中国企業家の3大難問 ボアオ・アジアフォーラム

 

海南省博鰲(ボアオ)で開催されたボアオ・アジアフォーラムでは6日、さまざまな分科フォーラムや円卓会議が行われ、中国の企業家の経営と発展が直面する複数の「難問」が注目を集めた。これに対し、各国の選りすぐりの人材が率直に意見を述べ、中国のビジネス環境の改善に期待するとともに、中国の企業家が直面する現実的な困難が緩和され効果的に管理コントロールされることを願うと述べた。「環球時報」が伝えた。

中国企業家が直面する難問は主に次の3つだ。

▽第一の難問:資金調達

資金調達の難しさが中国の小規模企業やミクロ型企業にとって早急に解決が必要な問題となっている。同日のボアオ・アジアフォーラムでは「小規模・ミクロ型企業の資金調達発展報告:中国の現状とアジアの実践」が発表され、国務院発展研究センター金融研究所の巴曙松研究員が発表の席で、小規模・ミクロ型企業が現在直面する資金調達の難しさ、コスト上昇、モデル転換の圧力という3つの大きな問題の中では、資金調達の難しさが突出していると述べた。

2012年には、世界経済の不安定要因の影響を受けて、中国の小規模・ミクロ型企業の経営状況は全体として惨憺たるものだったが、調整やグレードアップを主体的に求める意欲は明確で、新たな資金を調達する必要に迫られていた。

だが銀行にはリスク回避のメカニズムがあり、現在はほとんどの小規模・ミクロ型企業が銀行から資金を借り入れることができず、とくに創業から3年未満の小企業は、立ち上げ初期の段階にあることがほとんどで信用記録がないため、親類や知人から資金を借りるといったケースが多い。

同報告によると、小規模・ミクロ型企業の資金調達難を解決する一つの方法は、担保の条件を緩和・改善すること、新しい担保方式を生み出すことだ。現在、小規模・ミクロ型企業には整った効果的な担保メカニズムがない。プライベートエクイティティファンドの春華資本の胡祖六董事長(会長)によると、現在ある小規模・ミクロ企業向け金融担保メカニズムは現状に対して効力を失っており、これは非常に驚くべきことだという。

ロイター社が同日伝えたところによると、この報告は10数分野の中国の小規模・ミクロ型企業1000社を調査研究したもので、このうち銀行から資金を借り入れられたところは40%にとどまった。

▽第二の難問:イノベーション

1991年のノーベル経済学賞受賞者で102歳になるロナルド・コース氏は、高齢のためフォーラム会場には姿を現さなかったが、自筆の書簡を寄せて中国企業家に「みなさんはイノベーションで主にどのような困難があるとお考えか」と質問を投げかけた。

2006年のノーベル経済学賞受賞者でコロンビア大学教授のエドムンド・フェルプス氏はフォーラムに出席し、「アジアの自主イノベーションの推進にとって主な障害は何か。政府の問題か、それとも資金の問題か」とたずねた。

海南航空の陳峰董事長は次のように述べた。中国がイノベーションのメカニズムを生み出すには長い時間が必要であり、時間をかけなければイノベーション人材を育成することはできない。中国の民間企業の多くは(米アップル社を創立した)スティーブ・ジョブズ氏の素質を備えている。冒険心に富み、こだわりをもち、ちょっと風変わりで、想像力に溢れた行動をこつこつ積み上げ、イノベーション能力という点ではジョブズ氏に引けを取らない。中国にはイノベーションの人材がいないのではなく、イノベーション成果を育む土壌が欠けているのだ。最も関心があるのは、なぜわれわれにはアップルを生み出す土壌がないのかということだ。

宝塔石化集団董事局の孫◆超主席によると、現在、科学者がおかれている外部の環境は、科学者が心を落ち着けて研究に力を注ぐことを許さない。特に具体的にイノベーションを投入する段階になると、期待される目的や要求が非常に高く、(資金を)投入する時、商品の売買と同じように判断する。これは事実上科学者の失敗を許さないということになる。科学イノベーションとは失敗のプロセスを踏むものであることを理解しなくてはならない。

胡董事長によると、イノベーションとは資金の投入だけではない。旧ソビエト連邦は研究開発費用の国内総生産(GDP)に占める割合が欧州や米国よりも高かったが、20世紀を通じてイノベーション大国になったことは一度もない。これは制度と非常に関連している。米国の経済学会で主席を務めたことのあるスティーブ・バルマー氏はかつて次のように述べた。問題はイノベーションだけにあるのではない。米国のトップレベルの研究所や大学はどこにでも非常に優れた中国人の若手人材がおり、彼らは学術レベルや研究・イノベーションの能力は高いが、教員やポストドクターになることを望み、起業しようとはしない、という特徴がある。中国には米国のナスダックのように真の意味で企業のイノベーションを支援する資本市場がなく、資本市場の奨励メカニズムがなく、最も優秀なイノベーション人材はあえて冒険して起業しようとはしない。真の、長期的なビジネス上の成功は、イノベーション、企業家の能力、資本市場を有機的に結びつけた人のものだ。

▽第三の難問:信頼

中国で企業を経営する際、企業家の多くが真の意味で「信頼」を得るのは難しいと話す。台湾地区の仏教の大家・星雲法師はフォーラムの席で、企業家は稼ぎたければイノベーションをやり、慈善活動を行い、次世代を育て、社会への還元を考えなければならないと述べた。

信用システムが整っていないだけではない。北京大学の張維迎教授によると、政府と市場の境界線をどのように引くかということの意味が非常に大きい。政府は管理やコントロール、行政審査を緩め、市場にもっと役割を発揮させる必要があるという。

問題はこの3つの難問だけではない。同日行われた中国民間企業家円卓会議では、中国共産党第18回全国代表大会(十八大)後の新指導部がうち出した政策シグナルに対し、民間企業家から安堵の声が上がった。今回のフォーラムでは多くの企業家に関する議題が取り上げられただけでなく、フランスの週刊誌「ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」が伝えたように、自動車と社会、経済のモデル転換と不動産市場の調整といった議題が取り上げられた。また中国政府が食品の安全性に関する問題を非常に重視している姿勢がうかがえたという。

 *◆は玉へんに行

 

「人民網日本語版」2013年4月8日

 

 

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