「ペンギン」の成功物語
 

中国では、ほぼ9割の家庭用パソコンのデスクトップに赤いマフラーを巻いたずんぐりとしたペンギンのアイコンがある。これは中国で最もよく使われているIMソフトのQQだ。

1996年、3人のイスラエル人がICQという世界初のIMソフトを開発したが、中国語版がなかったため、中国人ユーザーは高学歴のエリート層に限られていた。2年後、当時27歳の馬化騰氏とクラスメートの張志東氏が共同で騰訊(テンセント)社を設立し、このICQの機能を模倣して開発した中国語チャットツールOICQを発売した。これがQQの前身だ。QQは誕生の時から中国人ユーザーに特定し、中国語対応、オフラインのメッセージ送信、オンライン・ユーザーチェック、見知らぬ人とのチャットなどさまざまな改善を行った。後に多様なキャラクターのアイコンやQQショーというバーチャルプロダクトも開発し、QQショーにおいて、ユーザーは性別、顔、髪型を自由に設定したり、バーチャルなファッションやアクセサリで飾りつけたり、バーチャルな世界で自分が憧れるイメージを作り上げることができるようになった。

 
スマートフォンのQQアプリ

内向的で感情を表に出さない、匿名の発言を好み、バーチャルな世界で理想の自分を演じたいという東洋人の性格をしっかりつかんだ上に、各大学のBBSでのPRによって、QQはあっという間に若者や学生たちに受け入れられていった。人々はすぐEメールを忘れ、より直接的なコミュニケーションルートにシフトしていった。QQはその勢いに乗り、業界一の座に輝いた。2007年、QQの市場シェアは79・1%になったが、MSNはわずか13・4%にとどまっていた。

MSNはかつてQQの中国における最大のライバルだった。その背後にはマイクロソフトによる強力なサポートがあるほか、ウィンドウズ・オペレーション・システムがインストールされる際に自動インストールされるという優位性があった。薛芳氏の著書『企鹅凶猛――马化腾的中国功夫(凶暴なペンギン――馬化騰のチャイナカンフー)』によると、MSNが中国に進出する前、ビル・ゲイツ氏は馬化騰氏に、「中国の子どもたちにIMを紹介したQQに感謝します。彼らが大人になって、就職して、お金を稼ぐようになれば、次第にMSNに自動シフトすることでしょう」というメールを送ったという。しかし、現実は彼の予測どおりには運ばなかった。一時期ホワイトカラーの間で好評を得たが、オフラインのメッセージ送信、ファイルの送信中断後もその続きから再開するシステム、そして運営の安定性において、MSNは常にQQに遅れをとっており、QQの王者の地位は揺がなかった。

 
ディスクトップPC時代からインターネットの発展をみなが心から待ち望んでいた。
北京のこの美容院ではかつて、顧客が待ち時間にネットができるように専門スペース
を設けて評判をとったが、今では誰もがWiFiを使えば自分の携帯でネットができる

IM分野における実力を基礎に、騰訊はさらにインターネットの各分野に進出した。グーグルマップに対抗してSOSOマップをつくり、ツイッターに対しては騰訊微博(ミニブログ)、淘宝網に対して拍拍網、IEエクスプローラーに対してQQエクスプローラーを開発した。流行しているものは何でも模倣することから、「パクリ王」と皮肉られもした。しかし、大規模なユーザー陣に支えられ、どのプログラムも見劣りしない出来栄えだった。インターネット時代には、ユーザー数さえ獲得できれば、半ば成功したようなものなのかもしれない。


人民中国インターネット版 2014年4月17日

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