ASEAN貿易で南寧成長 深圳・上海(浦東)超える優位性

2022-11-24 20:58:20

陳言=文

これまで40年の間、筆者は何度も広西チワン(壮)族自治区の桂林を訪れている。だが、自治区の首府である南寧は1983年に一度訪問したにすぎず、印象に残っているのは街を貫くくらいで、他はほとんど記憶に残っていない。その南寧に今年9月、第19回中国・ASEAN博覧会の取材で2度目の訪問を果たした。 

都市の発達と地理上の位置は極めて緊密なつながりがある。83年に広東省市を訪れた際、広大な土地に、建設間もない高層ビルが林立し、これは香港に隣接しているからだと感じた。しかし、深圳の発展と成功は、都市の見かけが香港に似ているからではなく、当時の香港が中国大陸部最大の貿易相手であり、その貿易に参与できたから深圳は発展のチャンスとスピード感を持ち得たのだ。 

2000年頃に上海を訪れたとき、浦東地区の開発はまだ始まったばかりで、当地は進取の気性にあふれていると感じた。中国の貿易、特に米国・日本との貿易において上海が果たす役割から見ると、浦東台頭の外部環境が経済の急速な発展に大きな支えとなっていたことが理解できる。 

今回、南寧を流れる邕江の河岸に立ち、筆者はかつて深圳・上海で味わった感覚がよみがえるのを感じた。東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国の最大の貿易パートナーになっている現在、地理的に近い南寧は新たな発展のチャンスに満ちているに違いない。 

  

物流団地で貿易を後押し 

新型コロナがまん延する前まで、中国観光にやってくる日本人の多くが桂林を訪れた。しかし、南寧に足を伸ばす人は決して多くなかった。 

同市で今年9月に開かれた中国・ASEAN博覧会で、参加した日本企業の代表団は、同市側から8人の日本人が南寧で働いていると聞いた。その中の一人は研究・開発(R&D)に従事する研究者で、最大で1億円の研究費が支給されているという。人数は少ないが、日本人研究者のR&D費用は潤沢――という話は代表団には意外だった。 

日本と違って、ASEAN諸国から南寧など広西内に進出している企業はかなり多い。中新南寧国際物流パークは、中国・シンガポールの物流分野の専門団地だ。シンガポールの物流技術、管理方式がほぼ全面的に再現され、中国と全ASEANに物流サービスを提供している。南寧の発展にはシンガポールなどの強力な支援があり、蘇州シンガポール工業パークとは業務内容が大きく異なる新たな工業パークが日増しに繁栄を築きつつある。 

南寧市の中国・ASEAN経済貿易センターでは、中国とASEANの貿易に関連する全ての行政サービスの内容を網羅している。ここに行けば、どのような貿易をしていてもすぐに関連する政府の担当窓口が見つかり、関連手続きや業務の相談などに非常に便利だ。ASEANとの貿易では、中国国内で南寧を超えるところは恐らくないだろう。中国・ASEAN貿易を大きくする、こうした行政サービスの効率の良さも称賛に値する。 

文化的な多様性、ASEAN諸国との類似性も南寧の一つの持ち味だ。ここのチワン族は言語的にベトナムに近く、双方とも通訳なしでもやり取りを理解できることが多い。同自治区の11の少数民族には、その多くがASEAN諸国に近い、あるいは似ている文化的な特徴を見つけることができる。これは当地の発展とASEANとの貿易にとって、とりわけ恵まれた地理的な優位性だ。 

ただ、日本企業はまだ広西の新たな特長に気が付いていないようだ。日本は過去三、四十年の間、東南アジア各国に多額の投資を行い、各国とさまざまな形で密接な経済関係を構築してきた。だが広西にはほとんど触手を伸ばしていないようで、また広西を通して自らの東南アジアにおける中国との関わりを強化しようと考えていなかった。 

  

今年9月に広西・南寧市で開かれた第19回中国・ASEAN博覧会で、民族ダンスを披露するインドネシアのダンサー(vcg) 

  

平陸運河完成で取引増大へ 

今年8月28日、南寧から北部湾に至る平陸運河の開削工事が始まった。工期は4年半で、26年には全長135㌔、排水量5000㌧級の船舶が通航が可能な運河が正式に開通する。 

広西域内には多くの河川が密集しているが、北部湾に直結する大河は一つもない。かつて水運と言えば、珠江を経て最後は広東の港からASEAN諸国に貨物を海上輸送していた。将来、平陸運河が開通すれば、貨物をベトナムまで水路で輸送でき、少なくとも1週間は時間を短縮できる。 

平陸運河の建設は、広西とASEANの関係を大きく近づける。5000㌧前後の船舶もASEAN主要国の港への入港が容易になり、貨物輸送に適している。農産品、工業製品の中国・ASEAN間の取引も大幅に増加するだろう。この運河の開削により、広西とASEANとの間の貿易の拡大を想像する余地が広がった。 

  

ASEANはRCEP重視 

筆者は南寧滞在中、この中国・ASEAN博の開幕式に出席した。 

商務部(省相当)の今年6月の発表によると、昨年の中国の貿易相手のトップ5は、ASEAN(輸出入総額5兆7000億元)、欧州連合(EU、同5兆4000億元)、米国(同4兆9000億元)、日本(同2兆4000億元)、韓国(同2兆3000億元)だった。国際通貨基金(IMF)の統計によると、ASEANの昨年の国内総生産(GDP)は3兆4000億㌦で、日本の4兆9300億㌦には及ばないが、中国最大の貿易相手となったことは、双方が互いの域内にとどまらず、欧米日の市場開拓において多くの協力をしていることが読み取れる。 

同会の開幕式での各国首脳の発言から、ASEAN諸国の大部分にとって最大の貿易パートナーは中国であり、さらに中国もASEAN諸国への主要な投資国であり、同時にASEAN諸国も中国に投資しており、こうした双方向の投資、貿易に特色がある。 

各国とも今年発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定を非常に重視している。中日韓は東アジアで独立した経済貿易体制を構築していないが、最終的にはRCEPの枠組みの中で自由貿易協定(FTA)を実現した。日本が主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)について日本のメディアは、中国をけん制し、中国の経済的な影響力を排除するものと説明しているが、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)には関税について重要な言及がない。 

RCEPがあれば、広西の発展の新たなチャンスが生まれ、ここを中国経済発展の新たな要所にすることができる。邕江のほとりに立ち、40年近く前に深圳の沖合から眺めた香港や、20年余り前に上海の浦西地区から見たほとんど明かりのない対岸の浦東の光景を思い出すと、今日の南寧の出発点は深圳や香港よりもはるかに高く、この要所は本当に侮れないと感じた。 

 

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