新しい「万里の長城」の煉瓦になりましょう

楊本明(上海理工大学)

 

切っても切り離せない絆、好きと憎いが交じり合う感情、近くにあって遠い隣人、中日関係ほど複雑な国際関係はありません。近年、相手国の国民に対する憎悪感が増えているように見えるが、実際に日本へ行って、日本に好意を抱くようになった人は多いです。そして、直に中国へ来て、中国に好感を持つようになった日本人も少なくありません。私自身もその中の一人です。

これは初めて日本へ行った時のことです。

北海道に着いたその夜、初めて温泉に行きました。あまりの興奮でさっさと服を脱いで、湯船に入りました。水遊びしながら、背中をタオルでごしごし擦り始めました。「さすがに温泉の国だな、外の雪景色が見えるし、気持ちが最高だな。」とクラスメートに言いました。そばで黙っている先生にこう言いました。「先生、よかったら背中を擦ってあげましょう。」「あっ、いいです」と先生はとても困った顔をして遠慮しました。私は「え、先生は水くさいな、中国人なら、小さい頃から、友達と一緒に銭湯に行く時、いつもお互いに背中を擦るのに」と思いました。

その日の歓迎会で温泉で大きな恥をかいたことが分かりました。本場の温泉とは共同の場所です。お互いに気持ちよく入浴できるようエチケットを守らなければなりません。入浴前には、ちゃんと体をお湯で流してきれいにしてから入るのはマナーだと教わりました。そして、日本人はどんなに親しい間柄であっても、お互いに一定の距離を保ちます。背中をお互いに擦るなんてとても考えられません。

また、 これは日本人の先生から聞いた話なのです。先生が中国に来て始めてトイレに行った時のことです。トイレに入って用を足そうとした時、「ドアがない」ことに気づきました。とても恥しくてできませんでした。トイレにようやく一人になって、今度こそと思ったら、突然、入ってきた二人が先生をじろじろ見つめました。中国語で何かこそこそ話していました。では、皆さん、どうしてだか分かりますか。今度、また向きを間違えました。中国のトイレには「ドアがない」「しきりがない」のが多いのです。そして、中国のトイレは入った後、向きを変えますが和式の場合は向きを変えません。つまり用をたすときの方向が逆だということです。

以上二つの失敗談は個人レベルの話ですが国と国の関係においても同じではないでしょうか。 私たちはよく口にする中日友好とは何でしょうか。それは一人一人の国民の交流の積み重ねだと思われます。温泉に入ることとトイレに行くこと、この二つのことは誰もがします。しかし、この小さなことに両国の間にこんな大きな違いがあります。まして国と国のレベルにいたってはその違いが更に大きくなるでしょう。万里の長城は5000キロにわたる素晴らしい奇跡です。だが、一つ一つの煉瓦を除いては万里の長城にはなれません。中日関係の行方というのは大きいテーマです。しかし、日本語を勉強している私たち、そして中国語を勉強している日本人は正にその中日友好の一つ一つの煉瓦です。この一つ一つの煉瓦を大切にして、新しい中日友好の長城を作るべきではないでしょうか。

 
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