デジタル経済で中日提携を コロナ長期化が変えた日常生活

2020-08-10 16:45:24

陳言=文

 6月11日、北京と東京は異なる政策を打ち出した。

 北京市は連続51日間、新たな新型コロナウイルス感染症の感染者が出現せず、6月6日に緊急対応レベルを2級(全市警戒)から3級(区レベル警戒)に下げた。その後、11日になって、再び新たな感染者が現れたため、北京市は素早く緊急対応態勢を強化した。全ての北京市民は市外に出る場合、PCR検査の安全証明が必要となった。またオフィスビルの出入りやレストラン入店の際には、健康コードと外出記録の提示を求められる。北京市内の警戒態勢は6日以前に比べ、いっそう厳しくなった。

 一方、東京の状況は異なっている。東京都は6月11日、「東京アラート」を解除した。しかし7月15日現在、都内で出現する新たな感染者数は北京の数倍もあり、予断を許さない状況だ。

 

切迫する南米での拡大

 新型コロナウイルスとの闘いは、われわれの予想を上回って長期化、多変化の段階に入る可能性がある。

 第1次世界大戦末期に流行し始めたインフルエンザは、第2波の被害が第1波を上回り、第3波の後、その威力は弱まったものの、世界で約5億人が感染したと言われている。最終的にワクチンは開発できなかった。第1次大戦中、インフルエンザによる欧州の死者はアジアなど他の地域を大幅に上回った。その主な原因は、欧州が戦争の舞台となり、頻繁になった人の動きが感染を拡大したからだった。

 新型コロナウイルスの被害は、7月になっても欧州、米国が他の地域を大幅に上回っている。しかし他の地域の状況も軽視できない。北京時間の7月15日までの米ジョンズ・ホプキンズ大学などの集計によると、ブラジルの感染者は約188万人、死者は7万人を超えた。感染者数は1カ月足らずの間に欧州の主要国を上回り、米国の半数を超えている。

 ブラジルの治療条件は米国とは比較にならない。米国の指導者がこの感染症の被害を重視すれば、かなりの程度感染の拡大を抑制できるはずだ。一方、ブラジルでは仮に事態を重視しても、医療環境に限界があり、感染拡大の抑制に導くのは困難に違いない。この他、ブラジルと国境を接するペルー(7月15日までに感染者約33万人)や、その隣国のチリ(同31万人)など南米の感染状況は緊迫し、予断を許さない。

 またインドでは7月15日までに感染者約90万人、死者約2万3000人となり、猛暑の中、感染拡大は増え続けている。インドネシアやフィリピンなどの国々も感染拡大を効果的に抑制できるか否か、今のところ結論を出すのは困難だ。

 しかし、多くの人々が、感染拡大の中で警戒感がゆるむとウイルスがぶり返し、新たな被害をもたらすかもしれない、と懸念している。

 

コロナでデジタル経済加速

 筆者は6月中、病気の家族に付き添って、しばしば終日病院にいたので、病院近くのレストランで食事を取る機会があった。

 病院の出入りやレストランなど、さまざまな場所で健康コードと外出記録の提示を求められた。スマートフォン(スマホ)のアプリとして入っており、「異常なし」のグリーンコードが出れば、北京市内ならどこに行くのも支障はない。筆者はあまり出歩いてはいないが、周辺の人々は全てグリーンコードだと思えば、安心して外出、外食ができる。

 北京で暮らしていると、新型コロナウイルスによって日常生活がすっかり変わったことを実感できる。非接触が生活の主流になり、買い物はオンライン。仮に商店で買い物をするとしても、現金を使う客はほとんど見掛けない。店で商品を選んだ後、支払いカウンターで品物のバーコードをスキャンし、最後にオンライン決済の微信(ウイーチャット)や支付宝(アリペイ)で支払う。各カウンターのスキャナーの前にいる客は一人だけで、その客の精算が済まないと次の客は支払いエリアに入れない。人と人との接触の最小化を保証している。

 病院の廊下では、国内外を結んだ数え切れないビデオミーティングが開かれていた。ビデオで各方面の人々と連絡を取り、普段は連絡が多くない人とも、ばったりビデオミーティングで出会う。それが終わると、また別なミーティングルームを探し始める。最新ICレコーダーを使えば、会話の言語が中国語であろうが日本語であろうが瞬時に文字に変換・記録してくれる。さほど正確とは言えないが、もう一度聞きたいところを聞けば、どういう内容か理解はできる。

 感染拡大の前、微信は電話とショートメールが主だったが、今では、現金支払いや出勤報告の代わりも果たしている。また、少人数での情報交換から多くのチャットグループという広い範囲の交流へと変わった。それは、何人もの地域や国境を越えた数人の小型ミーティングであり、毎週開いても少しも不便ではない。

 実体経済にも変化が現れた。バーチャルと実店舗の結合は常態化し、言い換えれば、実体経済がオンラインの力を必要とし、注文に応じて生産するようになった。企業はますますブランド力を重視。現在の中国は、販売後に顧客が提起する意見・提案をこれまでのいかなる時代よりも重視するようになった。

 模倣品や粗悪品によって顧客をだますようなことがあれば、ネットで袋だたきに遭う。一つのブランドがダメになったら、また別の新ブランドを打ち立てようと思うような経営者の信頼性は言わずもがなだ。時間や手間がかかり、企業家が一発で一つの分野を様変わりさせるやり方は容易ではなくなった。

 感染症によって中国ではデジタル経済が意外な速さで発展している。

 

6月15日に開幕した第127回広州交易会の一幕。今年は全面的にオンラインで行われ、感染症が発生して以来、最大規模のグローバル交易会だった(新華社)

 

日本の研究開発 中国で成果

 日本企業はデジタル経済の分野で優位に立ち、中国でもますますその役割を発揮している。

 リコーソフトウェア研究所(北京)社の于浩社長によると、同社の画像処理技術は中国ソーラー(太陽光)発電企業で設備の作動状況の検査に使われている。砂漠や廃鉱となった露天掘り跡で発電する際、ソーラーパネルが正常に作動しているか否か検査する必要がある。同社ではドローン(小型無人機)搭載カメラを使い、ソーラー発電所の全てのパネルを撮影後、画像処理ソフトによって、故障パネルを素早く見つけ出し、発電所の正常運転を確保している。

 また日立ソリューション(中国)上海支社の朱磊社長は、中国でテレワークが普及しつつある現在、財務諸表や注文書などの事務処理が非常に煩雑なのを見て、ユーザーにロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を推奨し、大きな成果を上げている。

 新型コロナウイルスとの闘いの長期化に伴って、中国デジタル経済は急速に発展の軌道に乗り、一方、日本企業は中国における業務の新たなパイプを模索している。 
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