中日韓漫画の新星そろう第2回「悟空杯」結果発表

2019-08-26 16:37:54

王焱=

中国外文出版発行事業局(以下、中国外文局)が主催した第2回「悟空杯」中国国際漫画コンテスト(以下、悟空杯)の授賞式が7月2日、北京市内で行われた。中国・日本・韓国漫画界の関係者、受賞者など、計100人余りが出席した。今大会には、中国・日本・韓国の3カ国から計1000作品以上の応募があり、当日15の受賞作品が発表された。最優秀賞の「悟空賞」には程瀟冰さんの『閩越謠』、最優秀ストーリー漫画賞には日本人の古賀信平さんと中国人の李寅さんによる創作集団「桜月」の『イレブン・ハーツ』、さらに最優秀漫画イラスト賞には、日本人の金丸愛実さんの「極道LOLITA」が選ばれた。韓国からも2作品が入賞した。

 

大会を強力にサポートしてくれた松谷孝征社長と受賞者たち。松谷社長は受賞作品が出版されてほしいとコメントした(写真・楊振生/人民中国)


漫画の力で交流を促進

 「全ての交流の最大の原動力は民間交流です。漫画は日中韓3カ国交流の最も良い方法の一つ」。授賞式のゲストで日中韓三国協力事務局の山本恭司事務次長はこう語った。漫画文化は、今の中日韓3カ国の若者に非常に人気が高く、多くの作品が言葉や文化の壁を超え、時差なく各国の若者たちに愛されている。「悟空杯」参加者の多くは、好きな絵をまねて描くことから始め、次第に漫画家の道に足を踏み入れて行った。「悟空杯」は、漫画創作の奨励を通して、各国の青年漫画クリエイター間の友好交流と異文化への理解を促進している。また同時に、若い漫画家とアニメ・漫画関連企業とをつなぎ、国際舞台で活躍する機会を提供し、より大きな成長の場をもたらすことを目的としている。本大会は2016年に初開催され、中国と日本から合計600作品余りの応募があり、前回の「悟空賞」受賞者だった左手韓さんをはじめとして多くの応募者が、その後プロの漫画家の道を踏み出した。今回の選考方法は下記の通り。まず、応募作品は組織委員会によって約60作品に絞られ、その後審査員が採点し、ノミネート作品を選出する。最後に「悟空杯」事務局が最終受賞作品を決定する。

 授賞式のゲストとして招かれ、審査員を務めた日本デジタルマンガ協会の山田ゴロ事務局長は、「大会を通じて、中国の多くの応募作品が日本に劣らないことが分かった。今後はさらに新世代の漫画家を発掘していきたい」と話した。また、応募作品について「絵の技術はすでに高くなっているので、これからはストーリー性をさらに磨いてほしい」とアドバイスした。

 滋慶文化学園福岡デザイン&テクノロジー専門学校教務部の斉藤茂主任は、初めて中国を訪れたと言う。斉藤主任は「福岡に戻ったら、中国の漫画は今は驚くほど発展していると学生たちに伝えたい。今後も交流を深め、日本だけでなく、中国の漫画関係の人材も育成していきたい」と期待した。

 

最優秀ストーリー漫画賞受賞者の古賀信平さんに賞状を授与する日本大使館の伊藤直人参事官(左)(写真・楊振生/人民中国)

 

「悟空賞」受賞者の程瀟冰さんに賞状を授与する中国外文局の方正輝副局長。方副局長は、中日韓3カ国で「悟空杯」を展開するという、人々の心に深く入り込み、青年の間に深く入り込み、草の根に深く入り込む民間交流には非常に意義がある、と述べた(写真・楊振生/人民中国)

 

応募作に成長を実感

 アニメ映画のような画風で、福建省の伝統文化を独特なスタイルで表現した『閩越謠』は、最優秀賞となる「悟空賞」を受賞した。作者の程瀟冰さんは今年、山東工芸美術学院を卒業したばかり。「受賞できただけでなく、ふるさとの伝統文化を多くの人に知ってもらうことができ、とてもうれしく思います」と顔をほころばせた。

 最優秀ストーリー漫画賞を受賞した『イレブン・ハーツ』は、女子高校生たちがサッカーで夢を追う物語が描かれている。受賞者である創作集団・桜月の代表者古賀信平さんは「受賞させていただき、とても感激しております。今後も魅力的な作品を制作できるように、チーム一丸となって頑張ります」と誓った。

 「極道LOLITA」の作者金丸愛実氏は、「『悟空杯』を通して中国のウェブ漫画は全体的に色鮮やかであることを知り、そこからインスピレーションを得ました」と語った。

 中日友好事業に貢献した手塚治虫氏を記念するため、今回「悟空杯・手塚治虫生誕90周年記念賞」が特別に設けられた。株式会社手塚プロダクションの松谷孝征社長は受賞作品『黒白の世界』の作者・黄明宇さんに、手塚治虫氏の代表作である『火の鳥』をイメージした掛け軸を贈った。実は、黄明宇さんは第1回「悟空杯」にも短編漫画『九傑のストロー』を寄稿し、ノミネート作品に選ばれた。今作はせりふを一切使わず、絵だけで少年が音楽の夢を追う物語を描いた。黄さんは「この賞は私にはとても意義深い。作品を通して、より多くの若者に漫画の魅力を感じてもらいたいです」と願いを語った。

 残念ながら受賞を逃した作品にも、優秀なものが数多くあった。日本からの応募作品『B0NDS』は最優秀ストーリー漫画賞の有力候補の一つだった。孫悟空と三蔵法師の師弟関係という伝統的な題材を扱っているが、孫悟空の頭の輪「緊箍児」に新たな設定を追加し、師弟愛をクリエイティブに描いた秀作だった。最後は『イレブン・ハーツ』に敗れ惜しくも受賞を逃したが、作者のZENZO氏は、1000編以上の応募作品の中から、最後まで競い合うことができたことを喜び、「私の作品は力及ばず受賞できませんでしたが、日本から、中国から、応援の言葉をたくさんいただき、本当にありがとうございました!」とツイッターで感謝している。

 

関連文章