中国貿易の強靭性を発揮 6月の輸出入 予想上回る成長

2020-09-28 10:26:10

陳言=文

中日両国は7月、それぞれ今年上半期の貿易データを発表した。

中国の税関総署が同月14日に発表した6月の貿易データによると、同月の輸出額は前年同月比で4・3%増、輸入額は同じく6・2%増で、そろって予測を上回った。また上半期の全体状況を見ると、物品輸出入総額は14兆2379億1000万元(約213兆5700億円)で前年同期比3・2%減、輸出額は7兆7134億1000万元(約115兆7000億円)で同3・0%減、また輸入額は6兆5245億元(約97兆8700億円)、同3・3%減だった。

一方、日本の財務省も7月20日、今年上半期の貿易統計(速報値)を発表した。これによると、輸出額は32兆3642億円で前年同期比15・4%減、輸入額は34兆6038億円で同11・6%減。6月の状況はさらに楽観を許さず、輸出は前年同月比で26・2%減、輸入も同14・4%減だった。

両国が発表したデータから見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が貿易に与えた影響には、大きな違いがあることが分かる。第一に、中国側は6月にすでに輸出入双方のプラス転換を実現したが、日本側はさらに悪化した。第二に、今年上半期、中国の輸出入総額は前年比で3%前後減少したが、これに対して日本側は2桁台のかなり大きな減少傾向が現れている。

 

デジタル経済が従来型補う

新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、中国ではデジタル経済が高度成長を保つ半面、従来型の産業はかなり深刻な縮小現象が現れた。

例えば、製造業では集積回路(IC)、産業用ロボットの今年上半期の付加価値額は、前年同期比でそれぞれ16・4%、10・3%増だったが、繊維産業は同4・5%減だった。また、サービス産業では、情報伝達、ソフトウエアや情報技術(IT)は同14・5%増えたが、宿泊・飲食業は同26・8%減少した。

消費分野では実物商品のオンライン販売の売上高は同14・3%増えたが、オフライン飲食業の収入は同32・8%減った。デジタル経済の強含みの伸びが、従来型産業の縮小をある程度補った。中国のこうした情勢は、感染拡大における他国の状況と明らかに異なり、ここに中国経済の強靭性が色濃く表れている。

デジタル経済の効果は、急速に資本から注目され、テクノロジー企業への集中的な投資が始まっている。上半期のハイテク産業に対する投資は前年同期比で6・3%増え、このうちハイテク製造業とハイテクサービス業に対する投資増はそれぞれ同5・8%、同7・2%だった。ハイテク製造業では、医薬製造業やコンピューター、オフィス機器製造業に対する投資の成長率がそれぞれ同13・6%、同8・2%増だった。またハイテクサービス業の中で、電子商取引(Eコマース)サービス業、科学技術の成果のサービス業への転換に対する投資増はそれぞれ同32・0%、同21・8%だった。

従来型の産業自体もデジタル化に着手している。今年の第2四半期以降、従来型ビジネスのライブ配信化や従来型製造業のインダストリー4・0(製造業のデジタル化)の加速、精密農業化(データ駆使型農業)の流れがさらに強化されている。上半期、産業用ロボットの生産量は前年同期比で10・3%増、情報伝達、ソフトウエアとITサービス業の付加価値額は同8・4%増だった。精密農業のビッグデータガバナンスシステムの下で、農業の栽培構造の最適化が引き続いて行われ、ナタネなど商品作物の作付面積が広がっている。

今回の新型コロナ感染拡大の間、中国の国内経済の強靭性は、受動的な危機対応から能動的に不確定的なリスクを吸収し、新たな発展のチャンスを模索する方向に転じた。これによって、将来的に中国経済の内から生じる強靭性がさらに強くなると期待される。

これらが中国の輸出入貿易の最強で効果的な保証に違いない。

 

防疫需要が輸出をけん引

「一帯一路」などの新たな貿易パイプの開拓は、中国の貿易の強靭性をさらに強化するだろう。

感染症の発生後、予防関連の需要が中国の輸出をけん引したのは明らかである。4、5月のデータによると、その主要な具体例として、防疫物資の輸出増や在宅勤務がもたらしたコンピューターの需要増が挙げられる。6月には防疫関連物資の輸出として、繊維(前年同月比で56・7%増)やプラスチック(同84%増)、医療機器(同100%増)が引き続いて大幅増となり、輸出の最大のけん引力になっている。

各国で在宅勤務が増え、コンピューターの需要が増加した。中国のコンピューター輸出の伸び率は4、5月で前年同月比50%近くになり、6月には鈍化し始めたものの、依然として同16%増を維持している。また中国は、マスクや防護服、コンピューターの世界最大の輸出国であり、この分野でメード・イン・チャイナは、防疫と在宅勤務の世界市場のニーズを最大限満足させている。

米国は対中貿易戦争を継続しているが、中米貿易がこれによって遮断されたわけではなく、中国側は中米貿易交渉の第1段階の合意における各種の約束を厳格に執行している。6月の中国の米国からの輸入は前年同月比で11・3%増、農産品輸入データを見ると同36・1%増だ。米国側がハイテク方面の対中輸出制限を撤廃すれば、中米貿易における輸出入で隔たりが大きい問題もかなり緩和される。

「一帯一路」構想を推進し数年になるが、対欧州連合(EU)貿易と対東南アジア諸国連合(ASEAN)貿易は、日本と米国に置き換わり始めている。EUはかつて中国の最大の貿易パートナーだったが、今年に入ってASEANがその位置に躍進した。ASEANと中国の輸出入総額は6月、555億5000万㌦に上り、上半期では2978億9000万㌦となり、対EUを上回り中国最大の貿易パートナーになった。ここで強調すべきなのは、中国のASEANからの輸入が中高速の伸びを維持し、6月単月だけで前年同月比16・7%増だったことだ。

中国経済の強靭性は貿易の強靭性をもたらし、「一帯一路」などの新たな貿易パイプの先行開拓によりアジア向けの貿易は成熟段階に入った。また、貿易環境の変化が生じた時には、従来通りの安定的な交易も維持している。

 

中国の物品貿易は6月に輸出入双方でプラス転換を実現した。河北省遵化市の輸出加工企業で輸出用の甘栗を加工している従業員(新華社)

 

中国5G企業の優位は不変

新型コロナウイルスによる感染症は、世界各国に生活や仕事のスタイルの巨大な変化をもたらした。オンライン教育やオンライン医療、デリバリーサービスなどでさらに進化の兆しがある。また、第5世代移動通信システム(5G)や人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などが爆発的に進化する段階に入った。米国や日本、英国が中国の通信設備企業・華為技術(ファーウェイ)の排除に全力を挙げているが、中国の5G企業は、「一帯一路」の沿線国はもちろん、今後アフリカや南米でも市場を拡大し、優れた技術力や製品価格の優位性を持ち続けるという点で、大きな変化は起きそうもない。

中国経済が備えている強靭性は貿易の安定をもたらした。コロナが続く間やポスト・コロナ時代に日本企業が中国市場を開拓する際、まず、こうした自然災害や感染症、外部からの政治圧力を受けた時に発揮する中国の強靭性に対して、的確な判断が必要だろう。 

関連文章