経済学者が「決定」を解読 4つの分野に投資の潜在力

 

「中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で打ち出された経済体制の改革における重要な進展は、市場資源配分の「決定的な役割」の発揮だ。今後、市場の資源をどのように配分するかは企業家が決めるようになり、政府の活動の重心はマクロ調整、市場の監督管理、公共財の供給に置かれることになる」と、中国国際経済交流センターの鄭新立常務副理事長(中央政策研究室元副主任)は語った。

 三中全会が全国・全世界に向けて発した最も重要なシグナルは、改革を全面的に深化させるというものだ。このたびの改革はこれから10年間続く見込みで、二つの重点がある。一つは、資源配分で市場が果たす役割を、基本的な役割から決定的な役割へと改め、企業が創造的な経営活動を行うことを通じて経済の活力を喚起し、さらには経済の安定的成長の流れを維持することを目指すという点だ。もう一つは、混合所有制経済(複数の各種経済セクターからなる所有形式)を積極的に発展させることだ。

 「決定」の解読を通じて、経済学者たちは企業家の今後の投資について次のような見方を打ち出した。

 第1に投資する価値のある分野は先進的な製造業だ。全国政治協商会議経済委員会の李毅中副主任(工業・情報化部元部長※部は日本の省に相当)によると、現時点では西側諸国がバーチャル経済を発展させすぎたことの影響により、また国民の側の準備や制度面での準備が不足していることから、金融業と不動産業が過度に拡張してバーチャル化し、実体経済が深刻な圧力を受けており、資本、人材、物資、土地などの要素が実体経済から流出してしまっている。現在は工業化の重要性や困難さに対する認識を深める必要がある。工業化は社会進歩の歴史で必ず通る段階であり、これを飛び越えることはできない。科学の進歩によって世界の先端レベルとの距離を縮め、工業経済の質と効率を大幅に向上させることが必要であり、特に発展を制約する体制的、メカニズム的、構造的な「病巣」を取り除くことが必要だという。

第2に投資する価値のある分野は生態環境保護をめぐる産業だ。「決定」は第三者による整備の発展が必要であるとし、これまでのような汚染を出した者が汚染を処理するというモデルから、汚染を出した者が汚染の処理にかかる費用を支払うモデルへのバージョンアップを打ち出した。これはバランスを取るための重要なメカニズムであり、基準を超えて汚染物質を放出する企業がこれまでのように隙に乗じて得をするのを効果的に抑制するものとなる。今後の環境保護の市場化に向けた発展では、巨大な環境保護産業を育成することになる。たとえば脱硫・脱硝、除塵、水の汚染処理などの専門的技術が飛躍的な発展を遂げると共に、相当な規模の税収と雇用を生み出すことになるとみられる。

 李副主任によると、今の中国が取り組むべきことは、循環型経済の発展に力を入れ、先進的な技術設備を採用し、省エネ、エネルギー消費の削減、汚染物質の排出削減、汚染処理を進め、汚染物質の排出を自然の浄化能力を超えない範囲に収め、(自然という)富を守り、増やしていくことだという。

 第3に投資する価値のある分野はサービス業、特に研究開発や物流などの生産型サービス業だ。李副主任によると、工業はサービス業の基礎であり、工業化のプロセスでは引き続き工業が経済を牽引する主導的なパワーになるので、これを周縁化させてはならない。そこで製造業のサービス化の戦略的な方向性を大いに推進し、製造業の主要製品をサービスの機能へと拡大し、アフターサービスから故障の診断、メンテナンス・修理、検査・チェック、遠隔サポート、オンライン店舗、更新・改良といった付加価値サービスや専門的サービスに至るまで、付加価値を高めていくことが必要だという。

 第4に投資する価値のある分野は輸入代替産業だ。鄭常務副理事長によると、現在、中国の年間輸入額は1兆ドルを超えており、輸入される製品の多くが国内で、より安いコストで生産できるものだ。現在の市場ニーズを背景として、企業がコストを抑えられれば、国内市場を押さえることができるだけでなく、輸出の問題も考えられる。中でも最もわかりやすいのは石油や化学工業製品だ。中国は現在、年間で石油を2千億ドル分と化学工業製品を2千億ドル分、それぞれ輸入している。石油資源に乏しいとはいえ、現在の中国の石油製錬技術はかなり成熟したものであり、石炭の液化など石油を輸入するよりもコストのかからないエネルギー産業を発展させることで、これを石油の輸入に換え、現在のエネルギー局面を変えられる可能性があるという。

もう一つの代表的な輸入代替産業は集積回路産業だ。鄭常務副理事長によると、中国では毎年2千億ドル近い集積回路を輸入しており、国内の企業による高精度の集積回路の研究開発と生産には今なお困難がつきまとうが、携帯電話用チップといった一般的な集積回路の設計・加工産業は発展に力を入れるだけの価値がある。韓国のサムスン電子を例に挙げると、ここ数年の同社は携帯用チップを成長源とみなし、中国の輸入額に相当する売上高を達成している。

 大豆栽培に関連した産業にも潜在力がある。中国は昨年に5千万トンを超える大豆を輸入し、主に大豆油と豆かすを製造した、実際のところ、中国には茶の実を搾ってつくる茶油などの植物性油脂の生産能力があり、その発展に力を入れれば、国内市場の需要を満たし、輸入に代わることができるようになる。新疆ウイグル自治区の北部国境地域の伊犁や阿爾泰など、気候条件がふさわしく、休耕地が多い地域は、企業が進出して大豆を栽培し、関連産業を開発するのに最適な場所だといえる。

 

人民中国インターネット版 2013年11月20日

 

 
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