山西省左権県太行山に抱かれた八路軍ゆかりの地

 

左権県旅遊局=文 馮進=写真

左権県にある「将軍望遠」という奇岩。山容は望遠鏡をのぞく彭徳懐・八路軍副総司令の姿にそっくりなため、この名がついた(写真提供・左権県旅遊局)
山西省東部の太行山の麓に、「左権」という美しい町がある。山西省、河北省、河南省と境を接しているこの町は、東に河北平原、西に山西省の奥地を臨み、昔から「晋の国境の鎖鑰(外敵の侵入を防ぐ要所)、山西の障壁」と呼ばれている。豊かな自然環境を擁する左権県は、独特な地域文化を育てる一方、中国革命史においても特別な地である。

将軍の名前を冠した町

左権県はもともと「遼県」と呼ばれ、8年間の抗日戦争時に、八路軍本部、中国共産党中央北方局、八路軍129師司令部など150の党・政・軍・商工・学校の機構の所在地であった。朱徳、彭徳懐、鄧小平、左権など中国共産党の有名な指導者たちがかつてここで戦闘や生産の指揮を行った。

左権県麻田鎮にある八路軍本部旧跡記念館
1942年5月、日本軍が大兵力を動員して太行、太岳地区(山西省中南部)に「大掃討」作戦を発動した。5月25日、遼県に置かれた八路軍本部が日本軍に包囲された。当地を守備する八路軍は、彭徳懐副総司令と左権副総参謀長に率いられ包囲網突破作戦を実施した。双方の兵士の殺し合う叫び声、銃声や手榴弾の炸裂音が入り乱れ耳をつんざき、硝煙が満ちて昼間を闇夜に変えた。激しい戦いの中、主力部隊の援護をしていた左権将軍は日本軍の戦闘機が投下した爆弾が命中して犠牲になった。37歳の若さであった。同年9月、「抗日戦争」で国に殉じたこの中国共産党の最高位の将軍を記念して、遼県を左権県と改称した。

現在、八路軍本部旧跡と鄧小平、左権、羅瑞卿らの中国共産党指導者の旧居は、「八路軍本部記念館」として1980年に公開され、国家重点文物保護単位に指定されている。中国近現代史の教育基地として、参観者は毎年延べ10万人以上である。左権県は特別な歴史的地位にあり、各界の幅広い注目を集めている。

美しい自然環境

左権県は山紫水明で、景色の美しい町だ。県内の龍泉国家森林公園をはじめとするエコ観光は、雄壮で険しい太行山脈の特色が凝縮されている。ここには、冬には氷柱、夏には白いねり絹が開いたように見える滝や、あでやかさを競う花々、若草が緑の敷物のような北天池の高山草原、青いさざ波が揺れ動く左権湖、うっそうとした原始林などの自然景観のほか、南北朝時代に建てられた鍾乳洞建築群の雷音寺、元代に設立された紫金山書院と気象台、また、歴史上攻略の要所として争奪戦が繰り返された黄沢関、峻傑関、黒虎関などの古跡もある。龍泉国家森林公園をぶらぶら歩くと、調和のとれた自然の美を楽しむ一方、先人から伝えられた歴史の趣を味わうこともできるだろう。

山が美しくて、空気がすがすがしい左権県の風光
左権県にある44の名所旧跡と800の自然観光スポットは、「太行山脈の大画廊」と形容される壮麗な景観をなしている。

この「画廊」は、奇異な山、秀麗な庭園そして美しい森という表情を持つ。山は険しいだけではなく、独特の山容を呈し、特に麻田百里一帯の「将軍望遠」「亀兎山」「神女峰」などの奇岩は名前どおりの形をし、それぞれ心を打つ物語や伝説がある。1942年に陳毅元帥は左権県で療養していた時、『過太行』という心から太行地区を賛美する130行余りの有名な長篇詩を書いた。庭園は、龍泉国家森林公園の滝、澄みきった月牙湖、仙境のような雷音寺など、自然の妙味に溢れ、天然のままである。林は植生が保護されているため、空気がすがすがしく、青々と生い茂る草木が日光を遮るため、真夏でも秋のような涼しい風がそよぐ。

魅力あふれる文化と芸術

左権県の民間芸術と言えば、小花戯(地元の伝統的な演劇)と民謡が最も代表的だ。地元の人は誰でも歌ったり踊ったりすることができる。

小花戯はメロディーが軽快で、ステップが軽やか、出演者の道具は二つの扇だけで、生活や労働、喜怒哀楽など様々な感情を細部まで表現することができる。中国民間文芸の大きな花園の中の一つの小さな花ぐらいにしか見えないが、小花戯は、いくつかの国家クラスの芸術大賞を受賞している。そのわけは、積極的で楽観的な生き様がかもし出され、喜びと活気に満ちた舞台の雰囲気がいや応なく人々を引きつけ、彼らの心を打つからだ。

高らかに響き渡る澄んだメロディーとユーモラスで分かりやすい歌詞の左権民謡は、農作業や恋愛などの農家の生活を生き生きと描く一方、地元の人々の素朴な人柄と前向きな人生観を謳歌している。そのため、地元で代々歌い継がれてきた左権民謡は2006年、音楽分野における中国無形文化財のランキングでトップとなり、また2010年の上海万博の大舞台でも歌われた。

左権県の伝統的な民間芸術である「小花戯」

小花戯と左権民謡は一つの茎に二つの花が咲くハスのように、双方相まって栄えてきた。もし左権民謡を聞きながら小花戯を楽しめば、郷土の息吹と濃い地方色が、きっと人々の目と耳を大いに楽しませ、強烈な印象を与えるに違いない。

非常に不思議なこの小さな町、左権県は、険しい地理環境と豊かな物産により、かつて中国人民が独立と解放を勝ち取るのを手助けした。現在、悠久な歴史、美しい自然環境と独特の地域文化をもつこの町は、地元の文化を軸とした観光産業を発展させるべく走り出した。

 

人民中国インターネット版 2011年6月

 

 

 
 
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