水利ターミナル、内蒙古三座店水利ターミナルなどの西部大開発の象徴的なプロジェクトが着工された。これらの民生のための水利建設は、西部の農村に住む9437万人の飲み水の不足や安全の問題を解決した。これは、同じ時期に全国で飲み水の問題を解決した農村人口の42%に当たる。同時に、生態系や環境の保護、水土の保全や黄河、西北部の内陸河川の総合的治水などの面でも、飛びぬけた成績を収めている。

 

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