「南海」 歴史、国際法尊重を

 

総領事館の管轄区域に明記

1939年に入ると、日本は西沙諸島の直接的な侵略・占拠を開始する前だが、当時の有田外相は海口に総領事館を開設する文書の中で、海口総領事館の管轄区域とその地理的位置、交通システム、将来的な政治工作の展開を考慮した上で、広東省の海南島、西沙諸島、潿洲、蛇洋島を管轄区域に入れるのが妥当だとして、海口総領事館の開設に同意している。

日本政府が当時西沙、南沙諸島が中国に所属していることを承認したのは決して「善意」からではなく、南沙諸島を直接侵略・占拠するために出兵する方法がない状況下で、歴史的事実は否定しようがなく、中国の主権を承認し、フランスの「先占権」を否定する外交的な立場をとっていたからだ。その後、中国との戦争の延長として、西沙、南沙諸島に出兵し、占領した。日本は南海諸島を占領後、「新南群島」と命名し、占領下の台湾の管轄に帰属させた。日本敗戦後、中国に返還された。

第2次大戦後、日本は長期にわたって西沙、南沙諸島は中国に所属するという立場を承認してきた。今年7月13日に中国政府が発表した白書は次のように紹介している。1952年、当時の岡崎勝男外相が直筆で署名し推薦している「標準世界地図集」第15集「東南アジア」には、サンフランシスコ平和条約の規定によって日本が放棄しなければならない西沙、南沙諸島および東沙、中沙諸島のすべてが中国領としてプロットされている。

「日華条約」失効により移転

筆者は52年4月に日本と台湾が締結した「日華条約」をさらに重視している。その第2条は台湾、澎湖諸島並びに南沙、西沙諸島に対するすべての権利、権原と請求権を放棄することを明確に示している。当時、日本は台湾の中国代表権を承認しており、この条文は中国との条約において南沙、西沙諸島を中国に返還したことを承認している。72年9月、中日国交正常化にともなって、当時の大平正芳外相はその結果「日華条約」は失効し、その権利は中華人民共和国に移転する、と宣言した。

筆者は戦後日本の学界、出版界が「9段線」を承認した資料も探し出した。例えば、小学館87年版『日本大百科全書』第15巻には、「中国」の項目の付録の地図に、中国南海の9段線が明示されている。

50年代中期以降、毎年発行されている『中国年鑑』(一時期は『新中国年鑑』)には、日本の代表的な中国学者が編さんした中国の項目に、90年代中期まで一貫して、毎回中国領土は「南は曾母暗沙に至る」と詳細に説明し、何度も9段線の描かれた地図を掲載してきた。

『中国年鑑』に9段線の地図

88年、中国は海南省設置を発表したが、89年版『中国年鑑』は扉ページ全体に9段線を含む海南省の管轄範囲の地図を掲載した。

「禁反言」(注)の原則は現代の国際ルールが実際上、つまり歴史上、数え切れない外交交渉の結果、声明、公約等の基礎の上に形成されている。歴史的な蓄積がなければ、今日はない。今日、南海問題を討論する際には、これまでの歴史沿革に立脚しなければならない。

国際法上、「禁反言の原則」はすでに公約し、承認した事柄に反する主張はできない、ということを意味している。33年の東グリーンランド問題の国際訴訟で、禁反言の原則が初めて領土主権帰属問題の解決に適用された。今日に至るまで、これは国際法の普遍的な原則になっている。この原則によって国家の行為を制限し、国家行為の前後の一貫性を担保し、国際秩序が維持擁護されている。

別な意図?中国は懐疑的に

中国が現在、日本の南海に対する外交的な所作を見る際に、必然的に日本と南海の関係史を見なければならない。日本政府はすでに中国の領土であることを承認したはずだが、なぜ中国が自国領土で行っていることに対して、四の五の言うのか?もし日本が食言してこれまでの姿勢を覆し、70余年前のように南海問題介入に力を入れるつもりなら、中国人民は日本が公正な心からではなく、また国際法に基づかず、別な意図があるのではないかと懐疑的にならざるを得ない。中日関係にはすでに問題が山積しており、慎重に対処すべきであり、筆者はこれ以上「混乱を増やさないでほしい」と願っている。

 

 

(注) 禁反言=過去の行動と矛盾する主張を禁じ、取引の安全を保護する英米法上特有の法理。人が自由意志に基づいて一旦行った自分の行為、または捺印証書などに反する主張をすることを禁止する原則。エストッぺル(estoppel)の原則(広辞苑)

1933年7月21日の『読売新聞』に掲載された南沙諸島で中国人が生産活動を行っている証拠となる記事(筆者提供)

1938年7月8日の『読売新聞』に掲載された日本政府が西沙諸島の主権は中国に帰属すると表明したことを伝える記事(筆者提供)

日本で出版された1981年版『新中国年鑑』には中国南海9段線が明確に表示されている(筆者提供)

1989年版『中国年鑑』には中国海南省の管轄範囲に9段線を含めた地図が掲載されている(筆者提供)

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