一流の品質と製品で世界へ ドローン市場のトップ走る

2019-07-23 14:01:42

 

ワンさんと彼のチームが研究開発したDJIのドローン(新華社)

「この世界は愚かだ」。講演でこのような言葉を口にした汪滔(フランクワン)さんに対し、人々は若者特有の傲慢さを覚えただろう。しかし、この若者が創設した会社こそ、現在世界の消費者用小型無人飛行機(ドローン)マーケットシェアの7割を占め、業界をリードする大疆創新科技有限公司(DJI)だ。こうして見ると、ワンさんは確かに人に自慢できる資本と自信を持っている。

今年4月、DJIは新たな融資計画の規模を10とし、企業の総合的な評価額が150になった。一般的なベンチャー企業のマッチングによる融資と異なり、DJIは入札によって融資を受ける。今回の入札で、DJIは計100社近くの機関投資家から保証金と入札申請を受け取り、申し込み金額が本来の予定の30倍を超えた。これは業界がDJIの発展のビジョンを前向きに評価していることを十分に証明している。

平凡学生が世界一の企業を

ワンさんは従来の意味での勉強家や頭が良い人などではない。彼はスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学に出願したが、決して優秀とはいえない中の上程度の成績だったため、なかなか受からなかった。そこで仕方なく香港科技大学の電子工学科に入学した。学部生を卒業するまで彼の成績は平凡極まりなく、卒業研究はぎりぎりのC評価だった。

C評価が付けられたヘリコプターの飛行管制システムに関する研究はワンさんの子ども時代の夢に由来する。雑誌『中国企業家』の記事によると、ワンさんが幼いころに読んだ『動脳筋爺爺(頭を働かせるおじいさん)』という漫画に赤いヘリコプターが出てきた。当時10歳にも満たないワンさんはそれに引かれ、自分で同じようなヘリコプターを造り、それに乗って旅行したいと考えた。

16歳のとき、ワンさんは父親からご褒美にラジコンヘリをもらった。喜んだワンさんはすぐに遊び始めたが、ヘリコプターの操縦が想像以上に難しかったため、空を飛んだと思ったらすぐに落ちてしまった。大学に入ってからも数え切れない飛行機の模型を落として壊したワンさんの胸には「ヘリコプターを自動操縦するシステムを作り上げる」という思いが芽生えた。

2006年、ワンさんはABUアジア太平洋ロボットコンテストに入賞した飛行管制システムを携え、深圳にある20平方に満たない倉庫で「飛行管制システムの商業化」を始めた。

約1年間、ワンさんは彼のチームと共に倉庫に「缶詰め」になって飛行管制システムの研究に取り組んだ。「当時DJIにはビジネスモデルが存在せず、ただ製品を作り、それを国内外の飛行機模型の愛好者が集まるBBSで売っただけです」とワンさんは振り返る。

DJI初期のマーケティングは飛行機模型の部品を研究開発して製造し、それを組み立てた完成品を売ることだった。DJIを世界へ羽ばたかせ、業績を格段にレベルアップさせたのは消費者用ドローン市場に対して下したワンさんの選択だ。これにより、DJIのユーザーは飛行機模型の愛好者から一般的な消費者に拡大した。13年、DJIが「ファントム」という消費者用ドローンを発売し、即座にアップグレード版も売り出すと、販売業績がすさまじい勢いで増加した。10年、DJIの販売業績は数百万元だったが、14年には30億元近くになり、17年には180億元に達した。

 

CEOを辞めCTOのみ務めるワンさんは研究開発に余念がなく、この日もスタッフとドローンの次世代機の性能を確認した(新華社)

 

目指すものは常に一流

技術畑出身のワンさんは完璧な品質の製品に非常にこだわっており、この点において彼はアップルのスティーブジョブスと似ている。DJIの成功の秘訣を尋ねられるたびに彼は次のように答えた。「どれだけ製品を作っても、二流品を永遠に作らないことです。世界の二流、三流品を生産して安い価格で勝とうとは最初から考えていません。価格が安いことは、つまりその企業に能力がなく、良い物を生産できないということです」

DJIは消費者用ドローンの先駆者ではなかった。10年、フランスのパロット社が「エイアール ドローン」という消費者用ドローンを発売した。しかし、画素数の低さと娯楽要素が強すぎる機能が空中写真に対する市場の期待に応えられなかった。「ファントム」が生まれ、人々は一般人もドローンを操縦して高解像度の空中写真を撮れることに初めて気付いた。1411月、DJIが発表した「インスパイア1」という無人自動空撮ドローンは、変形操作という概念を導入し、ユーザーが遮るものがない360度パノラマの空中写真を撮ることを実現した。これは「ファントム」に続き、会社の製品研究開発が再び収めた大成功だった。今年には、レンズを取り替えられる「ファントム5」とプロカメラマン向けの「ローニン2」がまもなく発売され、DJIの技術革新は止まらず、引き続きこの業界をリードしていく。

15年、インタビューでワンさんは次のように述べた。「宮崎駿監督の映画はどの国で上映されても、観客に『良い映画だ』と言ってもらえます。アップルのスマートフォンは人々の心をつかんだロングセラー製品です。しかし、私たち(中国)はそういうものを出せていません。私はこのような日々を大変悔しく思います。私は科学技術業界の人間である以上、自分が得意なことをして、全世界の消費者から本当に愛される製品を生み出したいです。現状を見ると、われわれはよくやったと思えます」

 

「ファントム4」(東方IC

金もうけより理想を優先

消費者用ドローンの分野で大成功を収めたワンさんとDJIの次の目標は工業用ドローンだ。この新たな市場で、彼らはさらに激しい競争に直面する。工業用製品の規格は消費者用よりはるかに複雑であるため、より優れたデザインと性能が必要だ。製品はさまざまな環境の中での防水防塵機能、高温低温耐性、反磁性などの特性を備え、しかも具体的な使い方に基づきカスタマイズしなければならない。しかし、ワンさんと彼のチームが最も得意とすることは難問を見つけ、それに挑むことだ。

製品の研究開発にさらに集中するため、昨年にワンさんは最高経営責任者(CEO)の職を辞し、会社の最高技術責任者(CTO)のみ務めるようになった。最も素晴らしい技術と製品を完成させることは、どんな時でも収益を出し、有名になることよりも重要であると彼は思っている。DJIを創設した目的が名誉や利益のためでなければ何かと聞かれたとき、彼は次のように答えた。「ただ思う存分に遊びたいだけです。みんなが衣食に困らない状況でも有名になってお金をもうけることを第一に考える人はわれわれが欲しい人材ではありません。われわれが欲しいのは、大きな理想を持つ人材です」(高原=文)

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