「近くて遠い国」

趙千慧(鄭州大学外語学院) 

 

 光陰矢のごとし、大学に入ってすでに三年が経ち、同時に日本語学習歴も三年目に入った。しかし、私はもともと日本語に興味があったわけではなく、むしろ日本語どころか、日本という国を毛嫌いし、日本人に対しても好感を持ったことは一度もなかった。そして、それは私だけではなく、私の家族全員がそうだった。

「日本語を専攻にするくらいなら、大学になんて入らないほうがいい!」

これは私の専攻を知った時の、母の言葉である。一時、私もそうしようかと思ったものだ。

だが、日本語を学んでいるうちに私の中で何かが確実に変わってきた。大学に入ってからの勉強は楽しいことばかりではなく、つらいこともあったが、一つわかったことは、以前の私は本当の日本を何も知らず、知らないことに気が付かないままに誤解をしていたということだ。

しかし、なんの理由もなく日本に対して偏見を抱いていたというわけではない。子供の頃から、テレビドラマに夢中になっていた私はよくドラマの中の「鬼子」がそのまま日本人の姿だと思い込んでいたのだ。私と同じ経験をした人はこの中国に数えきれないほどいるだろう。

ある調査によると、中国では、7割の国民が日本に好意を寄せていないという。同時に日本でも9割の人が中国のことをよく思っていないそうだ。原因は、以前の私のように相手のことをよく知らず、植え付けられたイメージのままに嫌っているところにあるのではないか。そして、そのイメージを植え付けている張本人がメディアである。

メディアの役割とは、中立な立場から事実を伝えることであり、その情報から、国民一人ひとりが自分なりの考えを持てばいい。ニュースの中で情報操作をしたり、悪因あるコメントを付け加えたりすることはニュースから客観性を失わせ、報道されているものの中から真実性がなくなっていく。残念なことに、両国ではこういう偏った報道が少なくない。メディアがメディア本来の報道姿勢を持つこと、これが中日関係改善のために是非必要なことだ。

そして何よりも大事なことは、メディアから離れた民間交流をもっと盛んに行うということである。

だが、その民間交流も中日関係の改善の足を引っ張っているという状況もある。近年、日本に旅行する観光客が大幅に増加しつつある。そのことは喜ばしいことなのだが、一方で、ポイ捨て、割り込み、汚い言葉遣いなど中国人旅行者の無作法な振舞いが目立ち、そのことに眉を顰める日本人も多いと聞く。日本は礼儀作法に厳しい国だ。日本に限らず、外国に行くなら、その前に相手国の文化や習慣は多少なりとも学んでおくべきだ。

今年はちょうど中国人民抗日戦争並びに世界反ファシズム戦争勝利70周年にあたる。戦争という悲しい歴史は両国の間では避けて通ることはできないが、それ以上に両国には長い交流の歴史がある。

反日感情が根強い中国だが、日本製品の優秀さは中国人の誰でも知っている。日本のアニメは中国でも人気が高く、アニメをきっかけに日本に興味を持つ若者も多い。そして、今や中国国内の多くの大学には日本語学部があり、そこでたくさんの学生が日本語を学んでいる。それらをきっかけにすればいろいろなテーマでの民間交流ができるはずだ。そして、草の根の交流を通じて、お互いの国の国民が相手をもっとよく知ることができれば、中日関係もますますよくなると思う。一人の力は弱くても、それが集まればきっと中日関係の改善に嵐を巻き起こすだろう。私はその民間交流の力を信じている。

 

人民中国インターネット版 2015年12月

 
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