今こそ対立やめて対話を 経済は両国関係の「安定装置」

2022-07-28 16:36:18

陳言=文

日本では通常国会が閉会し、参議院選挙の日程が公示された。日本のメディアが予想していたように、今月10日に投開票が行われる。言い換えれば、昨年10月に総理大臣となった岸田文雄首相は、この国政選挙に勝利して初めて首相の座が安泰となる。さらに言えば、参院選が終わるまでは、一部の政治家による選挙戦や世論のあおり、経済の落ち込みがもたらす不満やうっぷんなどによって、日本中が「嫌中(中国嫌い)」感情であおられるに違いない。中日関係の「対立」が日本の世論の主旋律になり、その音色は非常に大きく、その他の声はかき消され、「嫌中」の論調だけが独り歩きするかもしれない。 

戦後の中日交流において、特に国交正常化が実現した1972年以前の27年間は非常に多くの困難があったに違いない。筆者は80年代初めに大学を卒業して以来、中日関係の報道や研究などに携わってきたが、苦労を感じたとしても今年前半ほど厳しくはなかったと思う。 

少なくとも筆者が読んでいる日本の新聞や雑誌を見ると、政治家、とりわけ政権与党の政治家は、「日米(軍事)同盟の抑止力、対処能力の強化」「共同で(対中)抑止」が口癖になっているようだ。わずかの歴史知識さえないと、新たな戦争が目前に迫っているような気になる。日本の関連記事を読みあさっても、「対話」の呼び掛けはほとんど見当たらない。 

日本側の報道を見る限り、中日関係は想像以上に緊張しているようだ。 

日本メディアの中日対立 

日本のメディアによると、日本の政治家が国際舞台で繰り返し述べているのは、「東海(東シナ海)、南海(南シナ海)における一方的な現状変更の試みに対する深刻な懸念の表明」である。そのための「自由で開かれたインド太平洋戦略」の推進であり、発展途上国の「債務と貧困」に対する関心である。 

軍事的には「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調する一方で、台湾有事の際には米軍の介入および日本が巻き込まれる可能性を想定。そのためには、日米(軍事)同盟の抑止力と対処能力を強化し、「いかなる選択肢」も排除しないこと、敵基地攻撃能力を検討し、防衛費を今後5年間で倍増することなどを求めている。 

日本などは、発展途上国の「債務」問題を「貧困」問題よりも重視している。日米豪印(クアッド)の4カ国首脳が合意したインド太平洋地域に対する今後5年間のインフラ分野への支援・投資の約500億㌦は、債務国の債務返済に使われるのだろうか。日本の工業生産能力によって飛行機や大砲を生産すれば、当然、世界で最も殺傷力のある兵器になるだろう。敵基地攻撃は敵国と日本本国にどのような影響を及ぼすだろうか。イラクやシリア、アフガニスタンを見ても分かるように、爆破された基地の数は、一般市民の住宅地や工場よりもはるかに少ない。 

日本では消費税率を引き上げるのは大変で、政治的影響がかなり大きいが、防衛予算を今後5年間で倍増するということは、消費税率の2㌽引き上げに等しく、財政的にそれほど簡単なことなのだろうか。 

筆者は日本の政治家の心中にある答えを想像することができる。彼らが語る自由と開放は中国とは無関係であり、中国を孤立させるための一つの言い方である。また、軍事的には中国との対立に備えることが、一部の政治家にとって既定方針であり、求める結果はただ一つ、中国との「対立」持続である。 

中国語でよく使われる表現を借りると、経済は中日関係の「重し、安定装置」である。だが、5月11日の参院本会議で「経済安全保障推進法」が可決・成立し、経済分野で中日両国は徐々にデカップリング(切り離し)が始まった。 

さらに日本メディアの報道を見ると、経済安保はハイテクのほとんどの分野で交流の余地を残さず、事実上、中国との往来を全面的に禁止している。来年2月に同法が施行されると、ローテクや旧式の製品にしか中国に投資できなくなる。 

研究開発のスピードや商品の生産能力、新製品の販売チャンネルなどの面で中国は日本の後れを取っておらず、一部の分野では日本を上回っている。こうした状況の上に、円安が大きな流れになりつつある中、日本の製品や資本の魅力を中国で維持できるだろうか。筆者は、高い確率で日本の影響力は大きく低下すると見ている。 

日本が経済安保によって「安定装置」を外すと、中日関係はどうなるのか。日本の工業生産能力や新製品・新技術の開発スピードは、これによってさらに輝きを増すのか否か。経済安保による厳重な封鎖によって、中国は日本からの技術を失い、経済や科学研究・開発で後退現象が起き始めるのか否か。筆者は現時点では予断をもって答えることはできないが、非常に懸念しているのは、経済上の「対立」は政治的な理由で中日経済関係のデカップリングを迫ることであり、その結果、長期的に中日経済の往来に影響を及ぼし、中日関係を弱体化させるだろう。 

早急に対話ルート開拓を 

日本のメディアの多くの文章から、日本の一部の政治家とメディア関係者は中国に恨みを持っているのではないかとさえ感じることがある。こうした人たちは、軍事的な手段によって問題を解決しようと、積極的に法律を改正し、防衛費の絶え間ない増額を呼び掛けている。中国を理解していない読者が、そのような文章を読んだり、政治家が毎日のように繰り返す「共同抑止」などの言葉を聞いたりすると、痛快に感じ、こうした政治家やメディア関係者の日本に対する愛国・憂国の情が紙上で躍っていると感じるだろう。 

新型コロナでの制限を考えずに、参院選前に日本の政治家を中国に来させるというのは、極めて非現実的な提案だ。日本のメディアは中国に取材拠点を置き、経済界は中国と意思疎通のチャンネルを開いている。日本で中日の相互理解を語ることができなくても、中日の対話や交流を主張する可能性は少なからずある。今の日本のメディアに、そのような呼び掛けを掲載することができるだろうか。 

「対立」ではなく「対話」を――今の中日関係において、これまで以上にその重要性が増している。 

  

北京では初めてとなるユニクロのグローバル旗艦店が昨年11月6日、若者が多く集まる三里屯にオープンした。旗艦店としては中国大陸部で3店目(vcg) 

 

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