ホームを選ぶか それとも家?(下)

 中国の伝統的な考え方では、「人丁興旺」(家族が増える)とか「四世同堂」(4世代同居)というのが、最も理想的な家族のモデルだった。お年寄りは住み慣れた自宅で親孝行な息子とその妻にお茶を入れてもらい、庭で椅子に座って、楽しそうに遊びまわる孫たちを眺めて過ごし、天寿を全うするという構図だ。

 しかし、社会の発展につれて、昔の大家族に代わり、夫婦と子どもの3人の核家族がモデルになったため、お年寄りだけの暮らしを余儀なくされるようになってきた。年を重ねるにつれ、老人だけの生活は不便になるが、仕事に奔走している子どもたちは親の面倒を見る時間がない。そうした場合、ホームへ入るか、それとも自宅で老後を送るか、どちらを選べばよいのだろうか。

自宅に養老サービス 「配達」

 ふさわしいホームが見つからなければ、自宅で老後を送るのはいかがだろう。「自宅養老」といっても、伝統的な意味でいう「子どもに面倒を見てもらう」のではなく、自宅に住みながら、高齢者向けの福祉サービス機構が手配する掃除や洗濯、炊事、リハビリ、治療などのケアを受けられる方式だ。西欧先進国で長年の実績を積んでいるこの方式は、人間味があり、一家団らんを重んじる中国人の心をとらえたせいか、人気を集め、全国の都市で流行し始めている。

 上海市は2000年から自宅での養老サービスを各社区(コミュニティー)で導入し始めた。データによると、2010年9月25日までに、全市の233社のコミュニティー・老人ケア会社に所属する3万3700人の社員が、24万人のお年寄りに訪問ケアを行っているという。

浙江省寧波市海曙区の在宅介護センターのデイケアサービス

 ケアに携わる社員は、リストラされ再就職した女性が多い。彼女たちは毎月、雇い主の住所と希望の時間帯を書いたリストを受け取り、雇い主の住所までの行き方を確認し、ケアの時間帯についてお年寄りやその家族と打ち合わせるために訪問する。健康状態によって、軽度、中度、重度という三段階の介護ケアに分けられている。身の回りのことはできる軽度の人に対しては、週8回、毎回2時間の介護を行う。また、寝たきりの重度の人には、週15回訪問する。

 その後、社員は時間割りに従って訪問する。時給は12元で、働けば働くほど収入は多くなる。一カ月3000元以上の収入があった社員もいる。福祉サービス機構は社員と労働契約を結び、失業・養老・医療などの保険料を負担し、祝日・休日に出勤した場合は手当てを支給し、再就職した社員に喜ばれている。

 このように、独居老人のケアに役立ち、また多くのリストラされた人々に再就職の機会を与えることができ、一挙両得の政策だともいえる。しかし、自宅養老にも欠点がないわけではない。例えば、再就職した女性たちは簡単な育成訓練しか受けていないため、簡単な家事しか任せられず、専門的な医療介護をすることはできない。お年寄りの健康状態が悪くなった場合は、コミュニティー病院の医師に往診してもらわなければならない。これもコミュニティーの介護・医療体制に関する新たな課題だ。

 

 

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