中日は離れられない関係

 

沈暁寧=聞き手

中日関係は複雑で厳しい情況が続き、予断を許さない。そうした中でも民間交流は着実に歩みを続けているが、長年、中日民間交流に関わって来られた倪健・中国国際交流協会秘書長にこれまでの経験を踏まえて、両国関係打開の智恵を披歴していただいた。

――中日民間交流の現状をどのように見ていますか。さらに強化すべきなのはどの点でしょうか。

 倪健氏 中日両国関係が良好な時には、民間交流の価値は注目されないものですが、逆に、中日関係に曲折がある時には、その役割は脚光を浴び、積極的な効果を上げるものだと、ずっと考えてきました。

 現在の中日民間交流における最大の問題は、交流が不十分で、チャンネルも深まっていないため、相互間に誤解や疑問が生じ、結局双方は感情的に対立してしまっていると私は考えています。両国は同じく東方の国同士で、ともに儒家思想の影響を受けており、価値観は比較的に近く、両国民の間でスムーズに意思疎通ができれば、関連する問題について容易に理解し合い、コンセンサスが得られると思います。

 現在、中日民間交流で着眼すべき点はまずチャンネルです。毎年大変多くの中国人が日本観光に出掛けていますが、戻って話すのは、日本は環境が良く、社会には秩序があり、商品が豊富、景色は素晴らしいという話題です。日本の民衆が問題をどのように捉え、どのように処理するか、彼らの思考のロジックはどのようなものか、などについて理解して帰国する人はかなり少ないと思います。一方、対中投資に関わっている日本人は長期間中国で暮らしているはずですが、中国民衆とあまり深い付き合いをしない人が多いようです。そこで、私は中日両国の民衆同士がもっと友だち付き合いを深め、もっと緊密な交流に努めることが大切だと思います。

――中日両国の人々が互いに先方の正確な知識を持ち、理解し合うためにはどうすればよいでしょうか。

 倪 私は何度も中国青年訪問団を率いて、日本に行き、普通の家庭にホームステイしました。その時、私は両国の青年が気安く交流し、個人的な理想、流行のファッション、文化現象から社会観、人生観について共鳴し、あるいは論争になっても、彼らは瞬く間に友だちになることを発見しました。こうした考え方の側面での交流は中日民間交流の成功例だと思います。両国民衆間の相互理解、心の交流に役立つと思います。

――民間交流は現在の困難な状況を打開する役割を果たせないと言う人もいますが……?

 倪 国の交わりは民衆の親しさにあると言いますが、中日両国民の好悪感情が両国関係の良し悪しの基礎です。現在の中日関係は四つの政治文書は国交正常化以降の4段階の中日関係をそれぞれ代表しています。例えば、1972年の『共同声明』は戦争終結と平和志向を表明しました。78年の『平和友好条約』は和平から友好を目指し、98年の『共同宣言』は友好から協力に向かう決意を示しました。08年の『戦略的互恵関係に関する共同声明』は中日両国が協力からウインウインに向かってまい進することを宣言しました。

 四つの政治文書が掲げているのは、単に両国政府の共通認識だけではなく、広範な民意の基礎がなければならないということです。そこで、中日両国の民衆がますます親密に交流、協力することによって、中日関係をさらに一歩前進させることができる、と言えるのです。これが民間交流の力なのです。

 現在、歴史問題と領土問題によって、中日関係は国交正常化以来、最も低いレベルに置かれています。今のところ、中日両政府のハイレベル交流は基本的に停止し、政府関係の大規模な文化、経済・貿易交流が延期されている状況下で、民間交流の役割と価値を継承、発展させ、中日関係を正常な軌道に乗せ、双方の国民の相互理解、信任、好感情を増進しなければなりません。ですから、中日民間交流が重要で独特の役割を果たす時期がすでに到来したと考えているのです。

――中日両国は世界的な大国で、近い隣国同士ですが、互いにどのように付き合うべきでしょうか。民間交流はその過程でどのような役割を果たしますか。

 倪 中日関係でしばしば「一衣帯水」「世代友好」という二つの言葉が使われます。この二つの言葉が中日関係で最初に用いられたのは偶然ではなく、中日両国の前の世代のリーダーたちの中日間の数千年にわたる交流の総括と未来に対する期待が込められています。ここからも、中日の隣国関係の適切な処理が両国国民にとって有利であることが分かります。

 中日経済は相互補完的だとよく言われますが、日本は中国の市場と資源を必要としていますし、中国は日本の技術と経験が必要です。特に経済のグローバル化の潮流の中では、中日経済は不可分です。日本人の日常生活では中国製品が広範に使われ、多くの中国人家庭で日本車を運転しています。中日は世界第2、第3の経済体として、もし、広い心で互いに包容力を示し、長い目で未来を見据えれば、こうした中日の力強い連携による協力とウインウインの関係は試練と競争において、大きな成果を上げるでしょう。

 現在、中日両国は冷静に、理性的に互いに向き合い、善隣友好の姿勢で接すれば、多くの食い違いや係争問題はたちどころに解決します。何かにつけ、先方をライバル視し、ましてや敵視してはなりません。民間交流は直接、政府の外交政策を決定できませんが、「民間が政府を促す」という環境を作り、事態を転換させることはできます。

――力を注いでこられた中日民間交流で記憶に残っていることは……?

 倪 今年5月19日から22日まで、中国国際交流協会は日本青年会議所の皆さんをお招きしました。当初の計画では先に中国の情況をお話しようと思っていましたが、思いの外、彼らが中国のことを理解しておられ、直ちに中国側との商業・貿易協力の話し合いを望みました。その後、中国側の専門家と懇談し、歴史問題、領土問題などについて率直な意見交換を行いましたが、大変いいムードでした。こうしたことからも、中日関係は困難な状況下にありますが、両国の民間には交流の基礎、協力に対する願望が欠けておらず、両国の有識人士は自らの発展が先方から離れてはあり得ないことをよく知っています。このことが深く心に刻まれています。

 

倪健(Ni Jian)

1962年10月、上海生まれ。1984年、北京第2外国語学院日本語科卒業。1986~87年、創価大学で研修。中華青年連合会主席助理、中国共青団中央国際連絡部長を歴任。現在、中国国際交流協会秘書長

 

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