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心の隣人、私の友誼

 

 藤崎 貴行 

私にとっての隣人はハルビンという街の方々に他ならない。

私が初めて中国の地を訪れたのは大学2年生の夏の暑い日のことだった。大学の留学プログラムを利用し4か月間の日程で北京を訪れた私たち8名はそれぞれが初めての中国ということもあり非常に興奮したことを覚えている。折しも当時は2008年の北京オリンピックで中国全土が沸いていた時であった。王府井や天安門広場にはたくさんの観光客が詰めかけていて人々の熱気を肌で感じる事が出来た。

それから半年が経ち、就活を始める前の私は中国へ二度目の留学に行く決心を固めた。以前は同じ学部の同級生と一緒のお祭りのような留学生活だったが、今回は一人きりの挑戦であった。しかし不安は不思議と全くなかった。少なくとも初めて北京に訪れた時に感じた戸惑いのようなものは今回感じる事はなかった。それには少なからずこれが二度目の中国であるからということもあっただろうが、最も大きな理由はこれが私の住む新潟の姉妹都市であるハルビンという街だからというのがあげられるだろう。冬になれば新潟のように雪が降り、郊外に出ると自然が大きく広がっている。しかしふと街中を見渡すとそこかしこに東洋の雰囲気を感じる事の出来る、そんな不思議な街がハルビンである。

私はこのハルビンでの留学で3人の忘れられない友人と出会った。一人は一番最初のルームメイトになったヤクーツク人である。彼は私が留学に来る何年も前から中国で勉強をしており、来たばかりの私を何度となく助けてくれた。『ハルビンは何も無いから、勉強しないといけない俺には最高の場所なんだよ』浅黒い肌で快活に笑う彼は幾度となくそう私に話した。彼とは1か月間かけて鉄道で東北ハルビンから中国最南端の海南島まで放浪旅行をした。

もう一人は最初のクラスメイトで隣の席だったベラルーシュ人である。彼は留学生寮のロビーで夜の11時近くまでビールを飲んでいるような破天荒な人物だったが、非常に思いやりがありクラスのムードメーカーであった。私が彼と拙い中国語で会話をする様は初級クラスの老師の笑いを誘ったものだった。

最後の一人が私の留学生活をほぼ一緒に過ごしてくれた朝鮮族の少年である。彼は日本語学科の学生であり、大半の朝鮮族がそうであるとおり、非常に優秀な人物であった。中国で開催された日本語のスピーチコンテストで優勝した実力があり、私が日本に戻った後も、彼は日本を訪れる時はよく私に会いに来てくれる。孔子の言葉で「有朋自遠方来」というものがあるが、住む場所が離れていても忘れない友人がいるということは非常に嬉しいことだ。

学生時代の留学期間は併せて一年半余りだろうか。卒業を控えた4年生の夏には『漢語橋』という中国語コンテストの湖南省での決勝観覧にも招待して頂いた。その時には中国語を学ぶ学生が欧米や東南アジアといった世界中から集まり、交流する機会を得た。日本と中国という視点でしか考えることばかりだったが、それからは世界と中国という視点に気づき更に意識が高まった。

時が経ち、大学を卒業した今、私は中国系航空会社で働いている。学生時代に中国の各地を旅行した経験は今でも中国を訪れる知識として役に立っている。昨今の訪日観光ブームにより日本を訪れる中国人の数は急増し街中で中国語を聞くことも多い。仕事柄、中国人と触れ合う機会は多いが、皆一様に日本を褒めることを一つ二つ話してくれる。今はQQや微信といったツールで簡単に中国とコミュニケーションが取れるし、中国のニュースや映像もインターネットで簡単に見る事が出来る。これまで中国と関わりを持つことのなかった日本人にとっても日中が繋がりやすい時代になってきている。私も一人の隣人として今後も友情からの日中友好が続いていくよう努力をしていきたい。

 

人民中国インターネット版 2016年2月

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