あのアオギリの木は

2020-06-15 14:27:39

 

李翠娟=文

源=イラスト

 おじいちゃんはある年の春、アオギリの木を植えた。アオギリはとてもよく枝葉を茂らせ、成長も早く、数年もしないうちに庭の半分を覆うようになった。おじいちゃんは隣人たちにしょっちゅう、いったいどうやって世話をすればあんなに大きくなるのかと聞かれたが、笑うだけで答えなかった。

 その頃、アオギリの木の下で遊ぶのが、私たち子どもの一番の楽しみで、まだら模様の木の皮はまるで抽象画の作品のようで、私たちの目はいつでもこの絵から大人には見ることができない神秘的な世界を探し出すことができた。

 夏はアオギリが一番美しい季節で、紫の鈴みたいな花が一房また一房と緑のこずえにぶら下がり、そよ風が吹くと濃厚な香りが漂ってきて、思わず何度もその匂いを深く吸い込んだのだった。

 その日、家具職人の張さんがやって来た時は、夕日はもう西に沈み、炎のように真っ赤な夕焼けがアオギリの木を黄金色に染めていた。彼は木の周りを幾度も回り、その目には隠し切れない喜びが浮かんでいた。

 私はこの人がとても嫌いだった。なぜなら彼は一日中村の中をぶらつき、材木にできそうな木がある家を見つけると、いつだってあらゆる手段を使ってすぐにそれを切ってしまおうとするからだ。おじいちゃんもまたこの人が嫌いな様子であり、彼は何度も家を訪ねてきたが、おじいちゃんは相手にしなかった。

 その日、彼はおじいちゃんを家の中から引っ張り出してきて、「いくらならいい? いくらでも出すから」と言った。おじいちゃんは彼に構わず、ゆっくりと木の前に行き、いつも私の頭をなでるときのように優しくアオギリの木をなで、しばらくしてようやく振り返って、「帰ってくれ、私はこの木は売らない」と言った。 

 アオギリの木は守られた。しかしそれは長くは続かず、翌年の春、村に突然新たに道路を造る計画の通知が送られて来た。私の家は移転範囲にあり、アオギリの木も計画に支障が出るため、伐採の対象になっていた。

 この時も家具職人の張さんはやって来て、彼は計画図を持ちながら、おじいちゃんに得意げに「このアオギリは道路予定地にあるから、今度ばかりは売らなきゃならないね」と言った。

 おじいちゃんは彼の言葉が終わるのを待たず、「売らないと言ったら売らないんだ!」と怒鳴った。

 しかしおじいちゃんは引っ越しの前、やはり心を痛めて、家族にこのアオギリを切るように言いつけた。私たちは引っ越しの時、アオギリの木を一緒に新しい家に移した。意外なことに家具職人の張さんはまだ諦めず、新しい家におじいちゃんを繰り返し訪ねてきて、怒りに顔を赤くしながら、どうして木を売ってくれないのかと詰め寄った。おじいちゃんはいつも口を閉ざしたままだった。

 時間はこうしてゆっくりと過ぎていき、あっという間に冬がやってきた。おじいちゃんの病気が突然重くなり、家族はあちこちに薬を探し求めたが、病状が好転する様子は見られなかった。

 北風が吹きすさび、灰色でどんよりと曇ったある日の朝、私たちは皆、おじいちゃんのベッドの前にひざまずいていた。彼は何度も意識を失い、もう先は長くないことは分かっていた。

 おじいちゃんは父に頼んで、家具職人の張さんを呼びに行ってもらい、息も絶え絶えに、「あの時、……木を植えた時、私は木の下に死んだブタを埋めたんだ……。だから木は早く成長した。だけど……だけど……あまりに早かったから、木材は……きっと丈夫じゃないと思って……売りたくなかったんだ」と言った。

 おじいちゃんの話に、お父さんも家具職人の張さんも、半信半疑だった。彼らは一緒に電動ノコギリでアオギリの木を製材し、その木材に近づきよく見てみると、確かに表面に大きな亀裂がまんべんなく入り、とてももろいように見えた。このような木材では確かに良い家具は作れない。

 家具職人の張さんは慌てて部屋に入ると、安らかに両目を閉じたおじいちゃんを見て、思わず涙を流した。

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