水の縁

長春理工大学 陳媛媛

「一粒の砂にも世界を

一輪の野の花にも天国を

一滴の水にも日中文化の差を見、

両国の文化を味わい、

お互いに理解を深める。」

人間と水との深い関係は、日本人と中国人に限ったことではありません。水がないと、私たちは生きられません。世界の文明は大きな川や海のほとりに生まれ、育ちました。しかし、多くの民族の中で、中国人と日本人を除いて、水とこんなに密接に結び付き、水に浸されて暮らす民族はいません。中国人と日本人は、水とは切っても切れない縁を結び、豊かな水の文化を作ってきました。

しかし、中国の「一方水土養一方人」という諺が伝えているように、地域によって人々はそれぞれ違う特性や文化を持っています。日本は東の果ての四方を海に囲まれた、狭くて細長い島国です。だから、水のように流れに身を任せるというような柔軟な特性が育ちました。春には草木が芽吹き、夏には草木が茂ります。秋には枯れた葉が落ちて、冬になると、万物は静けさの中にあります。季節の移り変わりに伴って変化する自然に、日本人は強く心ひかれ、感性が磨かれていきました。そして、その感性は季節を重ねるうちに鋭くなっていきました。人々は自然の万物と一緒にいて、世の中の悲しみや喜びを分かち合いました。特に、水は日本人に日本人ならではの和の精神をもたらしました。

古池や蛙飛び込む水の音  -芭蕉-

水の音、それは確かに蛙が古池に飛び込んだ時に発せられた音です。しかし、その瞬間、感動の水が私の石のようだった心に、ぽたっ、ぽたっと響いてくる音でもありました。日本人なら誰でも知っているこの俳句は、古池、蛙、水のどれが欠けても調和のとれない情景をよく描いています。主人公は水に限りない親しみを抱き、水に安らぎを覚え、水に懐かしさを感じています。景色を楽しむこの人の気持ちと周りの景色との調和とか、動と静との調和とか、水が存在してこそ、この句が生まれたのです。そこに私は日本人の水のような和の精神を読み取りました。わずか17音で表現する俳句は、日本人の魂の奥底にある水を映す鏡ではないでしょうか。

中国は、国土が広く、資源も豊富で、歴史も長いので、考え方も日本人と違います。だから、水については、独自の文化を持っています。

葦蒼蒼たり

白露霜[しらつゆじも]と為る

所謂伊[か]の人

水の一方に在り

遡廻[そかい]して之に従わんとすれば

道阻[へだ]にして且つ長し

遡遊[そゆう]して之に従わんとすれば

宛[あて]として水の中央に在り

                        ――――『詩経』兼葭

「葦が青々と茂り、白い露が霜になります。河の向こう側に住んでいる美しい娘さんに会いたいので、河の流れに逆らって訪ねたいと思っても、水路は険しくかつ長いです。また、河の流れに従って訪ねたいと思っても、なかなか行き着かず河の中ほどでうろうろしている」。この詩は、美人を訪ねたい男の人の気持ちをよく表しています。そして、よく味わうと、水は愛情を表していることに気付きます。中国人の意識の中では、美しい話はいつも水辺とかかわりがあります。水はいつも愛のキューピッドとして登場します。

他に、中国の水の文化の中で、水に託す時間や青春の流れに対する無常観もよく感じられます。

「子川上に在りて曰く、逝く者は斯の如きか。昼夜を舎てず。」

                        ――――『論語』子罕

こう見れば、過ぎ去るものはこの川の水のようなものでしょうか。時間は、流れ去る水のようにもう戻ってこないと嘆いています。水のおかげで、中国の文壇には絶えず新星が誕生してきました。今、私は文壇の巨匠の作品を味わいながら、水の中に隠れた知恵を探し、ゆっくり水の文化を堪能しています。

水は命の源だと言われています。そうすれば、水は文学の創作の源だと言えます。日本と中国の水の文化には、確かに差があります。しかし、両国の人々の感情と精神は元来同じ水域から育ってきました。したがって、両国の文化は同じ源から発したとも言えます。だから、両国の人々はお互いに相手を理解する態度でその文化を味わうとしたら、水も文化の架け橋として両者を結び付けられると思います。その時、中国と日本の間に果てしなく広がる大海原は消え、水は心の奥から流れる友好の言語にもなれます。最後に、自作の詩を書き添えます。

「水から日中文化の差を見、

よく両国の文化を理解し、

お互いに手のひらに真心をつかみ、

一瞬のうちに永遠をとらえる。」

 

評:中国、日本の水文化比較論はユニークな題材。日本語能力はかなり高レベル。

 

 

 
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