時間と国境を超越するバブル経済前史

2020-10-21 15:21:12

劉檸=文

 

『日本経済奇跡的終結』

『日本経済の奇跡は終わった』

都留重人

李雯雯 訳 于傑 翻訳校閲

四川人民出版社  2020年7月第1版

「中国の台頭」以前は、「日本の奇跡」が不滅の神話とされていたが、バブル経済が全てを変えてしまった。しかし、日本の勢いが中国によって覆い隠されてはいても、その存在感はいまだにあって、国際社会に価値と影響を絶えず与えていることに人々はすぐに気付いた。バブルの平成は過ぎ去り、中日の大国の地位が入れ替わって10年がたっても、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』『ジャパン・アズ・ナンバーワン――それからどうなった』などのベストセラー本が再度中国に入り、メディアや主流社会の話題となっていることも、この事実を説明している。実際、日本の存在感は完全に経済に依存しているわけではなく、日本経済もまた完全に「成功」に依存しているわけではない。これこそ、いわゆる「奇跡」の背後にある秘密だといえよう。

日本経済の戦後の劇的な再生は世界現代史上公認の奇跡とされていて、都留重人はそれを「不死鳥の再生」に例えている。しかし、『日本経済の奇跡は終わった』では、成功の理由の探求は主な任務ではなく、「不死鳥」の物語の続編こそが作者の注目する焦点となっている。経済バブルはいかにして発生し、いかにして崩壊したのか。背後にある病巣・病理の探求こそが、作者が自ら定めた学術的目標である。

日本の戦後史や経済史を整理することにより、都留は、エネルギーと土地という「二つのいかなる社会の生活においても絶対に欠くことのできない生産と消費の基本要素」が、ひとたび価格革命を経た後には、両者の違いが際立っていることに気付いた。エネルギーに比べ、土地は代替の利かない資源であり、利用効率の上昇の余地はかなり限られている。1960年代、日本政府が「所得倍増計画」を行っていた時期、土地価格に第1次上昇が起きた。10年後、第1次オイルショックを迎え、その結果、石油と土地の二重の「価格革命」が起きた。

土地の価格革命はまず経済構造を書き換える。1987年を例にとると、この年だけで不動産のキャピタルゲイン(資本利得)は416兆円に達し、この年度の日本のGDP(国内総生産、343兆円)よりも20%以上も高かった。金融債券の成長も生産活動の成長をはるかに上回り、日本の資本主義は次第に頭でっかちの構造へと変化した。日本式混合経済は法人資本主義およびその海外拡張であるが、こうした構造をさらに強化することとなった。短期的には、表面上の繁栄は確かにある種の幻想をもたらし、海外世論も次々と日本の「成功」を褒めたたえ、国内の主流世論と共に、客観的には両面からの加護、すなわちバブル促進の役割を果たした。

都留は同書を1978年に出版した(毎日新聞社)。原稿の完成が比較的早い時期であったため、バブルはまだ膨張の余地があって、バブル経済の深刻な問題とその弊害はまだはっきりとは現れておらず、この後、より大きい数々の不祥事が報道されるようになる。国民を挙げての土地転がし、バブル化がいっそう激しくなった時期に、同書は金融腐敗の系統的な根源を理論的に明らかにしたものであり、「バブル経済前史」といったような趣があり、その論述内容はいまだ古びてはいない。例えば都留は早くも不動産バブルが都市の在り方を変えてしまうことに気付いており、「都市コミュニティーの中の親しい隣人関係の消失」は地価の過度の上昇により心が離れていったために起きたと考えている。こうした心の距離感は、まさに幾度もの不動産ブームを経た後に全ての中国人が直面している現実でもある。

  
関連文章