双子の共感

孫少凱(北京第二外国語大学)

 

私には双子の妹がいます。ただ不思議な事に、顔は全く似ていません。性格も好みも違うし、似ているところはほとんどありません。幼稚園からずっと一緒でしたが、大学入学を機に、二人はそれぞれの別の道を歩みはじめます。妹は憧れのアナウンサーを目指し、地元の大学でメディア関係を専攻し、一方、私は地元を離れ、地方の大学で日本語を専攻することになりました。このように全く異なる進路を選んだ二人でしたが、後に二人はまた同じ夢を共有することになっていくのです。エピソードは大学一年にまでさかのぼります。

冬休みのことでした。家に帰って、机に向かってのお勉強はどうも気が進みませんでした。ある日、日本のドラマでもみようと思って、『1リットルの涙』を見ることにしました。当時、妹は日本のことにあまり関心を持っていなかったので、ドラマは私一人で見ることにしました。感動して涙を流している私を見た妹は「鬼子のドラマなんか見て、なんで泣いてるのよ。正月早々、縁起が悪いわ。」と言いました。私は「一話でもいいから、一緒に見てみない。いいか悪いのかは自分の目で見て判断してみてよ」と伝えると、妹はイヤイヤながらも付き合って見てくれました。そしたら、妹も主人公の前向きで精一杯頑張る姿に、確かに感動していた様子でした。しかし、「どうだった、鬼子じゃなかったよね」と私が聞くと、妹は「うん」と答えただけで、その場は特に何もお互い話をしませんでした。

数日後、新学期がはじまりまもない時のことです。なんと、妹から「手紙」をもらったのです。正直、驚きました。なぜなら、私は人生で一度も「手紙」などもらったことなかったからです。しかも、手紙の差出人は一緒に育った実の双子の妹です。手紙には妹があの『1リットルの涙』から大いに影響を受けた様子が書いてあり、大学校内のラジオ番組で、なんとその内容を彼女が紹介したというのです。

「ここ中国から海を隔てた遠いところに、病魔と闘う十五歳の少女がいました。……その国とは日本です。」

たった一本のドラマが、私の妹の心を変えたのです。現在、地方のテレビ局の女子アナウンサーとして活躍する妹ですが、それ以来、日本のことが好きになったようです。先日も『感動 教師』という地方番組で『ALWAYS 三丁目の夕日』という日本映画の主題歌を用いた際、視聴者から大きな反響があったそうです。

私は現在、修士課程に学ぶ院生ですが、将来は日本の大学院に行って博士課程に進学したいという願望があります。ただ、農村に育った私は、その資金を両親に頼ることはできません。ですが、ある日、そのことを知った妹が「お姉ちゃんが日本に留学することは私の夢よ。」と言ってくれたのです!

これまで、中日友好の架け橋や外交官になるとかいった大きな夢を抱いていなかったごく普通の私に一体何ができるのか、ずっと悩んできました。そばにいる妹に起きた小さな変化は、私に大きなヒントと力を与えてくれました。数十年前の侵略時代の日本のイメージがいまだに根強い中国ですが、このような日常という中におけるごく小さな感動が共感へと広がりをみせることで、やがて大きな力となり、中日両国民の心の距離を大幅に縮めることができるのだと信じています。このような障壁は決して敷居の高いことではないことを私と妹との小さなエピソードが示しているのではないでしょうか。

 

 

 
人民中国インターネット版

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850