中日両国首脳が会談、関係改善の意向にじむ

 

9月4日から5日にかけて、G20サミットが中国・杭州で開催された。5日夜、習近平中国国家主席は日本の安倍晋三首相と会談した。昨年4月のアジア・アフリカ首脳会議での会談以来、1年5カ月ぶりの会談となった。

報道によると、習近平主席と安倍晋三首相は東中国海、南中国海、海空連絡メカニズムなどの問題について意見を交換した。習主席は日本に「中日双方は4つの原則的共通認識の精神に則って、対話と協議を通じて意思疎通を強化し、東中国海問題を適切に処理し、東中国海の平和を共に守っていくべきだ」と促した。安倍首相も、「戦略的互恵関係の見地から、困難な課題をしっかりと管理し、両国関係の大局的観点から、協力と交流を推進し、安定した友好的な協力関係を構築する」との意向を示した。両国関係で最も敏感な釣魚島問題について、双方は「海上連絡メカニズム」を共同構築することで共通認識に達した。

G20サミット開催前、米国を始めとする一部の国が会議で南中国海問題に関する議論をしかけ、中国を抑制するとの情報が伝わっていた。しかし、日本政府は南中国海問題を持ち出さなかった。明らかに、今回の会議で安倍首相はこれまでより低姿勢で、中国と2国間関係を積極的に推進したいとの意向がにじみ出ていた。

これについて日本の外務省関係者は、「経済問題が会議の主要議題であるため、南中国海問題に言及しないことにした」としている。実際、経済要因は確かに安倍政権を積極的な対中関係改善へと向かわせた重要な原因の1つだ。政権発足以来、安倍首相は「アベノミクス」、「3本の矢」、「新3本の矢」など経済発展計画を相前後して打ち出したが、結果はあまり理想的ではなかった。現在でも、日本の経済振興は依然として主に観光サービス業に頼っている。このところは為替相場が円高になり、日本全国の観光客受け入れ量は大幅に減少しており、安倍政権の経済振興策は再び厳しい試練にさらされている。そのため、今回のサミットで、安倍政権は中国といっそう経済協力を展開することで、日本経済が現在の苦境を脱出するよう導こうとしたのだ。

経済要因のほか、政治要因も軽視できない。先月24日、朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルの発射に成功し、日本全国に極めて大きな衝撃を与えた。日本の軍事評論家の岡部いさく氏は、「潜水艦のミサイルとなると、より広い範囲を警戒しなければならない……今、東中国海や南中国海で緊張が続いている中、更に北朝鮮の潜水艦まで警戒しなければならないのは、日米ともに負担がより大きくなる」と指摘する。また、日本メディアの報道によると、米国の朝鮮研究機関は「朝鮮は2020年までに日本を射程に入れた実戦配備を整える」との分析結果を発表し、「機動性のある潜水艦発射弾道ミサイルが配備されれば、米国軍などによるミサイル防衛システムにとって大きな課題になる」と指摘した。このことから、朝鮮の今回の潜水艦発射弾道ミサイル発射実験は、確かに日本に対する実質的な威嚇になったことが見て取れる。朝鮮のミサイル研究開発面の進歩は日本の東アジア地域における覇権的地位に挑戦をつきつけている。

そのため、朝鮮のミサイル発射実験当日、中日韓外相会議で、日本の岸田文雄外相は中国に対しさらに朝鮮ミサイル実験の進展を抑制するよう求めた。今回のG20サミットで、安倍首相もこの要求を再度提起した。明らかに、安倍政権は中国の力を借りて朝鮮により多くの圧力をかけ、朝鮮に日米など西側諸国の要求に従うよう迫ることを望んでいるのだ。

以上をまとめると、G20会議で日本が中国に好意を示したことには、経済・政治両面の要因に基づくものであった。中国との関係を改善することで、1つには中国の国内市場を利用して日本経済を後押しし、もう1つは中国を利用して朝鮮に圧力をかけ、朝鮮のミサイル開発プロセスを抑制する狙いがあったと考えられる。

安倍政権にとって、現在国内政治面の主要政策目標は、憲法改正を推し進め、日本を「正常な国」にすることだ。改憲を進めるには、ある程度混乱した局面を作り出し、北東アジア地域の緊張状態を維持する必要がある。そうすれば、それを改憲の「合法的」理由にして、国内体制の調整を加速することができる。そのため、これより前に朝鮮が行った核実験、ミサイル発射実験を日本は大いに煽りたて、それを集団的自衛権の行使を容認し、迎撃ミサイルシステム「THAAD」導入を議論する口実にしようとしている。しかし、もう1つの面から見てみると、朝鮮が本当に核兵器やミサイルを保有した場合、日本に対する本当の意味での威嚇になることは必至だ。特に今回の朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル発射実験は、日米ミサイル防衛体制をある程度崩し、日本の本土を直接攻撃することが可能だ。従って、安倍政権に極めて大きな衝撃を与え、不安をもたらした。

現在、米国では大統領選挙が目前に迫り、ポピュリズム的風潮が高まり、国内の政情が不安定である。共和党大統領候補のトランプ氏は、在日米軍を撤退させると日本を脅したこともある。トランプ氏が当選すれば、米国が「孤立主義」に回帰する可能性が極めて高い。米国の勢力は北東アジアから去り、北東アジア地域が力の真空状態に陥り、北東アジア情勢により多くの未知数の事態が生じ、日本にとって極めて不利となる。従って、この大事な時機に、安倍政権が中国政府との関係改善を求め、それによってより多くの外交面の主導権を手にしようとしたことは、日本政府の現在の焦りと自信のなさをある程度反映している。もちろん、会談自体は穏やかな雰囲気を作る意思疎通の形式である。どんな内容について話したにしろ、会わないより会ったほうがいいことは確かだ。

 

「北京週報日本語版」2016年9月7日

 

 
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