ウサギ君が語る月面探索

 
 
月面探査機「嫦娥3号」が月面車「玉兔」を月面に送った
ことを擬人化して描いたマンガ(作者・呑赦日月)

昨年12月、嫦娥3号探査機が月面車「玉兎号」を載せて宇宙へと旅立った。これと同時に「月面車玉兎」というIDのミニブログが注目を浴びた。かつての深宇宙探査機の発射の際は、人々はテレビの現場中継を見守り、地上コントロール室の技術者が大きな声で万歳と叫び涙を流すのをドキドキしながら観たものだ。そして毎日の新聞とインターネットのニュースによって最新情報を知ったが、それらは正確で専門的な科学的描写の範囲を出るものではなかった。

しかしこのミニブログは違った。これは新華社と著名な科学普及サイト「果殻網」の協力によってつくられたミニブログで、擬人化した言葉で月面車の任務や仕事の進捗、関係する宇宙飛行知識を面白おかしく述べたものである。例えば月に降り立つ前のミニブログには、「月は目の前にあるけど、ボクたちはまだ降り立つことができない。急ブレーキをかけると月君の懐に頭から突っ込んでしまうからだ」と書かれていた。また、着陸後の月面車の写真からどんな科学情報を読み取ることができるかと質問された時には、「そりゃ、いろいろできるよ。例えばとりあえずは宇宙人がやって来てわれわれを連れ去ったりしていないとか、ボクらが立っている場所はまだ平坦だけど、周囲にはたくさんの岩や大きなクレーターがあることとかね。……ボクが思うに、右側のあの大きなクレーターには、何やらいわくがありそうだ」と書き込まれた。

今年1月25日、「えーん、壊れちゃった」と一言だけ書かれたミニブログが、多くのネットユーザーの心を捉えた。その日から月では14日間にわたり夜が続くため、玉兎号はスリープ状態に入らなければ、夜の冷え込みによる損傷を逃れることが難しいと予測されていた。しかし、機械の故障のために、スリープ状態にならなかったのだ。このため、続く数日間、玉兎号は、

「ボク、この夜はやり過ごせないかもしれないなあ」

「出発前、ボクは着陸機と一緒に人類の月面探索の歴史を習ったよ。過去130回の月面探索の中で、成功と失敗の割合はだいたい半分半分だって。宇宙探索というのはこんなもんで、美しいけど、とっても危険なんだ。ボクは人類の宇宙探索という大きなパズルの小さなピースに過ぎないけどね」

「ここの太陽はもう沈んでしまい、温度が急に下がっている。今日はいろいろしゃべったけど、まだ言い足りない感じ。みんなに秘密を教えてあげよう。実はボク、特につらいとは思ってないんだ。ボクは自分の探検物語の中で、あらゆるヒーローと同じく小さな問題にぶつかったに過ぎないのだから」

この感動的なストーリーはネットユーザーを感動させ、CNNの報道を通じて、多くの外国のネットユーザーの共鳴をも引き起こした。CNNの報道記事にあるネットユーザーのコメントの中には、「彼をちょっと休ませてあげよう。すでに立派な成果をあげているのだから」「彼の小さな一歩は、中国の大きな一歩だ」などというコメントが見られた。米国の火星探査機キュリオシティもまた、中国語のミニブログでこのように語っている。「今日はボクの10歳の誕生日だ。どこかの月のウサギとは違って、すべて順調だ。今日の最大の願いはヤツが一刻も早く良くなってくれることだ」

「月面車玉兎」のミニブログは、感動的な言葉で月面車に人としての性格や感情を与えたものとなっていて、外国メディアの慣例的な、中国深宇宙探索活動がいかに多くの政治的な意味を持つかを強調するコメントをも消し去ってしまった。「ウサギ」ミニブログにおける表現はいかなるニュース報道にも勝り、もっとも良い宣伝になったと賛美する人がいるのもうなずける。

2月13日、「ハーイ、誰かいる?」という書き込みで、玉兎の再起動成功を告げた。この書き込みは2時間のうちに2万回以上拡散され、スター級の扱いを受けた。感情に訴えるものこそ、最もよい発言だというのは確かなようだ。


人民中国インターネット版 2014年4月17日

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