「中国とアフリカは兄弟」 北京サミットで習主席強調

2018-10-31 19:03:13

 江原規由=文

 8月末、北京空港から市内へ至る道路脇の街路灯のポールに、「共叙友誼、共商合作」「共促発展、共創繁栄」(注1)、「2018中非合作論壇北京峰会(2018年中国アフリカ協力フォーラム北京サミット)」と記された3種類の小旗が夏風にはためいていました。さらに、天安門広場など北京市内の各所に巨大な花壇などが設置されていて、その景観たるや実に壮観でした。9月3、4日に北京で開催された「中ア北京サミット」を祝う中国ならではの歓迎ぶりを目の当たりにし、中国の北京サミットへの期待の大きさが伝わってくる思いがしたものです。

 期待の大きさでは、アフリカ側においても同じでしょう。アフリカにとって、中国は09年に米国を追い抜いて以来、9年続けて最大の貿易相手国であり、中国にとって、アフリカは第3の海外投資市場、第2の海外建設請負市場となっています。このうち、例えば、中国の対アフリカ各種投資残高は1000億余り(注2)に達し、3500社超の中国企業がアフリカで投資経営活動に従事しているとされています。現在、中国はアフリカ各地に約25の「経済協力区」(入居企業400社、累計投資額60、エネルギー鉱山、軽工業建材、紡織製造、家電関連など)を建設済みで、今後の対アフリカ投資の拡大が期待されています。ちなみに、昨年の中国アフリカ貿易は、前年比14%増(1700億)で、このうち、対アフリカ輸入が33%増と急増しています。

 注目すべきは、ルワンダのカガメ大統領の「『一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)』はルワンダにとってもアフリカにとっても重要なチャンスだ」との発言に代表されるように、アフリカ諸国が「一帯一路」建設への参加を21世紀におけるアフリカ発展の重要なチャンスと見ている点でしょう。

習主席は就任以来4回訪問

 習近平国家主席は、北京サミットに先立つ7月19日から29日、アラブ首長国連邦(UAE)、セネガル、ルワンダ、南アフリカを公式訪問し、南アフリカのヨハネスブルグでは第10回新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席し、モーリシャスも友好訪問しています。習主席のアフリカ訪問は、5年間で4回目となりアフリカ重視の姿勢が見て取れます。

 その訪問の成果を「一帯一路」との関連で見ると、南アフリカとは、「一帯一路」および中国アフリカ協力フォーラムの枠組みでの協力強化(発展戦略の連携、ニューエコノミー分野や新興産業での交流協力深化など)、また、セネガル、ルワンダとは、「一帯一路」共同建設覚書に調印、モーリシャスとは、9月2日に自由貿易協定(FTA)交渉が終了し、中国とアフリカ諸国の間で初のFTA締結が見込まれるなど、「一帯一路」の推進に向けた2国間協力および中ア協力に新たなプラットフォームが形成されつつあると認められるでしょう。「一帯一路」以外では、アリババ(阿里巴巴集団)が「馬雲アフリカ青年起業基金」を使って、今後10年にわたり、アフリカの青年起業家100人をサポートし、アフリカの小企業の発展、基層イノベーション、女性の起業に重点を置いたプログラムを始動させるなど、中ア協力は「一帯一路」事業や3年来の「10大協力計画」の推進のほか、人材育成、農業振興民生向上インフラ整備資源開発金融関連基金(例えば、中ア発展基金、中ア産業協力基金)による貧困軽減産業発展協力の推進など、官民双方からその裾野を広めつつあるのが実情です。

長い間に培われた信頼関係

 中国とアフリカ諸国の関係を振り返ると、中国、インド、インドネシア、エジプトが主導した1955年のアジアアフリカ会議(AA会議、バンドン会議)を経て、71年、中国の国連代表権(常任理事国)を承認するかの投票で、賛成票76票のうち3分の1に当たる26票がアフリカ諸国から投じられているなど、双方の友誼、信頼関係には歴史的重みがあるといえるでしょう。今日、そのことを雄弁に物語っているのは、習主席が「中国は何よりも伙伴関係(パートナーシップ)の構築を国家間交流の指導原則と定める」とした伙伴関係が多いという事実を指摘できます。習主席は「現在90余りの国地域(注3)と伙伴関係を構築している」と、述べましたが、そのうち60余りの国地域がアフリカ諸国との伙伴関係です。伙伴関係は協定や条約ではなく元首の信頼関係に基づく共同声明によって構築される点で、その時々の国際情勢に対するコンセンサスの形成、経済社会面での交流協力が臨機応変にできる融通性があります。今後のアフリカでの「一帯一路」の推進や来るべき中国とアフリカ諸国との経済連携(新タイプのFTA締結など)で、伙伴関係の果たす役割、その意義は極めて大きいといえるでしょう。習主席は、北京サミットでの「手を携えて運命を共に 心を一つに発展を促進しよう」と題する基調講演で、「中ア友好協力の前途は洋々としている。中ア全面戦略伙伴関係は、先行き大いに希望が持てる」と、言っています。

鍵を握るのは「一帯一路」

 さて、「中国アフリカの大家族が再び一堂に会する」とされた9月の「中ア北京サミット」は、これまで2回(06年の北京、15年のヨハネスブルグ)開催されました。3回目のハイライトは、習主席の基調講演にあったといえます。その冒頭、習主席は「兄弟であるアフリカ人民に中国人民の心からのごあいさつを申し上げる」と発言しましたが、この「兄弟である」に基調講演の趣旨が凝縮されていたのではないでしょうか。世界最大の途上国の13億人の中国人民と途上国が最も集中している12億人余りのアフリカ人民が、兄弟として手を携えて中ア運命共同体を構築することは、世界文明の進歩、世界経済の発展に大きな福音となると期待できます。国家主席就任以来、アフリカを4回訪問した習主席だからこそいえる、アフリカそして世界に対する格調高いメッセージだったといえるでしょう。

 その中ア運命共同体構築の鍵を握るのは、何より、「一帯一路」であり、「10大協力計画」、そして、「8大行動」の行方にかかっていることが、習主席の基調講演から読み取れます。具体的には、例えば、アフリカ連合の「アジェンダ2063年」およびアフリカ諸国の発展戦略との連携、600億の資金支援、今後3年間に100億を下回らない中国企業によるアフリカ投資の実現、中ア農業現代化協力行動計画の策定、アフリカ大陸FTA構築への支持、そして、未来を担う人材育成訓練(2000人のアフリカ人青年の招聘交流など)、貧困脱却協力、さらには、竹藤産業の開発援助などで対応できるでしょう。これほど多様な協力姿勢を示し、その実現に向けた計画を打ち出せる国は、中国をおいて他にはないといっても過言ではないでしょう。

 今年は、中国および世界経済の発展に大きく貢献してきた改革開放40周年です。その発展の経験をアフリカの地で開花させようとしている中国の姿勢が、習主席の基調講演の行間にあふれ出ていたといえるのではないでしょうか。

1 「友誼と協力によって共に発展し繁栄しよう」。テーマ「協力ウインウイン、手を携えてさらに緊密な中ア運命共同体を構築しよう」を具体的に表現したフレーズ

2 モンバサナイロビ鉄道、アディスアベバジブチ鉄道、アブジャ都市鉄道、ハイセンス(海信)南アフリカ工業団地、エチオピアアワッサ工業団地などアフリカのインフラ、工業団地、経済特区、産業生産能力事業多数が竣工運用を開始。

注3 東南アジア諸国連合(ASEAN)などの加盟国をすべてカウントすれば、伙伴関係構築国地域は150カ国地域を下らない。

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