「アジアの将来に向けて」中日関係は平和をテーマに

 

--言論NPO代表工藤泰志への独占インタビュー

中国外文局と日本の言論NPOが実施した、第11回北京−東京フォーラム「中日関係世論調査」の結果が10月22日に北京市で発表された。調査結果を見ると、両国の回答者の好感度は昨年と同様低く、領土や歴史などの敏感な問題で食い違いがある。しかし両国関係に対する全体的な観点には大きな変化があった。両国ともに、平和と協力の発展理念を持つ人は大半を占め、両国の平和的交流と共同発展を求める声が主流で、両国関係の安定した改善の民意の基礎となっている。発表会の後、日本法人言論NPO代表の工藤泰志氏はチャイナネット記者の独占インタビューに応じた。以下はインタビューの内容。

チャイナネット:本年度の世論調査で、アンケートの質問項目設定やカバレッジ面で、これまでに比べてハイライトとなる点、これまでと異なる点はどこにあるとお考えでしょうか?

工藤:基本的にこの世論調査は経年変化を分析するためであるため、あまり質問を変更しないほうがいいです。基本的な質問に関しては変更しませんでしたが、やはりその時点に合わせて新しい視点を入れなければなりません。私たちが提案して実現したのは、「アジアの未来」です。お互いが将来を持ち、お互いの夢を理解し合い、そして協力し合うことはできないだろうか、つまり未来というものを真剣に考えていかないといけない局面に来ているのではないかと考えています。過去も大事にしながら、そろそろ未来を議論するタイミングが来ていると思います。そういうことを踏まえていろいろな質問を作りました。

私が特に重視した質問は、東アジアの将来にとって目指すべき理念や価値観は何かとういうことです。例えば自由、民主、法治などいろいろな項目を入れ、中国の国民だったらどれを選びたいのかを聞きたいと思いました。結果を見ると、両国の回答者が一番期待していることは平和です。「東京-北京フォーラム」を始めてから十年間が経ちますが、私自身が一番やりたいことは、東アジアの平和を守ることです。何かあったら戦争になって危ないなど、そういう状況を変えたいです。その意味で、その質問で日本側の回答者の7割、中国側の6割の回答者が平和だと答えたのは非常によかったと思いました。

チャイナネット:これまでの調査結果と比べ、今年の調査結果では中日関係には新たな動向が出現しているか、一番印象深い点は何なのでしょうか?

工藤: 新しく大きく、将来にとって期待が持てるような大きな変化が確実にあったとはまだ思っていません。変化は始まったばかりです。両国の国民が相手に対してあまりにも嫌なイメージを持っていたのは、いわゆるそれを改善しようという傾向が出てきたためです。相手に対する印象は好転し始めています。だからその変化を大事にすることが重要だと思います。その好転の傾向をもっと加速するために、これから本当の意味で会話と交流に努めなければいけないですし、お互いにもっと協力し合い、世界第二、第三の国ですから、いろんな主題的な課題に取り組んでいくようなサイクルを作るべきです。

政府間の対話と民間的な対話は二輪車みたいで、二つ同時に動くことによって両国が安定した関係を築くことができます。民間交流は前輪でひっぱっていき、政府間関係は後ろからひっぱっている状況だと思います。これまでの十年間の東京-北京フォーラムを通じて、民間レベルの交流の成果を大いに上げましたが、民間外交が大事だと中国の中央政府にも高く評価されました。これからの十年間も、これ以上の成果を成し遂げられるように力を合わせて全力を尽くしたいと思います。

チャイナネット:調査結果は、中日両国のアンケート回答者がいずれも平和と発展は両国の地域協力上で重要であるとの共通の価値観を示しています。同時に、回答者は中日間に軍事衝突が発生するかもしれないとの心配は弱まっています。こうした変化が現れた原因はどこにあるとお考えですか?

工藤:おそらく慣れたのだと思います。一時、尖閣諸島(中国側:釣魚島)の問題で、両国関係は難問に陥っている状況でした。日本と中国の国民が平和を望んでも、尖閣諸島(中国側:釣魚島)周辺で何かあればすぐに戦争になるという懸念が高まり、私たちは非常に心配し、日本と中国の間でいろいろな努力を働きかけ、民間レベルで不戦合意に一致し、世界に発信しました。それには世界が驚きました。

両国の民間の平和を訴えるプロセスの中で、何かあればすぐに戦争になるという懸念もだんだん落ち着いてきています。ただ、答えを出しているわけではありません。確かに両国間に安倍政府の安全保障関連法案や、中国の軍事力の拡大などの問題はお互いの不信を高めてしまうため、政府間から民間レベルまでいろいろなレベルで会話を作らなければいけないと思います。

チャイナネット:両国のアンケート回答者の歴史問題に対する見方の食い違いは、世論調査結果の中でかなり際立っており、この食い違いは昨年に比べても拡大しています。この問題についてはどのように見ておられますか?間もなく開催される「北京-東京フォーラム」の中で、両国から参加される方々はこの食い違いの解決策を求めて討論を展開されますか?

工藤:基本的には、世論調査はお互いの国民に対して行われたのですが、世論調査の中で浮かびあがった課題を次のフォーラムで乗り越えるために、対話を行うのです。やはり対話と世論調査が連動して動くことは北京―東京フォーラムの魅力だと思います。ただその対話は、本音でやらなければいけません。あくまで本音を出さないと、ただ乾杯するだけの表面的に仲がいい関係ではなく、「喧嘩するほど仲がいい関係」を会話で作りたいと思っています。

チャイナネット:工藤先生は、メディアが中日関係の発展の中でどのような役割を演じてきたとお考えでしょうか?工藤先生が長年にわたる経験と観察から、メディアはどうすれば中日民衆の間の相互理解や相互信頼をより良く推し進めることができるか、お考えをお聞かせいただきたいのですが。

工藤:今のメディアは恐らく中日関係においてマイナスな役割を果たしていると思います。メディアというのは国境を越えることができるのかという大きな問いかけがあります。国境を越えてもっと大きな視点から利益を考えることができるかもしれません。実際に今ほとんどのメディアは、自国で議論するために、相手に攻撃的になってしまう場合も多いです。すると何かあった場合、「相手がよくない」という話になります。相手の国に対して、自分の国民にとって非常にマイナスなことをニュースにする傾向があります。

事件ばかりではなく、本当に素敵な話もいっぱいあります。でも、もし悪いことばかりをニュースにすれば、相手に対して悪い感覚になってしまうのではないかと思います。こういう局面を変えるために二つの提言があります。一つは、良いことをニュースにすることです。北京―東京フォーラムみたいなイベントを大いに報道すべきだと思います。

チャイナネット:世論調査は11年にわたって行われてきましたが、調査は両国の回答者の民意を反映し、中日両国民の間の交流面でどのような役割を果たしてきたとお考えですか?今年の「北京-東京フォーラム」の開催に対してどのような期待をお持ちでしょうか?

工藤:日本と中国の関係は、政治家だけのものだということはありません。一般の国民が変わらない限り、両国の本当の意味での信頼関係は高まりません。私たちがやろうとしていることは、多くの国民に自分の問題として考える判断材料を提供することです。

つまり、お互いの国に来て、お互いの課題を真剣に議論して、日中関係のため、アジアの将来のために議論するのです。多くの国民がこの議論を知ることによって、自分で考えることになるのではないでしょうか。それによって、健全とした世論が建設されていき、本当に強い両国関係ができるようになるのではないかと思います。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年10月24日

 

 

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