宇宙でも大国から強国へ AIとの連携をさらに強化

2018-01-30 15:14:53

 

 2018年は戌年です。イヌは人間の生活とも密接に関わってきており、ペットの代表格でもあります。また、科学技術の発展にも少なからず貢献してきています。例えば、宇宙飛行犬として人間より早く1957年に宇宙を旅するなど、今日の宇宙時代の先駆けでもあり、今や、ペットロボット犬(日本のaiboなど)として、人工知能(AI)の可能性を身近に感じさせてくれています。戌年だからというわけではありませんが、今年は、科学技術の飛躍的発展により、宇宙とAIが人類にとってぐっと身近になる年になるのではないでしょうか。

 中国では、宇宙経済圏、宇宙経済といった言葉やAIを搭載した各種ロボットの活躍が頻繁にマスコミに取り上げられ話題となっています。今や、第4次産業革命期に入ったといわれますが、宇宙プロジェクトやAIの応用はその中心にあるといえるでしょう。現在、中国は「中国製造2025」や「インターネット+」などの国家プロジェクトを積極的に推進しており、世界第2位の経済規模を背景に、科学技術において世界の最前線に躍り出つつあるといっても過言ではありません。科学技術の飛躍的発展は世界と人類にどんな福音をもたらすのでしょうか。今後、宇宙事業やAI応用でプレゼンスを強める中国に、世界の目が集まるのは間違いないでしょう。

米国と並ぶ打ち上げ回数

 中国は、毎年4月24日を「宇宙の日」に指定するなど、宇宙に並々ならぬ関心と大計を抱いています。目下、有人宇宙飛行(神舟計画)、宇宙ステーション建設(天宮計画)、月探査(有人月面着陸を含む嫦娥計画)の3主要宇宙事業を展開中で、2016年には、長征ロケット(注2)を中心とする事業用宇宙ロケットの打ち上げ回数が22回となり、ロシア(17回)を上回り、米国と並び世界一になったと報じられています(人民網 17年1月3日)。今後も多種多様な任務を担う宇宙ロケットの打ち上げが予定されていますが、この先数年の代表例として、次のものを指摘しておきましょう。

 今年 新型「宇宙連絡バス」打ち上げ(異なる衛星をそれぞれの軌道に投入)

 固体燃料ロケット(快舟号)の打ち上げ

 20年 再利用可能ロケット(スペースシャトル)の打ち上げ

 同年頃 火星探査機の打ち上げ(火星探査スタート、30年頃 火星サンプル回収帰還)

 このほかにも、気象衛星(風雲号、打ち上げ回数で世界最多)、量子科学実験衛星(墨子号)、ブラックホールなどのダークマター探査衛星(悟空号)、無人宇宙補給船(天舟号)、測位システム衛星(北斗号)、通信衛星(実践号)などが打上げられており、今後、AIとの連携などにより、その成果の発揮が大いに期待される時代に入ったといえるでしょう。

「一帯一路」に応用も期待

 宇宙事業の波及効果は広範囲に及ぶと期待されます。例えば、衛星測位システム「北斗」では、民間利用者がすでに1000万人に達しているほか、その精度の高い(2まで測位可能)サービス網が、16年時点、全国300都市以上の各種産業で応用サービス(都市ガス供給、上下水道、無人運転などスマート交通、スマート介護、シェアリング自転車管理、災害時通信、登山ドライブ利用など)を提供しているとされます。携帯電話の電波が届かない環境でも、北斗の利用で遠距離通信が可能となり、映画のシーンに出てくるようなハイテク装備がますます身近になると考えられます。こうした宇宙探査開発活動によって生み出された製品やサービス(通信金融医療国防食品教育気象海洋農業民間航空など)が宇宙経済を形成するわけですが、そのもとで、今後、宇宙産業ビジネスが急速に発展していくとみられます。

 中国は目下、宇宙大国から宇宙強国を目指しています。世界第2位の経済規模を有する中国が経済強国を目指しているのと軌を一にしています。今後、中国は宇宙経済においてもプレゼンスを向上させ、その発展に貢献していくものと期待できるのではないでしょうか。この点、フランスと共同開発した「中仏海洋衛星」の打ち上げ、サウジアラビアにおける北斗ナビゲーションシステムシンポジウム展示商談会の開催など、中国は商業ロケットの打ち上げ、各種宇宙関連会議や展示商談会の開催など、国際宇宙ビジネス交流を積極的に展開しています(注3)。さらに、中国はすでに世界30カ国3国際機関と98件の宇宙事業関連協力協定に調印していますが、このうち、「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」沿線国が11カ国(23協定)とほぼ3分の1を占め、今後、「一帯一路」沿線国への衛星通信サービス能力を大幅に拡大するとしている点は注目に値するでしょう。「一帯一路」経済圏が構築されつつある現在、「一帯一路」は宇宙経済ビジネス圏においても、その核になる可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。

火星探査機にAIロボ搭載

 1968年に公開され、世界的な話題となった映画『2001年宇宙の旅』には、史上最高の人工知能HAL(ハル)9000型コンピューターが登場します。このハルの異常を疑い、その思考部を停止させた船長が1人(他の乗組員4人はハルによって殺害)木星に向かうというストーリーですが、ハルの異常はさておき、半世紀前の映画の世界(宇宙事業とAIのコラボレーションなど)の一部が、今や現実化しつつあることは注目されます。例えば、中国が2020年頃の打ち上げを予定している火星探査機に、最新AIの応用やAIロボットが搭載される可能性などが指摘できるでしょう。

 宇宙事業とAI(搭載ロボットを含む)には共通点が少なくありません。例えば、次世代の成長産業であり、合併買収(M&A)による企業再編が少なくないこと、応用分野(医療、教育、農業、安全、航空、介護、災害救助、無人化など)が多岐にわたっていること、人材育成が急務となっていること、国際協力の必要性が問われていること、また、中国特有な共通点として、「一帯一路」構想での展開応用が期待されていることなどが指摘できます。

ガバナンスの構築が急務

 宇宙事業とAIの応用は人類の未来に大きな福音となる可能性を秘めているといえますが、また、課題も少なくありません。目下、地上では、グローバルガバナンスの先行きが不透明となっており、世界経済、国際関係などの発展への影響が懸念されています。中国は公平で客観的なグローバルガバナンスの改革を提起していますが、同じことが、宇宙事業とAI応用にもあてはまります。今や、宇宙事業とAI応用のためのガバナンスの構築が求められる時代に入ったといえるのではないでしょうか(注4)。宇宙強国、AI先進国を目指す中国には、「共商共建共享」(共に話し合い、共につくり、共に分かち合う)の「中国の知恵」と「中国方式」を大いに発揮してもらいたいものです。

 

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