「山川異域、風月同天」に感動 両国連携で新型肺炎の特効薬を

2020-03-19 18:12:18

 陳言=文

筆者は毎日、数十編から数百編の文章をスマートフォン(スマホ)でスワイプして読んでいるが、クラウドに保存するのはさほど多くない。写真も同じで、カメラマンではないが、雑誌社で仕事をしている関係でさまざまな写真を見るのが楽しみだ。

先月1日にネットで見付けた1枚の写真――三つの段ボール箱だけで人物は映っていない、決してうまいとは言えない写真をファイルに入れた。写真には、「日本漢語水平考試(HSK)事務局が湖北の大学に支援物資」という見出しの下に、小さな文字で「山川異域、風月同天」と書かれていた。このたった8文字に、中国人は日本人の心の広さと人情の厚さを感じた。 

2003年の年初、北京などで重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した。全国SARS対策本部が4月28日に設置され、7月になってSARSとの戦いは終息した。その流行開始から、最終的な制圧までに数カ月を要した。今回、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎(新型肺炎)は、毒性はSARSより低いものの感染速度はSARSを上回る。感染の拡大はさらに続きそうで、国際社会の共同対処が求められている。

前出の「風月同天」というのは、国際社会に必要な新型肺炎を共同して制圧する理念を示している。

 

マスクやゴーグルを寄付

 日本のメディアは、1月中旬から多くの紙面を割いて武漢で発生した新型肺炎関連のニュースを報じた。同月下旬にヒトからヒトへの感染が確認されると、日本は国際社会でいち早くチャーター機を派遣し、同月28日から数回に分けて数百人の武漢在留の日本人を帰国させた。

 中国側メディアのほとんどが、在留日本人を運ぶチャーター機に、武漢の医療機関に寄贈するマスクや手袋、防護ゴーグルが積み込まれていたことを報じていた。武漢の感染患者が増えるにつれて、ますます多くの人々がマスクなどの重要性を意識し、日本側のタイムリーな支援に感謝した。

 筆者の日本人の友人は、多くの気遣いの電話やメールの中で、マスクや消毒薬を宅配便で送ろうかと心配してくれた。

 1月末に日本に出張した日系企業の社員は、滞在中に買い集めたマスクなどの感染防護用品を託送荷物として中国に持ち帰り、その後、宅配便で武漢などの医療機関に贈った。筆者は、三菱商事の子会社の「国薬菱商」(中国最大の医薬品卸である国薬ホールディングスとの合弁で上海市に設立した医療材料流通会社)の社員が1月28日に日本から北京に戻る際、同商事が用意した寄贈用のマスクなどを7個のスーツケースいっぱいに詰めて持ち帰ったことを、同社のウイーチャット公式アカウントで知った。

 日本企業は最も早く中国の慈善機関に寄付した。筆者がパナソニックの広報から聞いた話では、同社は1月25日、100万元(約1600万円)の緊急寄付を行った。その一部は、マスクや防護服、防護ゴーグルなどの感染防止用グッズの購入に使われた。

 新型肺炎の発生に迅速に対応し、感染が拡大するとタイムリーに武漢の支援に乗り出した日本政府と企業の行為は、中国の人々に好印象を与えた。

 

小児科の連携は前途有望

 中日間には数千年に及ぶ交流史があり、文化的に非常に似ているところがある。現代社会では、両国とも高齢化の進行や出生人口の減少などの問題に直面している。

 ここ数年、中日企業は高齢化問題を重視している。これは、高齢者介護にとどまらず、運動機能の低下や加齢性認知症、糖尿病の治療などを含む加齢性疾患の中日共同研究も進んでいる。

 特に小児科の分野で、日本の専門医療機関の数と小児用医薬品の種類の豊富さは、共に中国のずっと先を行っている。小児医療に関連する中日提携は非常に前途有望だ。

 しかし、中国側が日本で医療機関を運営するのは極めて困難であり、中国で中日合資の医療機関を運営するのも容易ではない。高齢者に介護サービスを提供する同様の施設もまだ模索中だ。医療器具の共同研究・開発、薬品の共同研究には全く枠組みがなく、医療・医薬分野のメカニズムの共同での立ち上げが今日最も重要だ。

 日本の技術研究・開発能力と中国の巨大市場は、中日両国による医療プラットフォームの共同建設には有利であり、今後、推進すべきだ。

 

情報交換システムの構築を

 中日間の移動は、近いところでわずか1時間余り、遠いところでも数時間しかかからない。交通が便利になったことによって、両国の中小企業も容易に中日の経済交流に参加できる。また今の中国では、一般の家庭でも日本への観光旅行も実現できるようになってきた。

 しかし、これはもう一つの問題をもたらした。03年にSARSが流行した時には、日本にまでは拡散しなかったが、今回の武漢の新型肺炎は、2月19日の時点で、チャーター機で帰国した日本人など800人余りの中から、すでに14人の感染が確認されている。新型肺炎はすでに日本に入っている。これは17年前のSARSの時とは大きな違いだ。

 新型肺炎の治療は中日医学界のみならず、世界の医学界で最も重要な課題になっている。わずか1カ月の間に、新型肺炎は二十数カ国で診断され、直ちに感染を阻止しなければ、短時間の間に世界中に拡散する可能性が大きい。これに対して、全ての国が中日両国のようにタイムリーに全国的に効果的な組織ができるとは限らない。中日の提携による迅速な特効薬開発は、両国のみならず世界的にも一刻の猶予も許されない。

 筆者は、中日が世界保健機関(WHO)とさらに緊密に連携できる感染情報と拡大防止システムの構築が必要だと思う。このシステムを通して中日両国の医学研究者、臨床医師が頻繁に情報を交換する。そして感染症が流行する前に、この情報力により直ちに国民の注意を喚起すれば、武漢の新型肺炎のような感染症の流行を阻止できる。

 冒頭の「山川異域、風月同天」は「寄諸仏子、共結来縁」と続く。その意味は、「地域や国が異なっても、風月の営みは同じ空の下でつながっている。この袈裟を僧に喜捨し、ともに来世での縁を結ぼう」ということだ。今から約1300年前の中国の天宝元(742)年、当時の唐に渡った日本の留学僧、栄叡と普照は鑑真和上と会い、仏教に深く帰依していた長屋王(天武天皇の孫)から託された来日の希望を伝えた。その長屋王が唐の高僧に贈った1000着の袈裟に、この句が刺しゅうされていた。この話に鑑真は大いに感動し、日本に渡る決意を固めたと言われ、中日の仏教交流に大きな足跡を残した。

 今日、「風月同天」は中国、日本および世界各国が共同で暮らすこの地球上にあり、感染病対策は各国に共通の義務になっている。とりわけ中日の連携が先行しなければならない。

 

武漢の新型肺炎流行が早く終息することを祈願して赤青2色で彩られた東京スカイツリー(131日夜、写真・張建墅)

関連文章