劉江永:釣魚島漁船衝突事件の背後のアメリカの影

文=劉江永

劉江永
清華大学国際問題研究所教授
中日友好21世紀委員会中国側委員
菅直人首相は就任後、とくにアメリカとの関係維持を重視し、以ってアメリカに好まれている。ゲーツ米国防長官は、2010年6月、シンガポールにて開催されたアジア安全保障会議において、中国軍艦の宮古海峡における公海訓練の行動について中国側を公に非難し、日本に加勢した。同年8月16日、クローリー米国務次官補は、記者の追及に答え「尖閣諸島(中国名・釣魚島)は、日本政府の施政下にあり、日米安全保障条約第5条では、同条約は、日本の施政下の領土に適用されると述べている。ゆえに、もしこの条約が尖閣諸島に適用されるのかと聞かれれば、そうだ、と答える」とはっきりと発言している。アメリカの立場により、日本政府内の強硬派は鼓舞され、さらに頼るものがあれば恐れるものはないと、釣魚島の問題において中国への態度を次第に強化させている。

釣魚島漁船衝突事件問題の処理において、菅直人内閣は経験が不足し、矛盾を解決する機会を幾度も逃している。もっとも目立ったのは、9月14日、菅直人が首相に再任したあと、本来なら17日の新内閣の組閣前に中国人船長を釈放し、内閣組閣後に中国とともに両国関係の挽回を求めることができた。しかし、菅直人は、組閣後の19日、拘留期間を延長し、さらに中国を刺激し、温家宝総理は、ニューヨークにて重大な談話を発表し、菅直人との面会を拒絶した。

ならば、菅直人内閣は、なぜこのような誤りを犯したのだろうか?この政策決定の過程の全貌は知る由もない。けれど、ある一つの軽視できない事実は、その背後にアメリカの影があることだ。2010年9月14日、民主党の代表選挙の終了直後、クローリー米国務次官補は、一方で「対話を通しての平和的解決」の希望を表明すると同時に、「日米同盟は、アジアの平和と安定の基礎である」と強調した。これは日本がこの問題を処理するにあたっての上限と下限を知らしめたに等しく、また重要な点は、日本への鼓舞であった。アメリカ、ブッシュ政権の前国務長官、アメリカの有名なタカ派の人物、アーミテージも、この微妙な時期に日本を訪れた。早くも10年前、彼は誤った議論を捏造し、それは、尖閣諸島は日本の施政下にあり、日米安全保障条約の適用下にあるというものである。

報道によれば、9月15日、アーミテージと菅直人内閣の仙谷由人・官房長官などの政府要員が密接に接触した。彼は日本において、過去の蒸しかえしを行っただけでなく、日本側が釣魚島水域において、違法に中国人船長を拘留した一件について、日本の「判断は正確で、反応は適度である」と称えた。また、中国は、この件を通して「日本政府の限界ライン」を探ろうとしており、同類の事件の再発生を防止するためには、防衛費を増やし、日米連合軍の軍事演習を増加させもって中国を抑制することがもっとも良い戦略である」と述べた。これは、日本が中国人船長の拘留を延長することを支持し、また日本が軍備を増強し中国に対抗することへのそそのかしに等しい。その実質は、釣魚島の争いを利用して中日関係を挑発し、同時に中日両国を弱め、アメリカの覇主としての地位を固めることにある。アーミテージはすでに野に下っており、またアメリカのすべての観点を代表するものではないとはいえ、中日間が釣魚島をめぐって鋭い対立にあるなかでの彼の訪日における発言は、短期間に菅直人内閣をして中国に対し強硬な立場をとらせる誤りに導き、事態を善処するよいチャンスを失わせた。

日本の報道によれば、アメリカ政府内には、この事件を偶発的なものでなく、中国政府の黙認のもとに行われた「組織的事件」であるとする見方が強まっているという。アメリカの関係者は、日本のマスコミに対し、中国政府の内部機構は、尖閣諸島に対して有効的統治を行うという決定がすでになされている可能性があると語っている。「軍隊が漁船を掩護し、一体化し、この方針を実行している」。まさにこの背景のもと、アメリカは、警鐘を高々と鳴らし、「衝突が発生した際には、米軍は措置をとると暗示し、中国への強硬な態度は、以って抑制のためである」。

日本が中国人船長を釈放してのち、9月28日に訪日したグレグソン・米国防次官補は、「日本の対応を全面的に支持する」と表明し、また「日本政府はふさわしい行動をとっており、措置を講ずる必要はない」と述べ、日本は、中国政府が要求する詫びと弁償に対し応じる必要はないと暗示している。

アメリカは中日の釣魚島をめぐる争いの緊張レベルが上昇するにつれ、一方では軍力の配置を強化し、一方では、衝突を防止している。オバマ政権は、日中が対話を通し早期に衝突事件を解決することを希望し、また、その一方では、日本への支持を強化している。9月21日、佐世保基地を母港とする米軍の掃海艦「ディフェンダー」(1312トン)が沖縄県宮古島の平良港に入港した。米軍はこれ以前にも、2007年6月および2009年4月に沖縄県与那国町と石垣島に停泊しているが、平良港への寄港は初である。沖縄県政府は、「緊急時を除き、米軍は民間港の使用は自ら避けるべきである」とみなし、米軍に対し、停泊停止を要求し、掃海艦は24日に出港している。

米軍海軍陸戦部隊が公表した『2011会計年度海兵航空計画』には、2012年より米軍は沖縄県宜野湾市に位置する普天間飛行場に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配置し、その部隊は、「第561中型ティルトローター中隊」と称される。この計画では、普天間飛行場に配置されていたCH46中型ヘリの後継機として、2012年10月および2013年10月に分け同中隊が配置される。海軍陸戦隊の飛行中隊は、一般に12機の飛行機から組織され、ゆえに24機の垂直離着陸輸送機MV22が配置されると予想され、米軍のこの地区における作戦能力が増強されることを示している。

日本の共同通信社の報道によれば、2006年、日本とアメリカは硫黄島付近海域において尖閣諸島が武力侵攻を受けた場合を想定した演習を行った。2009年には、2010年12月に米軍と日本の自衛隊の連合軍事演習を行うことを定めている。海上演習は、沖縄本島および石垣島など西南諸島の太平洋側の海域で遂行される可能性があり、陸上演習は、大分県の陸上自衛隊日出生台演習場で挙行される可能性がある。アメリカの第七艦隊の主力である空母「ジョージ・ワシントン」も参加する。

菅直人は、10月6日の衆議院全体会議において、日米が12月に諸島防衛連合軍事演習を行うことについて、「尖閣諸島の事件を想定しての演習計画を実施するものではない」とし、この演習が尖閣諸島を考慮してのものではないと説明している。

日本側が近い未来に行う演習と最近、尖閣諸島海域において発生した漁船衝突事件は無関係であると強調するにせよ、中国が最近、尖閣諸島の主権問題において強硬な態度を示しているため、演習は、日米の協力の効果を際立たせるものとなる。さらにこの計画の制定は、日本の海上保安庁が米軍の軍事支援を受けられるという状況の下、釣魚島海域の中国漁船に対して強硬措置を採る自信を増強させる。オバマ政権の執政後、日本政府は、アメリカが「尖閣諸島」に対し日米安全保障条約を適用するという早期の承諾を繰り返して確認しており、その目的は尋常ではない。オバマ政府のスポークスマンが日本政府に対し再度の承諾を行った後、一月もたたないうちに漁船衝突事件が発生しており、その両者の間に因果関係があるかどうかについては研究に値する。

 

 

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