ホームを選ぶか それとも家?

 中国の伝統的な考え方では、「人丁興旺」(家族が増える)とか「四世同堂」(4世代同居)というのが、最も理想的な家族のモデルだった。お年寄りは住み慣れた自宅で親孝行な息子とその妻にお茶を入れてもらい、庭で椅子に座って、楽しそうに遊びまわる孫たちを眺めて過ごし、天寿を全うするという構図だ。

 しかし、社会の発展につれて、昔の大家族に代わり、夫婦と子どもの3人の核家族がモデルになったため、お年寄りだけの暮らしを余儀なくされるようになってきた。年を重ねるにつれ、老人だけの生活は不便になるが、仕事に奔走している子どもたちは親の面倒を見る時間がない。そうした場合、ホームへ入るか、それとも自宅で老後を送るか、どちらを選べばよいのだろうか。

 医療ケアは24時間体制  

時代の進歩に伴い、「ホームで老後を送る」という生き方を受け入れる高齢者が増えてきた。子どもたちの負担を減らすため、という理由が多数だが、優れた医療体制や社交的な環境を理由に選ぶ人も増えている。

 深圳市に住む劉おばあさんとトおじいさんの夫婦は健康で性格が朗らかで、数年前に子どもの家からホームに引っ越した。「孫たちは大きくなって、面倒を見る必要がなくなったし、子どもたちは仕事が忙しいので、ここで暮らす方がずっと便利だよ」と劉おばあさん。息子二人、娘二人で孫が四人いる劉おばあさん夫婦は子どもたちによく親孝行してもらっている。去年は、金婚式の記念に、子どもたちの招待で、記念写真を撮ってもらい、レストランでご馳走してもらった。毎週、息子や娘たちが孫を連れて来てくれる。ホーム暮らしといっても、同居していたころと同じように子どもや孫たちに囲まれた一家団らんを楽しんでいる。

 深圳市福田区福祉センターの廖遠東センター長によると、入居している人がのんびり生活できるような環境作りを目指しているそうだ。精神面、文化面で満足感を持ってもらうために、娯楽室やトレーニングルーム、図書室、リハビリルームを完備している。自分の気に入った娯楽を見つけ、また年齢の近い入居者同士が交流するのも簡単だ。こうした環境は特に足の不自由なお年寄りにとって、寂しさを紛らすにはぴったりなようだ。

 このほか、医療条件によって、入居先を選ぶ人も多い。すべての部屋に緊急用の応答装置を設け、医師が24時間常駐し、毎日血圧を測り、定期的に身体測定をするサービスは当たり前になっている。自立できる人は自分で生活の計画を立てる一方、病気で倒れ、寝たきりになったら、介護エリアの部屋に移動し、専門医と看護師に面倒を見てもらえる。このような施設で老後を送ることができれば「万能の介護師」を見つけたのと同じで、衣食住と移動、医療などの面を心配する必要がなくなり、これは自宅では得られない安心感ではないだろうか。

 

 

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