中国封じ込めの発想はもう通用しない(前編)

横浜国立大学名誉教授 村田忠禧(談)

注目の中国共産党第19回全国代表大会が開幕しました。日本国内では「各国が共に話し合い、共に建設し、共に分かち合い,平等に準拠し、互いの利を追求することを堅持する」という「人類運命共同体」の思想とスローガンをどのように具体化、現実化していくのか、また、「大国外交」における中国の日本との位置づけの2点に注目が集まっています。

2014年10月8日、習近平総書記は党の大衆路線教育実践活動で初めて「全面的な厳しい党内統治を推進する」ことを提起した

習近平氏がこんにちの中国における指導者の核心であることは間違いありません。経験豊富で強固な意志を持つ習近平氏は、中国の発展段階において様々な苦労を重ねつつそれを乗り越え、こんにちの地位に至っているため、普通の指導者とはかなり違い、自分の見解に基づく意見表明をするケースがかなり多いと感じています。ですから私は、習近平氏は中国の最高指導者としてふさわしい内容を持っており、今まで推し進められなかった改革を行う条件を備えていると思っています。

徹底した「党の統治」

同一職位に2期10年という任期を設けていることは、中国にとって非常に重要な意味を持つものと思います。習近平氏は総書記就任以降、5年をかけて、反腐敗運動を非常に徹底して行いました。それを今後も継続するということは、とても重要なことです。私は以前『生死決択(最後の選択)』という、上海映画製作所が2000年につくった映画を見ました。これは腐敗問題を正面から採り上げた作品で、省の党委員会副書記にまで腐敗が及んでいるということが話題になりました。ところが今はそれどころではなく、政治局常務委員までが摘発されるほど、腐敗が深刻化しています。

習近平氏は「トラとハエは一緒に叩く」と、反腐敗運動を指示しました。これは高級官僚の「トラ」のみならず、末端の下級官僚の「ハエ」までを叩くことですが、その狙いの一つは入党当初の精神を思い起こさせ、すべての共産党員は人民に奉仕する、人民の勤務員である、という教育を行っているものと思います。人民に奉仕することが任務だとはっきり定義し、初心を想起させ、共産党員本来の姿に戻るという方向性を打ち出すことで、成功を収めました。そして、この方向性を中国の一般大衆が支持することで、中国共産党員の気風も変わってきたと感じています。このような形で反腐敗運動を徹底的に展開している習近平氏は、やはりすごいと私は思っています。 

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党の組織がそれなりに安定を見せ始めているので、今後は中国式社会主義とは何かということを真剣に考えなければいけないと思います。1921年の建党以来の100年にあたる2021年までに貧困撲滅はかなり成果をあげるでしょうから、もう一つの100年である1949年の新中国成立以来の100年である2049年頃までに現代的社会主義国にするという任務があります。

しかしこれはそう簡単には行かないと思います。国際通貨基金(IMF)が最近発表したデータによると、2016年の中国のGDPは米国の60%、2022年になると78%と急速に追い上げていることがわかります。この調子で行けば2030年代の前半に米国を追い抜くことは十分可能です。しかし1人当たりGDPで見ると2016年で米国の14%、2022年になっても18%とそう簡単には米国に追いつくことはできません。それだけ中国のかかえている問題は多く、大きいということです。

しかもいくら国内総生産(GDP)が増大したとはいえ、国民の資質はまだまだ問題で、現代的な意識を持った人が増えているというわけでは決してないからです。それには教育や学習がきちんと行われなければならないため、達成には時間がかかると思います。(続く)

 

 

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