青木馨 合弁通じ省エネに貢献

2020-06-09 10:12:17

王衆一=聞き手

 

青木馨 三菱重工業株式会社執行役員、中国総代表兼三菱重工業(中国)有限公司総経理

1957年生まれ。三菱重工業株式会社執行役員、中国総代表兼三菱重工業(中国)有限公司総経理。81年、入社 (本社人事部)。20118月、韓国三菱重工業社長に就任。164月、機械・設備システムドメイン副ドメイン長に就任。174月から現職。

 

国際経済の絶え間ない変化により、企業は組織形態に新たな調整を絶えず加えていくことを求められている。中国での日本企業の業務活動を観察しても同様の結論を得られる。

三菱重工業は今年4月、事業体制をエナジードメイン、プラント・インフラドメイン、物流・冷熱・ドライブシステムドメインの3ドメインおよび四つのセグメントに再編する。中国業務でも近年、空調設備や自動車部品で比較的大きな変動があった。市場のニーズに基づいて関連投資を進め、中国企業と共同出資して新しい分野に進出している。

同社の業務は往々にして通常の社会生活とは距離があり、一般読者が注目するものは多くない。青木馨氏は17年4月に三菱重工業株式会社執行役員、中国総代表兼三菱重工業(中国)有限公司総経理に就任した後、中国業務を調整してきた。中国市場の変化をどのように見て、どの分野で中国に新しく投資し、どの分野で中国企業との協力を強化するのかについて、青木総代表にうかがった。 

 

――青木総代表が就任してから3年近くになります。この間、中国にどのような変化があったとお感じですか?

 

 青木馨(以下、青木) 日常生活の中で日本と一番違うと感じるのは、シェアリングエコノミーとモバイル決済が非常に普及していることとスピード感です。17年に中国に来て、最初に目についたのが街角のシェア自転車でした。各社カラフルな色合いで街を装う、これは日本になかった物です。買い物でのモバイル決済も日本よりはるかに普及しています。しかし、シェア自転車は1年もすると淘汰され、ほんの数社に収束されました。中国は長期間にわたって世界の工場でしたが、世界で最も重要な市場に変わり、現在ではその経済構造にも大きな変化が起きています。こうした変化に企業は無関心ではいられません。

 

――確かに中国の産業自体にも変化が起きています。例えば新エネルギー車、特に純電気自動車において、中国の研究開発や生産、販売が急速に伸びています。

 

 青木 私たちも中国の電気自動車産業の急速な発展には特に注目しています。電気自動車産業分野で中国は昨年、生産台数でも販売台数でも世界の先頭を走りました。電気自動車に対する補助政策が変化した後、販売台数が少し減少しましたが、中国が世界各国の中で依然としてトップを独占していることに変わりはありません。今後、電気自動車の発展がこれまで通り続くなら、このすう勢も変わらないでしょう。

 三菱重工サーマルシステムズは昨年10月、江蘇省常熟市にカーエアコン生産拠点__「菱重汽車空調系統(常熟)有限公司」を設立することを決めました。電気自動車に対する中国市場の非常に大きなニーズを見て、今こそカーエアコンとしては2カ所目の中国拠点を設置する最高のタイミングだと考えました。私たちは日本や米国、上海、タイの生産拠点で関連製品のノウハウを蓄積しており、短期間で工場を建設し、効率的な生産を確実に保証する能力を持っています。私たちの中国工場の製品は小型・軽量・省動力化という特長を備え、業界内でも高水準です。新工場は21年度に正式に操業を開始し、年間生産能力は50万台になります。

 

陝西省主催フォーラムで発表する青木総代表(写真提供・三菱重工業(中国)有限公司)

 

昨年の国際輸入博覧会での三菱重工グループ出展ブース(同上)

 

――カーエアコンや関連するコンプレッサー(圧縮機)のほか、大型コンプレッサーも生産されていますね。

 

 青木 はい。私たちは中国の化学工業企業に多くの大型コンプレッサーや蒸気タービンを提供しています。このうち世界最大級(受注当時)のエチレンプラントで使われているコンプレッサーは設置面積が約150平方㍍で、ガス用コンプレッサーは220平方㍍以上です。1台の機械とはいっても、見た目は大きな3階建て住宅のようです。

 

――エネルギー分野では、どのように新技術を使って役割を果たしていくのでしょうか?

 

 青木 私たちの強みは総合力。特に、エネルギー関連を含め製品は多岐にわたりますが、それぞれが持つ技術が卓越するにとどまらず、リソース、ネットワークを活用してソリューションを提案する素地があります。そして、「ものづくり」のみならず、ビジネスの上流から下流まで大きく間口を広げて対応することができます。

 新技術を含めた省エネと環境保護を実現する分野では、国家電網社と合弁会社を設立し、中国企業の省エネ能力向上に協力します。昨年には同社との共同出資で「網能菱重(北京)総合能源工程技術服務有限公司」を設立しました。この会社を通じ、エネルギーソリューション(エネルギーの有効利用やコスト削減など)の技術コンサルティングを提供し、中国の省エネ投資プロジェクトを推し進め、省エネと環境保護に貢献します。

 

総編集長のつぶやき

 三菱重工業は過去数十年にわたり、中国の工業が差し迫って必要としていた旋盤や各種プラントなど、大量の先進的な技術設備を中国に提供してきた。現在、中国の自動車産業がモデルチェンジする中で、同社は工場建設に投資し、中国の電気自動車に最も先進的なエアコンを提供している。多くの省エネや環境保護の技術を持ち、今では技術コンサルティングの方法で、その技術を中国のエネルギー産業に活用している。

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