野田首相訪中の成果と「中日国民交流友好年」がもたらすもの

 ――日本問題専門家高洪インタビュー

聞き手=張雪 写真=段巍 

――日本の野田佳彦首相が2011年12月25日から26日まで訪中しましたが、どのような成果があったとお考えですか?

高洪 このたびの野田首相の訪中では、主に3つの分野で成果がありました。まず政治面では「増信釈疑」、つまり信頼を高め懸念を払しょくする中で、中日両国の戦略的互恵関係を深めました。経済面では、双方が一連の共通認識を得て、これまでの基礎の上に、さらに新たな創造的成果を積み上げ、両国の経済関係を新たな段階に押し上げました。特に、グリーン経済、省エネ環境保護などの分野でプラスの進展があり、金融分野での協力でも新たな注目すべきものがありました。2012年は中国と日本の国交正常化40周年の年です。中国と日本はともに深く儒教文化の影響を受けており、「四十にして惑わず」という言葉を知っています。両国は2012年を「中日国民交流友好年」にすることを決めました。交流を通じて両国民間の相互友好関係を強化し、文化、教育、メディア、青少年の交流を強めることを希望しており、すでにハートをかたどったロゴも制作しています。

――2012年は「中日国民交流友好年」ということですが、これについて両国は具体的にどのような計画を持ち、両国関係の発展にいかなる意味をもたらそうとしているのでしょうか。

高洪 両国は2012年は「中日国民交流友好年」と位置づけていますが、これはかなり実務的です。「国民」を強調しており、政治的意義のものではなく、両国が国民レベルの交流を通じて、より理解を深めるというもので、この考え方は非常に正しいものと言えるでしょう。内容についてもきめ細かな計画を持っています。2012年、両国は5000人規模の青年相互訪問を計画しており、3100人の高校生が日本を訪問し交流することになっています。これは中国の青少年にとって震災後の日本社会を知る助けになるはずで、とてもいい計画だと思います。また、文化交流活動も非常に多く行われます。すでに全体的な方向はまとまっており、具体的な内容の詰めが行われています。メディア間の交流も非常に重要です。かつては産業界や政治家の民衆に対する影響力が突出していたのに比べ、現在はメディアの民衆に対する影響が大きくなっています。産業界は経済的利益を実現するために、積極的に両国関係を推進し、特に経済協力関係で高いレベルを目指し、経済関係の発展によって政府関係にしっかりとした基礎が打ち立てられました。しかし現在は、情報化社会の到来によってメディアの影響が次第に産業界の政府に対する影響を上回るようになっています。メディアは発行部数、視聴率、クリック率を追求し、衝突的な事件により関心を持ちます。このため、メディアはより多くの両国関係にプラスになる報道を期待されているにもかかわらず、日本のかなり多くのメディアは中国の脅威、中日間の衝突、紛争などについて熱心にあおりたて、間接的に民衆の両国関係に対する見方に影響を与えています。これに影響を受けた民衆の見解は、間接的に政府の政策に反映されることになります。このため、私は個人的に「中日国民交流友好年」においては、教育、青少年の交流は重要ですが、メディアの交流はさらに重要だと認識しています。メディアが両国関係に改善に努力し、力を与えることを望んでいます。

――日本が今回明らかにした100億ドルの人民元建て債権(中国国債)購入にはどのような意味がありますか?

高洪 中国と日本は世界第1、第2の大債権国です。両国は以前から多くの米国国債を購入してきましたが、現在の米国の経済状況は非常にいいというわけではありません。さらにユーロ国債は世界金融危機、ヨーロッパのソブリン危機の影響を受けており、中日両国は投資の多元化、債務リスクの分散化に向かう客観的必然性があります。中国は野田首相が財務大臣だった時期に、日本が持つ76億ドルの米国国債を購入しました。今回日本は100億ドルの中国国債購入を明らかにしましたが、日本の外貨準備高に占める割合は1%にも達しません。しかし、お互いに国債を持ち合うことは、投資リスクの分散に効果があり、大きな象徴的な意味があります。日本の中国国債購入は、綿密な計算を経たもので、これは日本の中国経済発展に対する高い信頼を表しており、一部に存在する「中国経済崩壊論」に対する反撃力を持ち、同時に国際社会に模範を示す役割を果たすものです。

――ヨーロッパのソブリン危機がさらに混迷を深め、グローバル経済の情勢が非常に複雑化する局面は、世界第2位と第3位の経済体である中日双方の経済協力に対してどのような影響がありますか? また、中日双方はこれにいかに対応すべきでしょうか?

高洪 経済の地域化競争という角度から中日関係を見ると、両国には明らかな利益の一致性があります。現在、東アジアの分散状態にある不利な局面から見ると、中日が経済協力の展開と歩調を合わせた行動を取り、ウインウインの関係を築くことは、戦略的互恵関係の重要なかなめとなるものです。双方は戦略的互恵を通じてウインウインを勝ち取るべきですが、互恵の前提には当然相互信頼があり、相互信頼は戦略的な猜疑心を除去するものです。もし、民族的心理障害を乗り越えることができれば、政府、国家、民族レベルでの争いを平和に変えることができ、中日協力の将来は非常に積極的な意味を持つものになるのです。

 

高洪(gao hong) 

1955年遼寧省瀋陽市生まれ。1993年中国社会科学院研究生院卒業、哲学博士。現在は中国社会科学院日本所副所長、研究員。主な研究分野は日本近現代政治史、現代日本政治、中日関係。中日関係研究センター特約研究員、日本政治研究センター秘書長、仏教研究センター副秘書長を兼務。 

 

 

 

 

人民中国インターネット版 2011年1月12日

 

 

 

 

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