成都人の生活必需品

 壁のない茶館内で客たちは思い思いの時を過ごしている

人々が最も興味深く語る成都の魅力とはそののんびり快適な暮らし方であり、そのライフスタイルを余すところなく味わえる場所が「茶館」だ。

お茶とは悠久の歴史を持ち、中国人が心から愛する伝統的な飲み物だ。資料によると、中国でお茶を植え、お茶を飲む文化の発祥地は四川だといわれている。『華陽国志』によると、四川のお茶は周の武王の時代にすでに献上品として数えられていた。四川人がお茶を飲む習慣は周の時代までさかのぼることができ、秦が中国を統一してから徐々に他の地域へ広まっていった。 数千年前からお茶は中国人の日常生活の重要な一部であり、その重要性は多くを語る必要がない。俗に「開門七件事」といわれる「柴・米・油・塩・醤・酢・茶」はどれも古代中国の庶民の生活に欠かせない物で、その順番を見ても分かるように「柴」が最も重要だといえる。ところが、中国全土で最もお茶を重要視している土地といえば成都をおいて他にはなく、「四川人は『開門七件事』を逆から読んでいる」とまで冗談を言われるほどだ。成都人にお茶を飲むならどこがいいかと尋ねたら、もちろん茶館だと答えるだろう。

中国の茶館の起源は四川にあるといわれている。清朝末期の成都には500本以上の大通りや路地があり、ほぼどの通りにも茶館がありその数は400店以上だったと資料に記載されている。1935年の成都の『新新新聞』によると成都には茶館が599店あり、1日の来客数は12万人以上に上ったが、当時の市の総人口は60万人もいなかったという。茶館が成都人の生活をいかに占めていたかが十分見て取れる。

今日において中国で茶館が最も多く、最も特色があり、往年の風俗を完璧に残す場所はどこかという話をすれば、必ず成都が挙げられる。成都では繁華街には「茶楼」があり、路地には露店の「茶店」があり、公園には「茶座」があり、大学には「茶園」があるといったようにどんな場所にも茶館がある。特に古い町並みでは10歩も歩かないうちに老舗の茶館を見つけられる。このような茶館は通りに面していることもあれば、路地の古い建物の中にあったり、川辺の日除けの下にあったりする。四角いテーブルを数卓広げて、竹製の椅子を十数脚並べ、そこにかまど、銅製(あるいは鉄製)のやかん、ふた付きの茶器などを用意すれば市民の憩いの場の出来上がりだ。成都人は茶館で朝から晩まで過ごすことができる。

 

 

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