国際貿易に新たな理念を 中日はコロナ克服のけん引役に

2021-01-13 15:27:46

陳言=文 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国際経済貿易の状況が深刻化する中の昨年11月15日、アジアと豪州など15カ国が8年にわたる困難な交渉を経て、最終的に地域的な包括的経済連携(RCEP)の合意・調印にこぎ着けた。続く同月20日、ビデオ形式で行われたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、中国は「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的協定(CPTPP)への参加を前向きに検討する」との姿勢を表明した。

筆者は長年、中日経済を研究してきた。ここ数年、日本のメディアは、米国離脱前の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定あるいは米国離脱後のCPTPP(TPP11)により中国をけん制すると強調してきた。RCEPでも日本メディアは、インドが交渉に加わり、中国をけん制する重要な勢力となることを一層期待していた。

中日両国の自由貿易体制における出発点は異なるが、共に製造・貿易大国として多国間貿易体制を守る上で、共通の理念とそれぞれの巨大な利益を有している。両国は自由貿易体制の構築において、イデオロギーの対峙を止め、共通の意識を持ち、力を合わせてアジア太平洋運命共同体を建設しなければならない。

 

RCEP方式で中日FTAを

中日韓3国の中で、中韓はすでに2015年6月に自由貿易協定(FTA)に調印している。だが中日、日韓は、FTA問題を長年協議してきているが、まだ決着は付いていない。RCEPは、日本をその最大の貿易相手国である中国、同第3位の韓国との初のFTA相互協定調印に導いた。ここから見て、RCEPは中日韓について言えば、FTA体制確立と擁護において最終的に足並みをそろえたことを意味し、その意義は大きい。

中国について言えば、中国は05年に東南アジア諸国連合(ASEAN)との間でFTAに調印し、RCEPのオーストラリア、ニュージーランドとも早い段階で相互協定に調印しており、日本とだけが最終的な合意を見ていない。日本のメディアは、TPPの成立意義について解説する際、多くが中国けん制を強調した。またASEANと中日韓の他に、インドやオーストラリア、ニュージーランド、特にインドの加盟によって、RCEPで中国をけん制する役割を発揮すると日本は強調していた。

米国は過去、トランプ大統領が政権樹立直後にTPP交渉からの離脱を宣言し、インドも19年11月にRCEP交渉から離脱を宣言した。日本のメディアが解説によく使う「中国けん制」は思うように実現していない。

中国の一部の学者は次のように認識している。インドが交渉から離脱したので、日本は昨年11月のRCEP協定調印を拒絶する可能性があったが、トランプ政権が退陣し、次のバイデン政権が国際経済貿易提携で前政権と異なる姿勢を示しているのに伴い、もしかしたら日本は新たな判断をせざるを得ないかもしれない。

一方、新型コロナによる影響で欧米経済は大幅に下落し、日本の対欧米輸出は大きなダメージを受けたが、対中貿易は維持できた。インド以外のアジア、特に東アジアは、欧米に比べて感染状況を効果的にコントロールしているため、世界経済をけん引する機関車としての役割はまだ衰えていない。日本も欧米ほど経済の大きな下落を避けるために、アジア主要国との貿易を維持しなければならない。

宙ぶらりんの中日FTAもまさにこうした歴史的な条件の下で、まずRCEPに調印する方法で実現できたといえるだろう。

 

権益保護の立場は様変わり

数年前、日本のメディアでは中国の知的財産権の関連記事をしばしば見掛けた。だが、ここ1、2年はめっきり減り、これに比べ、中国の特許申請件数や科学研究分野の論文発表数が日本を大きく上回っていることを感嘆する記事が多くなっている。中国で製品の研究開発や生産ノウハウなどの面で特許が絶えず増え、中国企業も日本企業と同じように知的財産権の重視を強調し、知的財産権保護のアピールを通じて、自らの権益を守ろうとしている。

環境保護の面では日本が中国の先を行っているので、中国が学ぶべき経験がたくさんある。昨年9月、中国は60年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を差し引きゼロにすること)を目指すと宣言した。これは、今後40年にわたって中国が二酸化炭素の年間排出量を160億㌧から継続的に大幅削減していくことを意味している。中日がカーボンニュートラルを実現する時期は多少ずれているが、その目標は一致しているので、両国は関連事業を完全に連携してやって行ける。

日本のメディアはRCEPを報じる際、ソースコード保護などの国際間のデータストリーム(データの転送方式)問題を強調した。中国のデータ経済の規模は今後数年の間に日本の数倍に拡大する。モバイル決済の普及や情報技術(IT)プラットフォームの構築、インダストリアルインターネットの使用など、いくつかの分野で中国は日本をすでに上回っている。あるいは大幅に上回っている。今後、中国が打ち出すデータストリーム分野での基準やルールはますます多くなるだろう。日本の現在の関連構想は中国企業に受け入れられ、うまく運用され、発展し始めている。

中国側が本格的に知的財産権や環境、データ類の保護に取り組み、関連のルール実施、監督面での解決案を提起する際には、日本側の理解と協力が特に必要とされるだろう。日本側の今日の努力は、こうした協力に向けた最も好ましい下地になるだろう。

 

上海で昨年11月に開かれた中国国際輸入博覧会で、出展製品を自ら説明する三菱電機・中国総代表の富沢克行氏(手前右端)(写真・顧思騏/人民中国)

 

けん引力失った米国、欧州

世界的なルール、組織の多くは欧州あるいは米国の提案によって確立されたものだ。しかし今日、米国は「アメリカファースト」を過度に強調し、すでに新たな環境変化に対応する国際的な理念を失い、欧州は依然として政治的な不安定や経済的な混乱の状態が続いている。アジア、とりわけ東アジアは、世界経済においてリードする役割を発揮し、今後も長期的に維持されるだろう。

東アジアの2大経済大国として、中日両国は世界貿易体制に対して、新たな理念を提起する義務がある。中日両国は、経済利益上の衝突やイデオロギーの食い違いをFTAなどの国際的な経済協力体制の構築を阻害する要因としてはならず、共に発展を追求することで、初めて一時的な対立を解決できる。

「アジア太平洋運命共同体」は、中日がアジアにとどまらず、国際協力を追求する第一歩となるべきだ。その第一歩はすでにRCEPの形で踏み出され、さらにCPTPPへ向かって進み、米州を含む新たなFTA体制の構築でなければならない。これらがもし、中国の「一帯一路」構想と結び付けば、新たな国際経済貿易体制が確立できる。

中日は今年、国際貿易の新たな理念を提起し、一刻も早く世界を新型コロナの暗い影から抜け出させ、新たな発展のチャンスを提供すべきだ。 
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