「一人っ子世代」の親たちは?(下)

ここ数年、「421家庭」に関する話題が繰り返し取り上げられ、議論されてきた。いわゆる「421家庭」とは、1組の夫婦が双方の両親4人を扶養し、一人っ子を養育する時代が近づいているという意味だ。1970年代、80年代生まれの一人っ子がすでに成人となった今、彼らは子育てと両親の介護に同時に直面し、2重のプレッシャーを受け始めている。中国の「少子化」問題が日に日に顕在化してくるのに伴い、専門家はもとより、社会各層で計画出産政策を継続していくべきかどうか、議論が活発に行われている。

自分の老後は自分でケアを

今後の心配事についての話になると、多くの若い世代の反応は比較的落ち着いている。多くが、具体的な事情に対してそれ相応の対策を取るという態度で、今後の10年、20年の間にさらに良好な公的な老人介護サービスが整備され、彼らの「後顧の憂い」を解消してくれることを期待している。だが、両親の老後に比べると、彼ら自身の老後の生活はさらに大きな心配事だ。

張さんは次のように語ってくれた。「私の両親は老後問題についてとても進歩的です。将来は家で面倒を見るのか高齢者ホームで過ごすのか、彼らの願いどおりにしてあげたいと思います。でも、私は老後、絶対にホームに入るだろうと思います。私たちにはまだ父方、母方にいとこがいますが、私たちの子どもが大きくなった時には、そうした親戚もいません。その時に、娘の負担とプレッシャーはきっと大変大きなものでしょう。私たちは娘に期待しませんよ。私は自らホームに入るお年寄りの気持ちが特によく理解できます。彼らの多くが、子どもの負担を減らしてあげようと思っているのです」

 「北京頤年山荘」の1室で、職員からパソコンの使い方を教わっている入居者の女性(右

一方、任さんの母親は、一人暮らしだが、子どもの世話になりたいと考えたことがないという。彼は母親を北京に呼び寄せたいと考えたが、母親に断られたそうだ。今のところは、彼も母親もホームに入る可能性を否定してはいない。子どもたちは会社勤めをしており、毎日朝八時に家を出、夜遅くに帰ってくる。息子と住んでも一日中人と顔を合わせることがないなら、施設で同世代の仲間とおしゃべりをして過ごした方がいい。さらに、任さん自身の老後については、住宅を二軒持っているし、貯金もある。自分の老後についてはまず問題ないはずだという。

これに対して、南京大学社会学部の風笑天主任は次のように分析している。

「一人っ子政策の問題点が現実になり、両親世代は早くも独居老人の段階に踏み込んでいる。その結果、老人だけの家庭で生活する時間は、前の世代より長く続くことになった。しかし、その間彼らが一人っ子からしてもらえることは、非常に限られている。このように、一人っ子政策は伝統社会の『家文化』の基礎を根底から覆したと言える。中国人は長い間、多くの子どもを育て、老後の生活に備えるという人生を繰り返してきたために、すでに多くの方面で一人っ子家庭の老後問題に対する先人の経験を提供できなくなっているかも知れない」

また「一人っ子の両親は考え方を変えるべきで、自ら自分の老後をケアするという意識を持つことだ。長い間、子どもに対して老後の世話を期待するのは当然の道理だったが、一人っ子の親はもうそう言っていられない。子ども頼みの気持ちを自分頼みに変える必要がある。子どもと同居しているかどうかを老後の幸せの基準と見なすのをやめ、老後に同居してくれるかどうかを親孝行の基準とするのもやめるべきだ」と、厳しく指摘している。

再点検が不可欠な人口政策

一人っ子政策が中国の人口構成、老後生活に多くの問題と当惑をもたらしているが、この制度をどのように認識すべきだろうか。

これからも継続すべきなのだろうか。

中国社会科学院学部委員で国家人口・計画生育委員会専門家委員の田雪氏は、この三十年の実践が政策の成功を証明しているという認識を持つ。しかし、1990年代半ばから中国は低出生率段階に入っており、人口政策は状況の変化に応じ、時代に即して発展、変化すべきであるとしている。

彼は、今後は三つの段階で、次第に計画出産政策を緩和していくことを提起している。具体的な段取りは以下の通りだ。

第一段階は、全国の都市・農村に限らず、夫婦がともに一人っ子の場合、一律に二人まで子どもを持つことを認める。この政策はすでに河南省を除く各省・自治区・直轄市で実施に移されている。

第二段階では、夫婦のどちらかが一人っ子の場合、二人まで子どもを持つことを認める。農村部では現在実施されており、都市でも「十二・五」期間にスタートする。この「一人っ子の子どもは二人まで」政策は一人っ子の両親の老後問題と家庭の年齢構成の両面に重要な意義を持つ。

最後に、三人以上は生まないという制限を設けた上で、農村部ではどこでも二人まで子どもを持つことを認める。この「子どもは二人まで」政策の実施で、出生率は現在の水準をおおよそ確保でき、急激な再上昇にはつながらず、2030年の人口増加率ゼロという長期目標の実現にも影響は出ない見通しだ。

しかしながら、制限を緩和してもどれだけの人が本当に二人目を生みたいと思うかはやはり未知数だ。上海で実施された二万人規模の出産に関する調査では、家庭が希望する子どもの数は平均で1.2人という結果が出た。二人目を生みたくない主な理由は、子育て費用が高く、母親の仕事上のキャリアやチャンスに影響するなどだ。さらに、人口構成の調整は長期目標であり、遠くない将来に出現する「四二一家庭」の老後問題の解決については、やはり人々が自ら積極的に自身の老後のケアに取り組み、社会がさらに良好なシルバーサービスを提供することが求められている。

 

人民中国インターネット版 2011年3月5日

 

 
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