サンクトペテルブルク「G20サミット」展望

9月5~6日、主要20カ国・地域(G20)サミットがロシアのサンクトペテルブルクで開催される。2009年に国際経済協力の第1の協議体とされて以来、G20は世界経済回復促進、金融監督管理強化、国際金融機関改革などの面で大きな成果を上げてきた。今、世界経済情勢は複雑化し、先進国と新興市場の経済成長・回復にも新たな変化が生まれており、G20構成国に政策協調面での努力が求められている。

当面の最重要議題

今回のサミット議長国ロシアは「成長と雇用」をテーマに掲げ、8つの優先的議題(力強く持続可能でバランスの取れた成長の枠組み、雇用、国際金融構造改革、金融監督管理強化、エネルギーの持続可能性、共同発展、多国間貿易の促進、反腐敗)を設定した。

今回のサミットの最重要議題はやはり「世界経済の力強く持続可能でバランスの取れた成長の促進」だ。さしあたって、世界経済回復の道のりはまだ険しい。7月、国際通貨基金(IMF)は今年の世界経済成長予測を3.3%から3.1%に下方修正した。しかし先進国では調整が進み、経済情勢に好転の兆しが見られる。米国経済は穏やかな回復基調に乗り、不動産市場が回復、株式市場は高値を更新し、製造業・サービス業が伸び、貿易赤字は明らかに縮小し、雇用情勢が改善されつつある。「アベノミクス」の一環として行われた「日本版」量的緩和政策の刺激を受け、日本経済は3四半期連続でGDPが成長。日経株価指数の上げ幅は世界の各主要株式市場を上回り、大幅円安で輸出が大きく伸び、通貨は引き締め局面から転じた。欧州は債務情勢が安定しつつあり、工業生産高と市場の自信が回復、今年第2四半期の経済にわずかながら成長が見られ、2011年以来の景気後退局面が終了した。米国と日本のけん引により、先進国全体の経済情勢は明らかに改善し、経済協力開発機構(OECD)景気先行指数は2011年5月以来の高い値まで回復した。これらと対照的なのが新興市場の経済情勢だ。新興市場経済は明らかに悪化し、経済成長が全体的に鈍化、おしなべて伸び悩んでいる。新興経済体は、インフレ率の高止まり、失業率の上昇、国際収支悪化、社会矛盾の増加など、短期的には解決できない構造的矛盾に数多く直面している。BRICS諸国もかつての光を失い、ほとんどの国で今年第1四半期経済成長率が2009年以来最低のレベルまで下がった。インドは巨額の経常赤字に直面、ブラジルはインフレから抜け出せず、ロシアはエネルギー輸出が減少している。インド、ブラジル、南アフリカなどでは急激な通貨安となり、株価が暴落した。しかし、中国の経済成長率はなおも比較的高い水準にあり、経済構造調整が加速、内需が拡大し、雇用情勢の見通しも明るく、人民元レートも徐々に上昇している。中国経済は依然として主要な世界経済安定力の1つである。

経済体ごとに分化しつつある経済成長情勢のほか、米国の量的緩和政策打ち切りも今回のサミットの注目議題だ。5年続いている量的緩和金融政策は米国経済の回復に重要な役割を果たし、今は打ち切りの時期と方法をどう選ぶかという問題に直面している。ドルは主要国際通貨であるため、米国の量的緩和政策打ち切りは世界の流動性引き締めを意味し、世界経済成長と金融市場に重大な影響を及ぼすと見られ、今回のサミットの焦点になるに違いない。

その他の議題では、雇用、金融監督管理、国際金融構造改革、共同発展の面で多かれ少なかれ進展があるだろう。雇用分野では、「グリーンで持続可能な雇用機会の創出、青年育成プロジェクトへの投入強化、教育研修のクオリティ向上と青年雇用の促進、社会保障体系の整備」の面で進展があると見られる。国際金融監督管理分野では、G20枠組み下の金融安定理事会(FSB)がますます重要な役割を果たすようになっており、FSBメカニズム化構想のひとまず固まるだろう。発展に関する議題には、主に食糧安全、人的資源開発、金融包括性、インフラ投資などが含まれる。今回のサミットでは、食糧安全分野で比較的大きな進展がある見通しだ。

エネルギーの持続可能性、反腐敗、多国間貿易促進では、それほど大きな進展はないだろう。エネルギーの持続可能性については、エネルギー生産・輸出大国であるロシアがエネルギー問題を今回のサミットの注目点にしようとしている。反腐敗では、G20枠組み下で初めて、ロシアが独立した反腐敗機関の設置強化を打ち出す。貿易では、この1年、太平洋・大西洋における米国主導の自由貿易協定交渉推進により、世界貿易構造に重大な変化が生じたことに鑑み、「断片化」した貿易構造と世界貿易機関(WTO)の役割に注目が集まるだろう。しかし共通認識に達せるかどうかは、まだ観察の余地がある。

G20の永遠の焦点、「世界経済成長見通し」

先進国、特に米国は2008年以来の調整を経て、構造改革が進み、金融市場が安定し、技術革新と産業グレードアップが加速し、経済はほぼ安定回復の軌道に乗り、再び世界経済成長の主要推進力となった。現在、世界経済成長の60%は先進国がけん引している。これに比して、発展途上国が直面する情勢はより厳しいものだ。短期的には、米国の量的緩和政策打ち切りで資本流出、通貨安、金融市場の動揺が起き、ひいては経済、金融、社会の危機まで引き起こされるだろう。中期的には、発展途上国はここ数年の高度成長で構造改革がなおざりになったため、経済成長原動力が不足する事態を招いた。一方、今回の先進国の経済回復は主に製造業振興と輸出成長によるもので、発展途上国製品の受け入れ能力にはまだ顕著な増加が見られない。そのため、発展途上国は巨大な経済悪化圧力に直面している。インド、ブラジル、ロシア、南アフリカなど大型新興経済体は、経済が急激に悪化し、金融市場の動揺が止まらず、高度成長後の持続成長力がなく、巨大な構造改革圧力に直面している。ここで指摘すべきなのは、中国の発展見通しが依然として明るいことだ。最近発表された7月経済データによると、中国の経済には安定の兆しが見られ、各大手国際投資銀行は再び中国経済成長予測を上方修正し、中国経済の見通しに信頼を寄せている。中国経済の「グレードアップ版」の推進に従い、中国の世界経済成長エンジンとしての地位はさらに顕著になり、世界経済にいっそう貢献するようになるだろう。しかし、いずれにせよ、ポスト危機時代の世界経済は比較的長期の中低成長段階に入ると見られる。国際経済協力の第1の協議体であるG20の任は重く、道のりは遠い。(文=張茂栄 中国現代国際関係研究院世界経済研究所副研究員)

 

「北京週報日本語版」2013年9月2日

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850