上海自由貿易区は体制改革問題にメス入れる場所

 

8月に中国国務院が設立を承認した中国(上海)自由貿易試験区が近々、正式に始動する。上海自由貿易区の位置づけと発展について、以下の三つの問題をはっきりさせる必要がある。27日付中国証券報が伝えた。

一、上海自由貿易区はどのような区域なのか。自由貿易区は過去30年間の改革・開放政策で幾度となく使用されてきた旧モデルであるとの見方がある。自由貿易区と言えば、「特区」や「保税区」が連想され、強力な政策の後押しを得られる区域であると考えられる。そのため、資金が流入すれば、経済発展を牽引できると見込まれている。

上海自由貿易区はすでに改革試験区のレベルまで引き上げられている。上海自由貿易区は改革のフラグシップであり、今後の改革の深化に向けての道しるべとなって、中国経済のモデルチェンジを推進するための雛形を提供する。そのため、試験成果を模することができるようにすることは、上海自由貿易区の重要な点である。改革に当たって、政府は権限の部分で大幅な譲歩を強いられることになるだろう。今後の改革に向けた問題の解決に着手する、いわゆる「メスを入れる」場所を確立することで、現在の体制の弊害を見極め、正しい活路を見出す必要がある。

二、企業は自由貿易区をどのように見るべきか。大部分の企業はやはり、自由貿易区を天国のようなものであると考えている。経済学の視点からすれば、今後の市場化改革において、自由貿易区は価格発見機能を確立しなければならない。自由貿易区に進出した企業は、経営モデルを一新する必要がある。そうすることで始めて、グレードアップした世界レベルの企業が生み出すことできる。

規制が多いため、中国での企業経営は難しいとの見方があるが、それも決して筋の通っていない考え方ではない。しかし、成功した企業の背景には政府の権力による後押しがあることも確かだ。経済成長を牽引する要素の大部分は地方政府と国有の経済部門が握っている。土地、採掘権、税収政策、参入の承認、環境保護の基準など、政府がわずかでも改正したり、わずかでも後押しする政策を実施すれば、関連するプロジェクトは利益を手にすることができる。一方、自由貿易区に参入する企業について言えば、規制が緩和されたことで、運営コストを抑えることができるものの、その代わり政府の支援の手もない。自由貿易区の企業は今後、より一層高い基準に直面しながら、国際ルールの下での競争を強いられる。セルフ・イノベーションに挑む企業家精神を鼓舞し、競争とイノベーションを奨励することこそ、中国企業が自由貿易区で成功を収めるための唯一の活路となる。

三、自由貿易区にはどのようなリスクがあるか。すでにタイミングを逃してしまった改革もいくつかある。中国は過去10年間、米国の景気サイクルの好機をとらえ、グローバル化の成果を最大限に活かすことができず、経済構造の難題を解決できなかった。

そして今、米経済はすでに景気後退に向かい始めている。資本項目の規制と言う「ファイアウォール」があるにも関わらず、利ざやを稼ぐことを目的とした投機資金の大量流入で、中国は大きなダメージを被った。しかし、「ファイアウォール」がいくらか効果を発揮したことで、ある程度のリスクは防ぐことができた。そのため、当面の急務は、規制と言う「ファイウォール」を急いで撤廃することではなく、早急に国内の財政体制を整備することであり、人民元のグローバル化と資本項目に関する規制緩和に向けた条件を整える必要がある。この視点からも、自由貿易区は中国の改革に「メスを入れる」場所となるべきであり、体制の改革に大きな役割を果たしていかければならない。

 

「中国証券報」より 2013年9月27日

 

 
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