役柄入れ替え

2019-10-11 16:05:22

劉春庭=

砂威=イラスト

 

 李君は長年事務仕事をしており、彼は決まったやり方で整然と仕事をこなし、物事に几帳面で、種類ごとにきちんと分類するタイプの人間であった。

  近頃、李君は突然道を踏み外し、もはや余暇に公式文書の研究や作文をしようとはせず、文学創作に魅入られてしまい、毎晩家で机に向かって筆を振るい、しばしば夜更かしして、髪を掻きむしり頭は鳥の巣のようになっていた。妻は一人冷え冷えとした布団の中でもんもんと寝返りを打ち、「毎日黙々と苦労して書き続けても、出世できるわけでも、給料が上がるわけでもないのに」と文句を言った。李君は「職場で毎日書類を書いても私の名前は出ないが、今は自分で物を書いているから、名を上げることができるんだ」と答えた。

  李君は農村から都市にやってきた機関幹部であるため、農村生活の経歴があるだけでなく、都会暮らしも経験しており、そのため彼は『山里での逸話』と、『ダンスホールの情事』という作品を書き上げ、自分では良くできたと感じていた。いつもの事務のやり方で、彼は『山里の逸話』を『農村××』という刊行物に送り、『ダンスホールの情事』を『都市××』という刊行物に送って、3カ月以内に採用通知が来るのではないかと自信たっぷりに待った。

  しかし3カ月がたっても、どちらの原稿もなしのつぶてだった。李君にはまったく理由が分からず、夜に書き続ける気も起こらなくなった。あるとき妻と一緒にテレビの前に座って番組を見ていると、間もなく「何がバラエティーショーだ。歌手がショートコントをして、芸人が歌を歌うなんて、めちゃくちゃもいいところだ」と悪態をつき始めた。

  妻は頭ごなしに、「あんたに何が分かるっていうの。これを『役柄入れ替え』というのよ。歌手の歌を聞いて、芸人のコントを見るなんてもうとっくに飽きたわ」と言った。

 「飽きた?」李君には理解できなかった。

  「そう、まさに飽きたの。いつも同じスタイルじゃ、もう誰の注意も引けないわ。スターが専門外の役柄を演じたら新鮮に感じるでしょ?」

 「新鮮?」

  「そう。とにかく新鮮なの。言ってもあなたは信じないかもしれないけど、私の会社の范さんが郊外でレストランを開いたの。都市のコックを雇って都会のお客さんの対応をさせ、さらに農村のコックさんも雇って、農村からの来客に対応させたんだけど、お客さんは料理を食べるとみんな味が良くないって言ったんだって。ある時、店員がうっかり料理を運び間違えたら、なんとお客さんはみんなおいしいと言い、今回のコックはいいって褒めたんだって。それからというもの、彼は農村のコックに都会の客の対応をさせ、都市のコックに農村の客の対応をさせたらたちまち大繁盛で、お金がどっと財布に流れ込んできたそうよ」

  李君はまずびっくりしたが、一気に疑問が解け、「分かった、分かった」と言い、「賢妻のご教授に感謝いたします」と妻に向かって胸の前で両手を合わせ深々と拱手した。

  翌日、李君は2本の原稿を探し出してきて、『山里での逸話』を『都市××』に、『ダンスホールの情事』を『農村××』に送った。

  間もなく、李君のもとには二つの出版社から原稿採用の通知が届いた。

 

翻訳にあたって

タイトルの「反串」は、少し説明が難しい言葉だ。「串」には「役に扮する」という意味があり、中日辞典で「反串」は「役者が余興として本来の役以外の役柄を演じること、代役」などと説明されている。京劇など中国の伝統劇における「役柄」には、「生」と呼ばれる男性役、「旦」と呼ばれる女性役、さらに浄、丑などの種類があり、役者は通常自分が専門に演じる役柄を持っているため、自分の専門以外の役柄を演じることが「反串」である。しかし、この訳語を辞書の説明にあるように「代役」としてしまうと、「出演できなくなった人の代わり」の意味となってしまう。悩んだ挙句「役柄入れ替え」としたが、あまりぴたっとくる訳語ではなく、残念だ。(福井ゆり子)
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