工場跡地を芸術の中心地に

 東郊記憶では工業的な「ハード」な質感と文芸的な「ソフト」な質感両方が楽しめる

 街角で売られている成都の気軽なグルメにハマる人が多数

行き交う観光客でにぎやかな春熙路と寛窄巷子に比べ、東郊記憶は薄化粧をして物静かな隣の家の少女という雰囲気だ。中国が定める4A級観光地でありながらもマイナーな場所で、ここの存在を知らない観光客も少なくない。週末は大きなイベントがなければ観光客の数が少なく、平日はさらに人けがまばらだ。北京の798芸術エリアや広州の紅磚廠のように過度ににぎやかではない場所で、かつ文芸的でノスタルジックな雰囲気の場所が好きな人ならば東郊記憶には絶対に行く価値がある。

成都東部の成華区にある東郊記憶は1950年代に成都の国営企業だった紅光真空管工場が前身で、ここでは中国で初めて白黒ブラウン管が生まれ、「北に首鋼あり、南に紅光あり」(首鋼とは北京の鉄鋼メーカー)という名誉をもらったことがある。時代の変化につれて紅光もかつての輝きが失われ始めたが、工業で名をはせた古い建物が文芸の新潮流で注目され始めた。2009年に成都市は紅光工場エリア跡地を利用して、工業的特徴が色濃く残る一部のエリアを工業文明遺跡として保存し、文化クリエイティブ産業と結び付けて、音楽を主要なテーマにした新しい文化クリエイティブ産業パークを打ち出して、11年9月に正式にオープンした。

いまの東郊記憶の中は、もともと工場にあった高くて広い建物や天を突く煙突がなお悠然と残っていて、多くの建築物も工場そのものの姿をある程度残しており、壁には当時を物語るスローガンがかすかに見える。そして数年前まで工場で使われていた旋盤、鋳型、ボイラーなども道端に放置されている。だが一方では現代劇、ミュージカル、ブランド品の販売イベント、漫画イベント、コスプレイベントなどの多彩で活気にあふれた催し物が代わる代わる開催される。

多次元的な魅力を持つ東郊記憶は成都の人々の憩いの場所と成都の芸術家の卵の待ち合わせ場所になっている。ここでは歴史的な雰囲気が漂う工業遺跡の魅力を感じ、過去の歳月を回想しながら最先端の現代的な生活も体験できる。

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