日本製品は高品質低価格 中国の消費者、企業は注目するが…

2018-07-30 16:37:04

陳言=文

 去る5月、10日間ほど日本を訪れる機会があった。今回は筆者一人ではなく、深圳衛星(BS)テレビ局の日本取材班と共に、日本各地を取材した。取材活動の合間に、筆者はテレビ局の若いディレクター、記者らと一緒に牛丼を食べ、取材予定のない夜は普通のバーへ行って一杯飲んだ。

 お客さんがたくさん入っているレストランはおいしい証拠だが、日本では「入り」を気にする必要はない。今回も飛び込みで入ったレストランで、最初の料理を一口食べると、テレビ局のスタッフらは異口同音に「うまい!」と歓声を上げた。料理の値段はたいてい、深圳よりも安かった。店はネオンがきらめき、車の行き来が激しい繁華街のど真ん中にあるのに、どうしてこんなに安いのか?これも彼らにとって、大きな驚きだったようだ。

 

深圳のレストランより安い

 一般の中国人は、日本の物価はかなり高く、少なくとも中国より安いことはあり得ないと思い込んでいる。このような気持ちで、街のあちこちのレストランに入ると、清潔で、お客さんの人数は多くなく、注文した料理が運ばれてくるスピードは中国のほとんどのレストランよりずっと速いので、サービス料が高いのも当然だと感じる。ご飯を一口食べ、牛肉を箸でつまんで口に入れ、えも言われぬうまさを体験すると、日本食のおいしさに対する理解がさらに深まる。日本料理を食べに行って、次々に運ばれてくる小鉢を目にすると、スマートフォン(スマホ)を取り出して、何はさておきシャッターを押す。精算時、思ったほど高くないことに気が付き、日本の高品質低価格を実感できる。

 数年前、一般の中国人観光客といえば、日本で大量の紙おむつ、シャンプー、化粧品を購入し、中産層以上の人々は日本で欧米製のブランドもののバッグや時計を争って買う「爆買い」が中国人観光客の特性とされていた。しかし、現在はディープツアー、日本文化発見、体験の旅が新しいトレンドになっている。日本的な魅力が長期間存在しているのは、中国人にとって、日本の文化や歴史を理解しやすいほかに、飲食がすぐ受け入れられ、その上、日本料理がおいしいだけでなく、日用品、食品、飲料を問わず、高品質低価格を維持していることが、日本の魅力をますます拡大している。こうした魅力は簡単に消えることはなく、今後、さらに輝きを増すだろう。

 

数多くの創立100年企業

 東京から北京に戻って数日後の5月28日、筆者はパナソニック主催の「中国感謝会」に参加した。これは同社の創立100周年と中国市場進出40周年を祝うイベントだった。

 創立100年は言うまでもないが、一企業が中国で40年の歴史を刻んできたということも容易なことではない。筆者が日常的に取材している企業は、20年の歴史を経ているが、それでも特筆される存在で、一頭地を抜いている。中国は農業国家で、改革開放以前に、個人が企業を設立することは、一切認められず、改革開放前に創立した企業は特別な背景がある場合に限られていた。

 日本ではちょっと調べただけで、パナソニックのように100年以上の歴史を持つ企業がおよそ2万8000社に上ることが分かる。日本の製造業が強い理由は、ここにあるに違いない。企業は何十年、あるいは100年以上の時間を費やして製品を作り、その製品を極致にまで磨き上げる。

 筆者らは日本の中小企業の社長を取材したが、筆者は彼らが50代、60代であることに驚かなかったが、同行したテレビ局の記者らはとても高齢の人だと感じたのか、極めて恭しく対応していた。中国で彼らが取材する対象は30代、40代の社長が主で、20歳以上も高齢の部類に入るため、言ってみれば一世代前の人と感じられるらしく、ごく自然に恭しい態度になったのかもしれない。

 中国企業には創立したばかりで、保有している技術は多くないという中国的な特徴があるが、国内市場が巨大なので、彼らは革新的な技術を積極的に導入し、全く新たな方法で企業を経営している。失敗した事例は少なくないが、最終的に強大になる企業もある。新技術、特に情報技術(IT)使用の分野では、中国企業はさらに積極的だ。ここ数年、中国ではインターネット企業が大量に出現し、その陣容は日本を大幅に上回っている。これは単に中国市場の大きさ、人口の多さという客観的な条件に適応しているというだけでなく、さらに企業が相対的に若く、新技術を積極的に導入した成果ともいえよう。

 

中日企業の補い合いを願う

 30年前、日本観光に出掛ける中国人はほとんどいなく、公務出張に行く人々はみなインスタントラーメンを持参していた。当時の日本の物価は高く、特に飲食費は高価だった。現在、日本に行く中国人の多くは、スーツケースの中にもう一つの空のスーツケースを入れて行く。目的は日本で高品質低価格の商品を購入するためだ。

 30年前、日本企業が大挙して中国に来て投資したが、日本に行って企業合併買収(M &A)をしようと考えた中国企業はほとんどなかった。現在、中国企業の手持ち資本がますます潤沢になり、中日間で日本技術を紹介して、日本の技術と中国市場を結び付けようと希望している人は少なくないが、今のところ成功例は多いとはいえない。

 ここでは大規模なシステム技術には言及しない。日本の中小企業の技術コンテンツだけを見た場合、筆者は中国で使うことができると考えているが、日本の技術は今後継続的に発展し得る段階にあり、技術と技術者が緊密に連携しているため、機器とは違って、1台の機器を売ったからといって、技術を外部譲渡することにはならない。

  企業のM&Aを通じて―特に日本の中小企業経営者が後継者難に悩んでいる今こそ―中国企業への転売を考慮に入れるべきではないか。先益(北京)科技公司の孫晨総経理(社長)が試みたが、日本の中小企業は困難に遭遇しても、中国企業に譲渡したがらないと感じたそうだ。「日本の企業家の多くは企業を自分の子どもと見なし、安易に売りたがりませんね」と孫氏。しかし、中小企業が独自に国外で技術による資本参加の方式で中国側と協力するにしても、現在、かなり大きな困難が控えている。

 中国の消費者、企業が発見した日本製品の高品質低価格は、現在、日本に行ってはじめて感じられる現象であり、これを中国に持ち帰り、文化的な差異を超越し、中日両国の相互理解を継続的に深化させるべきだと思う。

 

 

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