清掃活動で地域を美化 「横丁の管理人」で貢献

2020-07-14 14:44:32

65歳の耿永瑞さんは、北京北重蒸気タービン発電機会社を定年退職した運転手だ。若い頃は大型トレーラーを運転し、その後20年余りは乗用車を運転していた。何事に対しても真面目で注意深いため、仕事を始めてから定年退職まで交通事故を起こしたことはない。耿さんは、これは人生で最も誇りにできることだと思っている。

定年退職後、耿さんは住んでいる石景山区魯谷地区で「横丁の管理人」を務めている。ボランティアのサービスという形でコミュニティーの環境整備に参加し、これが新たな生活の軸となっている。「私は小さい頃から石景山地区で暮らしています。自分の努力によって、みんなが外に出て周囲を見渡した時、石景山はとてもきれいで、清潔であると感じてくれ、誰もが心地よく過ごせる環境になればいいと思っています」と耿さんは語る。

 

仲間と春節期間中の防火対策について話し合う耿さん(左) 

 

穏やか真面目な耿おじさん

「横丁の管理人」の一人として、耿さんは毎朝8時半ちょうどに自分の受け持ち地域に到着する。その後、スマートフォンを取り出し、「横丁の管理人」ボランティアのシステムにログイン。通りにある銀行を背景に自撮りをして、その写真をアップロードする。これが「タイムカード」代わりだ。

午前中の3時間半の巡視では、横丁の衛生状態に注意し、ごみがあればすぐに拾う。また、道路に面した店舗にルール違反の広告が貼られていないか、ガラクタや車が道路を占拠していないか――といった状況もチェックする。乱雑に乗り捨てられたシェア自転車を見つければ、会社ごとに指定された置き場所へと運び整理する。

その他、路面の陥没やマンホールのふたが盗まれた所がないか、風で折れた枝や電線がないかをチェックする。受け持ち地域の環境美化を妨げるもの、住民生活に不便になること全てに気を配る。落ちているごみを拾うなど、自分で解決できることはその場で解決する。それだけでなく、耿さんは自分の電動自転車の後ろにごみ袋をくくりつけ、お手製のごみ拾い用のハサミで、ごみを見つけたらすぐに拾う。「環境衛生作業員は道路の清掃が中心で、完全にきれいにするわけでもないので、われわれが隅々まで注意を払って、きれいにするよう心掛けています」。時には店舗から出された大きな家具などの粗大ごみが、清掃車に回収されないことがある。その時には、耿さんが手伝って家具などを分解し、ごみ回収車が持って行けるようにする。

通り沿いの店舗にルール違反の広告が貼られたり、道にガラクタが捨てられているような問題があると、耿さんはまず写真を撮って問題を記録する。次に、それをサイトにアップし、その後は店の人と粘り強く話し合い、改めるように勧める。さらに自分が処理した後の現場写真を再びアップし、記録する。覚えている限りでは、最も多い時には一日で70件余りの記録をアップしたこともある。町会事務所のスタッフは、「耿おじさんはとても良い人で、店側と交渉している時もとても穏やかですが、相手がきちんとルールを守るまで決して手をゆるめません。誰でも年配の人にたびたび足を運ばせるのは、申し訳ないと思いますしね」と語る。

魯谷地区の「横丁の管理人」ボランティアには、耿さんのような現業部門の定年退職者が多い。地域内で起きたもめごとや問題を処理する際には、彼らはしばしば最も効果的な解決方法を探し出してくれる。

住民の環境意識向上に苦心

「横丁の管理人」は、北京市石景山区の第一線の革新的な実践プロジェクトだ。耿さんの所属する魯谷地区には、700人余りの「横丁の管理人」登録ボランティアがいて、日常的な巡視の仕事には100人余りが参加している。彼らは微信(ウイーチャット、中国版LINE)でグループを作っている。毎週木曜日の朝9時、町会事務所のスタッフが、翌週に必要とされる持ち場をそのグループに向けて発表するので、皆自分の都合に合わせて申し込む。

誰も参加意欲がとても高く、毎日十数カ所の持ち場では、なかなかボランティア全員の希望を満たせない。そのため、朝9時にならないうちにグループ内で申し込む人がいると、他の人もそれに続いて続々と申し込む。町会事務所のスタッフにしてみればぜいたくな悩みだ。

耿さんによると、現在のボランティアの中には定年退職者が多くいる。他にも、子連れで参加する30過ぎの若い人も多い。いつだったか、ある店の入り口に机を出して、「横丁の管理人」ボランティアを募集していたら、一人の若者が、「普段は働いているので暇がないけど、週末に活動に加わることはできるのか」と聞いてきた。耿さんはもちろん大丈夫だと答えた。その若者は、彼の子どもがちょうど「一日ボランティアになる」という課題文を勉強したばかりで、自分でも体験してみたいと思った――ということだった。耿さんは、子どもと一緒に受け持ち地域を巡視するのが大好きで、「これはボランティア精神のリレーだよ」と語る。

「以前、このあたりの多くの住民はあまり清潔を重んじなかった。民度を上げて良い生活習慣を育てるには、小さい頃から始めるしか方法はなく、2、3世代かけなければ無理かもしれない――とわれわれは話していました。でも今のところ、みんなの改善ぶりはとても速く、ごみを投げ捨てるような現象は少なくなっています。これはボランティア制度を始めてから、環境保護の意識が高まったからに違いありません」

「清潔な横丁」こそ生きがい

町内に住む普通の住民として、耿さんのような「横丁の管理人」ができることは、実際にはかなり限られている。だが、幸いにも彼らのボランティアサービスのシステム、役所、関係する地域の管理部門という三つのネットワークは一体化しているため、普段自分たちでは解決できない問題でも、上に報告すれば役所の担当部署に直接送られて、そこで解決が図られる。

例えば、ある時、ATMを撤去した際に路肩に10ほどの高さの土台が残り、よくこれにつまずく通行人がいることに耿さんは気付いた。早速この問題を報告すると、この土台は関係部門によってすぐ取り除かれた。付近の住民は耿さんにとても感謝し、耿さんもとてもやりがいを感じた。今では住民たちは、「近所のレストランの油煙が家の中に入り込んで来る」とか、「町内でビラを配る人がまた現れた」などと、何かあれば耿さんに苦情を訴えるのが習慣となっている。耿さんは、その一つ一つを真剣に聞いて記録を取り、その後に自分で処理するか、上に報告するか決める。

「私は特に『横丁の管理人』という仕組みが、残る人生の情熱をささげるチャンスを与えてくれたことに感謝しています。もしこれがなかったら、他の高齢者と同じように子どもを連れて散歩したり、将棋やトランプをしたり、おしゃべりをしたりして過ごしていたでしょう。この仕組みがあるから、私は社会にちょっとした貢献をし続けることができ、自分自身にもとても満足感があります」と耿さんはすがすがしく語った。

春節後、新型コロナウイルスの影響により、耿さんは政府の呼び掛けを受けて、ずっと家にこもっている。だが、心の中ではずっと自分の受け持ち地域が清潔にきちんとなっているか、商店がいつ経営を再開できるかと心配している。同時に、一日でも早く「横丁の管理人」の持ち場に戻れるよう心待ちにしている。(高原=文  王丹丹=写真

 

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