中衛市が取り組む砂漠化防止の新局面

 

孫雅甜=文・写真

トングリ砂漠(内蒙古、甘粛、寧夏をまたがる中国の四番目の大きさを持つ砂漠である)の東南の縁に、市の7%が砂漠という都市・中衛がある。中衛市は寧夏回族自治区の中部乾燥地帯にあり、強風と砂あらしが頻発し、その被害には深刻なものがある。

中衛市の速成林基地 芽吹き始めた旱柳の苗木

長く砂あらしと干ばつの被害に悩まされてきた中衛の人々は、大自然と対決するために知恵をしぼり、多くの治砂造林法を開発してきた。中でも独特なのが「麦草方格」だ。これは、砂中に麦わらを約1メートル四方の格子状にしてスコップで押し込み、砂の動きを抑える固定法で、トングリ砂漠の(内蒙古自治区)包頭-(甘粛省)蘭州鉄道の両側に55キロにわたる幅500㍍の防砂帯を作り上げ、砂を食い止め樹木を育て、環境を大いに改善した。1990年代からこの方法で大規模な砂漠化防止が進められ、その面積は現在では累計で約4万haに達している。

この数年、中衛の人々は新たに樹幹ラッピングやドリップ式灌漑などの技術を生態保護林に応用している。トングリ砂漠東南の縁にある中衛の美利造紙工業パーク周辺では、植栽されたばかりの防砂林にこれらの技術が使われている。ここでは、約1300haの土地に旱柳(ペキンヤナギ)の苗が植えられているのがはるかに見渡せ、1株1株強風の中でもしっかりと立っているのが分かる。近づいて見ると、おのおのの幹にはビニールのラップが巻かれており、根元はドリップ式灌漑のパイプからの水で潤っている。砂漠では、日差しの強さや砂あらしの激しさのため、植えたばかりの苗は水分をうまく吸い上げられず、すぐに枯れてしまう。このため幹にはラップを巻いて内部の水分を保ち、蒸発を食い止めているのだ。そして、苗木が発芽した後でこのラップを取り去り、自然に成長できるようにする。生態林で使われるドリップ式灌漑の水は主に黄河から引かれており、一部には地下水も使われている。中衛市では、樹幹ラッピングのほか、根元を膜で覆う技術も試験的に行っているが、これは水をまいた後をビニールの膜で根元を覆い、水分の蒸発を防ぐものだ。

速成林基地そばにある野菜のハウス 苗木に行われているドリップ式灌漑

中衛市林業生態建設局の高級林業エンジニアの兪立華さんは、林業の仕事に30年以上携わってきたベテランで、防風治砂に豊富な経験を持っている。彼によると、樹幹ラッピング技術はこの3、4年の間に中衛で使われるようになったもので、樹幹ラッピングとドリップ式灌漑技術の結合で、苗木の活着率は95%以上と大幅に引き上げられた。「この方法を採用していなかったころは、いったん風が吹くとすぐに苗木は枯れてしまいました。はっきりした効果が出ています」

中衛市林業生態建設局の兪立華技師

苗木を植えて1年後からは枝が伸び、防風・防砂の効果が出始める。3年後には樹冠が茂り、生態防護林が十分な役割を果たすようになり、工業パークを守れるようになる。

しかし、こうした防護林を作り上げるためのコストは決して低いものではない。兪技師の説明によると、苗木購入や、穴掘り、植樹、ラッピング、水遣り、管理保護の作業に費用がかかる。苗木を例にすると、「1株の旱柳は20元余り、これは私たちにとって決して安いものではありません。数年来の治砂造林で必要な苗木は相当な数に上り、地元の苗木だけでは足りませんでした。しかも、ここの苗木は規格が小さく(直径3㌢)で、活着が難しいため、苗木の多くは山西省や河北省で買い付けました。これもコストを押し上げています」」このほか、作業員を雇うためにも毎日1人あたり80元のコストがかかっている。

いくら生態保護林造成のコストが高くても、その長期的な役割は絶大だ。兪技師は、防護林がもたらす効果と利益について次のように概括している。「生態林は環境を改善しました。工業パークを保護することで、工業プロジェクトや資本の誘致を容易にしたのです」

 

人民中国インターネット版 2011年4月29日

 

 

 
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