中日関係の行方 —民間交流の思い出・南京の街かどで―

王斐(東南大学)

 

  中国に「四海兄弟」という言葉がある。「世界の人々が兄弟のように仲良くしよう」を意味する。

  今年1月23日、埼玉県飯能市の竹寺で日本漢字文化センターが行った「今年の四字熟語」大会で『論語』の言葉「四海兄弟」が選ばれた。私はこれを聞いて、中国人にせよ、日本人にせよ、「四海」での「兄弟」を望んでいることを知った。

  確かに今、釣魚島の問題などで、中日関係は深刻化している。しかし、国家は国民の意志を尊重しなければならない。中国に「小さな花火も広野を焼き尽くす」という言葉もある。人の心を軽視してはならないという意味だ。

  私の身近な体験を思い出すとき、多くの中日両国の国民は友好を望んでいることがよく分かる。

 

一、菜菜さんとのお付き合い

  ある日、中国の交流サイト「人人网」であるメッセージを見つけた。「私は菜菜。日本人の女の子です。山西省太原市の男性と結婚するため、中国に来ました。QQでチャットルームを作ってみたい。日本語が話せる太原人とパソコンで交流したいのです」。

  「QQ」とは、MSNとよく似たチャットソフトで、中国の若者に最も人気がある。太原人の私は、早速このチャットに参加した。彼女は温かく歓迎してくれた。私たちは時間があれば、日々のいろいろな話題を話し合った。ある日彼女は「smileちゃん、この女性用のワンピース、わたしの旦那に似合うかしら?」と冗談まじりに、可愛いワンピースの写真を送ってきた。その時「日本人の女の子って、何と可愛いのだろう!」と思い、一層親近感を抱いた。 8人だったそのルームは、今では27人に増えている。このルームに参加している両国の友人が今後も少しずつでよいから、増えていくことを期待している。

 

二、日本に住む中国人二胡演奏家

  中国人の著名な二胡演奏家張濱先生は20年間も名古屋に住んでいる。今年5月29日夜、南京を訪問された張濱先生は、東南大学で二胡の演奏会を開催された。すばらしい演奏会の後、私は張濱先生と一緒に記念写真を撮らせていただいた。その写真は今でもバソコンに大切に保管されている。 張濱先生は愛知や名古屋など日本国内ばかりでなく、2010年上海万博の日本館でも、日本人の古典楽器演奏家と演奏したことがあり、中国と日本の古典楽器が繋ぐ中日友好の大きな架け橋を務めている。

 

三、紫金草合唱団の歌

  今でも両目を閉じると、遠くから歌声が聞こえてくる。暖かい舞台がまぶたに浮かぶ。お年寄りの可愛い姿が思い出される――。

  それは今年4月14日、爽やかな午後のことだった。揚子江河畔の南京金陵図書館で、日本から訪問した紫金草合唱団が十回目の公演を行った。

 「紫金草」は南京・紫金山にあるかわいい野草で、それに因んで名付けられた日本の合唱団である。2001年に初訪中の際、「紫金草物語」(組曲)で「歴史を忘れず、未来に向かう」を合唱し、これまで南京、北京、上海で併せて10回の公演を行った。日本の東京、大阪、奈良、広島などでも活動している。

  合唱団の多くの人は60歳以上と思われ、みんな元気で温かな人々だった。 公演会後の交流会で、私はあるおじいさんと楽しく語り合った。話の途中で彼は暫く遠くを見つめてちょっと微笑した後、私を見て言った。

 「私たちは、いつも自信と希望を持っています。だから、南京に来て公演するのです。これからの中日両国の友好のために、あなたたちのような若者に期待していますよ!」

 「そうだ。私たちが頑張らなければ!」とそのとき思ったが、はっきりと答えることはできなかった。

  彼と写真を撮った後、記念の千羽鶴と綺麗な紙袋をいただいた。今その写真を見ると、私はピースのサインを出している。それは中日両国の輝く未来を象徴しているようだ。

  四月の穏やかな歌声は、私の心に友好を語りかけてくれた。私は胸にしっかり畳んで決して忘れない、その歌声を。

    

結:「人は信じて、そして生きるもの」

以上の思い出は、南京の街かどで出会った民間交流に過ぎない。しかし、両国国民の友好の心がそこから見えてくる。今の時代は、一国の力だけではなく、世界の国々お互いの協力が必要だ。協力すればもっと強くなるが、争えば二人とも傷つく。両国政府はお互いの理解を深めて尊敬し合い、歴史を尊重し、過去ばかりではなく、未来に視点をおいて欲しいと願っている。

普通の大学生の私は、あまり政治に役立つことはできない。だが、日本人と付き合う時、中国人らしい優しい心と姿を伝えるよう、これからも日本語を学び続けたい。

「人は信じて、そして生きるもの」(日本の“三国志”『風姿花伝:谷村新司の歌』のせりふ)を心に留めて生きたい。両国国民もこのせりふを信ずることができるはずである。

 
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