孔鉉佑大使が語る中国関連問題

2020-12-15 16:46:34

中華人民共和国駐日本国大使館=文・写真提供

師走を迎え、2020年も終わりに近づいている。今年を振り返ってみると、新型コロナウイルスの感染拡大が全世界にかつてない挑戦を強いたことをはじめ、米国大統領選、日本の首相交代、国際情勢の激動などがあった一年だった。世界は百年来の大変動に直面している。そんな中、孔鉉佑駐日中国大使は中日関係や中国の発展など、日本の各界で高い関心を呼んでいる問題に関する見解を大使館のウェブサイトで発表、次いでBSフジの「プライムニュース」への出演や朝日新聞の独占取材に応じ、詳細な説明を行った。

 

朝日新聞の取材を受ける孔鉉佑大使

 

親仁善隣

1972年の国交正常化以降、両国関係は何度か風雨も経験したが、全体的に平和、友好、協力の大きな方向へ絶えず発展しており、両国民に実際の利益をもたらし、アジアひいては世界の平和、安定と発展にも貢献した。孔鉉佑大使は1980年代から90年代にかけて、21世紀初頭、昨年〜現在と、4度にわたって日本に駐在している。この30年余りの間、中日間にも世界にも大きな変化が見られた。この劇的な変化の中で中日関係が低迷する時期もあったが、両国関係はすでに正しい軌道に戻り、改善と発展のための重要な時期に入ったと、孔大使は以下のように指摘している。

「中日交流協力の規模は過去最大級にあり、一段の質的向上・グレードアップのよい基礎も備わっている。昨年までに、両国の人の往来は国交正常化当初の1000倍余りに、二国間貿易額は300倍余りに増えた。今年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けたが、中日貿易額は6月に持ち直し、日本の対中輸出は7月からプラスに転じた」

新型コロナ流行で停滞する中日間の人的交流の回復時期について、孔大使は「現在、中国では約3万社の日本企業が操業しており、昨年ビジネス関係で訪日した中国人は延べ40万人弱であった。それ以外に、短期のビジネス往来の需要も少なくない。双方の主要任務は各自の感染症対策に取り組みながら、共同予防、制御を強化し、科学的な措置を講じて出入国問題を適切に処理し、二国間の人的往来を漸進的に再開させることだ」と見解を述べた。

孔大使は「新型コロナウイルス感染症で、中日双方の今年の二国間往来の予定が狂った」とその影響の大きさについて言及、「新型コロナウイルスの流行は、中日双方の既定の二国間往来の予定を乱した。両国の人の往来と経済・貿易協力も大きな影響を受け、すでに深く結合していた産業チェーンと供給チェーンが打撃を受けた。しかし私はいまの困難は一時的なものに過ぎず、市場駆動型で形成された両国の互恵協力の枠組みに変化は生じておらず、両国経済には依然として強い補完性があると考えている」と述べた。さらに「双方は引き続き感染対策の情報と経験を共有し、共同予防・制御を強化し、WHOを中心とするグローバルな公衆衛生ガバナンスを引き続き支援すべきだ。これと同時に、二国間の人の往来を漸進的に再開し、ポストコロナ期の経済情勢とデジタル経済台頭の時代背景に着目して、中日の経済貿易協力の質的向上と高度化を図るべきだ」と復活へのシナリオに言及。BSフジの「プライムニュース」に出演した際には最後に中日関係について「親仁善隣」という言葉を記すことで、隣国との友好関係の発展は国家にとって貴重な宝物であり、中日両国が近隣国として「親仁善隣」の精神にのっとり、両国関係の継続的な改善と発展を促進することへの期待を示した。

孔大使の独占インタビューに際し、多くの日本人の方々がメールと手紙を送って中日関係への関心および中日友好への期待を示した。ある人は「親仁善隣」について、「大使の中日関係などに関する考え方と私の理解は同じで、特に『親仁善隣』の精神に基づき、両国関係の改善と発展を図るべきとの提言に私は深く賛同する」と喜びの声を送り、「日本では中国に対するバイアスのかかったメディア報道が、国民の対中感情に多大な影響を与えている。かつて日中経済協力に関わった一人として、こういった現状を目の当たりにし、心を痛めている。これからも、大使の中日関係などの諸課題に関する見方と見解を聞くチャンスがあればと思い、また、両国民の相互理解と日中友好を増進するため、自分なりの貢献をしたい」と自らの思いを記した。孔大使はこの熱意ある一般市民からの声に対し、「誠意を込めて、胸襟を開きながら、進んで日本の皆さんと触れ合うのはわれわれの願いであり、今後とも『親仁善隣』を導きにし、日本各界の皆さんと共に、『世々代々の友好』という宝物までたどり着くため、力を惜しまない覚悟である」と返信した。

 

BSフジの「プライムニュース」の最後に「私の提言」を求められた孔大使は、中日関係を表す言葉として「親仁善隣」と記した

 

侵略・拡張は中国の選択肢ではない

10月末に行われた中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議では、第14次五カ年計画と2035年までの中国の長期発展目標の策定に関する党中央の提議が審議、採択された。中国は小康社会の全面的完成ののちに、社会主義の現代化国家という新たな構築に臨むこととなった。中国は強大になることで、対外的拡張を行うのだろうかという疑問について、孔大使は以下のように回答している。「歴史的に見ると、中華民族の『和を以て貴しとなす』精神は今日まで受け継がれており、近現代に中国人民は長い間戦乱の苦しみをなめ、平和が得難いことをよく知っている。新中国成立後70年間、中国は終始変わらず平和的発展の道を歩み、互恵・ウインウインの開放戦略を取り、新しい型の国際関係づくりのためにたゆまず力を尽くし、人類運命共同体の構築を推進してきた」。さらに「中国の軍事力整備は従来から『中国脅威論』の主要な内容だが、私は日本社会がこの問題も中国の国情や政策実践と合わせて見るよう希望している」と、日本で長年言われてきた「中国脅威論」にも触れ、「軍事力整備の目的は対外拡張を進め、覇権を争うことではなく、自身の国家安全保障と発展の利益を守り、『二つの百年』の奮闘目標の実現を保証することである。中国の指導者は国際的な場で、共同安全保障、総合安全保障、協力による安全保障、持続可能な安全保障という安全保障観を何度も提唱しているが、その核心思想はゼロサムの冷戦思考を克服し、同盟を結び対決によって安全保障を求める排他的安全保障政策を捨て、地域の普遍的安全保障を実現することである」と語った。

この話題の際、「プライムニュース」のキャスターと朝日新聞の記者はいずれも釣魚島の問題に触れているが、孔大使は「釣魚島問題における中国の立場は一貫して明確なもので、日本側はそれをよく知っている。双方は互いに立場が異なるという現実を直視し、両国関係の長期的な発展を考慮した上、関連問題を善処すべきである」と強調した。中日国交正常化以降、中日両国は釣魚島問題について何度も意思疎通を行い、多くの共通認識を得ている。最も重要なのは、双方とも大局的見地から矛盾や相違をとらえ、それに対処することで状況の悪化を防ぎ、両国関係が正しい軌道から逸脱するのを防ぐことで、これは双方共通の課題であり目標となっている。釣魚島問題に関して、中国側が事態をエスカレートさせていると見る日本人も数少なくないが、孔大使は「全くの誤解である」とし、「釣魚島の事態をエスカレートさせることは中国にとってメリットはない。同時に、釣魚島に対する主権的立場に基づき、われわれは主権を守るためのしかるべき措置を取る権利がある。中日関係を改善、発展の方向に持っていくのはわれわれの一貫した立場である。当面、重要なのは違いを適切にマネジメントすることである。このために、双方が政治的知恵を絞る必要がある。両国国民からの理解と支持も欠かせない」とコメントした。

 

孔大使は、両国の友好を願う日本の一般市民のメッセージに返信した

 

香港に関わる問題、新疆に関わる問題について

香港と新疆も注目される問題であり、日本の一般市民の中国に対する見方に一定の影響を与えている。これらの問題について孔大使は「香港に関連する問題を見るときは二つの基本的ポイントを押さえておく必要がある。第一は、香港特別行政区は中国の一部で、香港事務は中国の内政に属する。第二は、国家安全に関する事項は中央政府の権限に属しており、これは世界各国の慣行であって、中国も例外ではない」と指摘。「『香港国家安全維持法』が処罰する対象は国家を分裂させ、『一国二制度』に公然と挑戦するごく少数の反中香港かく乱分子で、規律と法規を順守する大多数の香港市民および香港在住の外国人について言えば、その合法的権利と自由は一層よく保護されることには何の疑いもない。『香港国安法』は香港特区の永久住民以外の者が特区以外で行う関連犯罪にも適用されるが、これは普遍的な世界的実践であって、中国の発明ではないし、世界の多くの国や地域の刑法規定ともさほど違わない」と述べた。また、「『香港国安法』の実施から4カ月たち、香港情勢は安定しつつ、社会秩序も徐々に正常に回復している。『中華人民共和国憲法』『香港特別行政区基本法』と『一国二制度』に基づき、香港は必ず長期的繁栄、安定が実現できると信ずる」と語った。

新疆ウイグル自治区についての朝日新聞記者からの質問に対し、孔大使は「ここで、新疆関連の問題の本質はいわゆる人権、民族、宗教問題ではなく、反テロおよび反分裂問題であることを指摘しておかなければならない」と状況を説明。「近年新疆のいくつかの地方で法に基づいて教育訓練センターを設置して、注目を集めている。これについて、一部のメディアがいわれなき誹謗中傷をし、事実無根の報道をしている。個人的な見解では、結論を出す前に、せめて事実真相をしっかりと把握すべきだ。中国側が取った一連の措置は宗教過激主義のまん延、拡散、暴力テロ事件の頻発の勢いを効果的に抑え込むためである。受講者が教育訓練センターで受けたのは言語、法律、職業技能などの訓練と脱過激化カリキュラムであり、受講者の人身の自由と諸権利は法によって保障された。教育訓練センターはすでに解散し、受講者は全員学業を終えて、社会に復帰している。多くの人がこれで暴力過激主義団体の影響から脱却でき、真の社会復帰が果たせた。これまでに外国の1000人を超える外交使節、国際機構の職員とメディア関係者が前後して新疆を訪れた。新疆は国際社会の反テロ・脱過激化闘争に重要な貢献をし、貴重な経験を積んだというのが、彼らの共通の認識である」と理解を求めた。

 

協力と交流の強化で発展を実現

中国に対する米国の圧力が強まり、中米問題は激化している。日本の中には「中米戦争」が近いのではないかという懸念も聞かれるが、これについて孔大使は、「中米関係はいま国交樹立後最も厳しい局面にあり、各分野の交流・協力も著しく妨げられている。これは中国政府と人民が望んでいることではなく、米国、日本を含む国際社会の共通利益にも合致しない」と説明。「中米関係においても、地域情勢においても、当面の情勢は以前より複雑になったのは言うまでもない。強調しなければならないのは、いかなる困難とチャレンジを前にしても、われわれは自国の主権、安全、発展利益をしっかりと守っていかなければならないということだ」と強調した。その他の問題については、「台湾問題は中国の主権と領土保全および中国の核心的利益に関わる問題で、中米関係の政治的基礎に関わる原則的な問題でもある」「南中国海は国際政治の闘技場ではなく、南中国海の平和、安定を守ることは地域諸国の共通の願いで、対話による紛争の解決こそが正しい道である」と述べた。

孔大使は中米関係の本質は平和的共存だと指摘した。時代の変化を問わず、中米両国は平和的共存に尽力し、互いを尊重するという原則にのっとって、建設的対話で矛盾と相違に対して適切に対処し、安定した大国間関係の構築に努めるべきだとし、中米関係を発展させる中国の政策、立場は一貫し、衝突や対決をせず、相互尊重、協力・ウインウインの中米関係発展のために力を尽くしているとした。

世界的な問題について孔大使は、「目下世界は新型コロナウイルス感染症と景気後退の二重の打撃を受けており、今後さらに経済発展、移民管理、気候変動など、国家、民族、人種、世代を超えた一連のガバナンス問題に長期間直面するだろう。われわれが今日享受している繁栄は、人類の技術的進歩、歴史的英知の上に築かれている。国際社会はいわゆる『新冷戦』を人為的につくり出し、ストックの中の内部抗争で自己消耗すべきではなく、『国連憲章』の提唱する各国の主権平等の原則を履行し、異なる制度、異なる文明と平和的に共存し、世界が多極化に向かっている現実を受け入れよう。視野を広げ、共に平和を図り、発展を促して、フローの面で開拓・進取を図り、人類の長期的発展に関わり、子孫末代の福祉に関わる重大な問題に、より多くの関心と資源を集中させるべきだ。これは世界各国の普遍的な願いで、中国が積極的に推進している人類運命共同体構築の出発点と帰着点でもある」と見解を語った。

日本との関係については「日本は地域の重要国家である。中日両国は地域の振興、協力、発展および団結のために、重要な責任を果たしていかなければならない。これも新しい時代にふさわしい中日関係を構築する内容の一つである」と中日関係の重要性を説き、両国指導者はすでに幅広い分野で相互に有益な協力に関する合意に達していると指摘。「われわれは菅総理が安倍内閣の積極的な対中政策を継承し、引き続き安定した対中関係を発展させる意向を感じている。われわれも日本の新内閣と共に中日関係の持続的な改善、発展を推し進めていきたい」と希望した。

最後に孔大使は新たな1年に向け、「東京オリンピックは日本ないし世界においても大きなイベントである。日本が国民の心を奮い立たせ、国を作り直していく重要なチャンスでもある。残念なことに、東京オリンピックは感染症の影響で、延期せざるを得なくなった。われわれとしては日本が一日も早くコロナの感染に終止符を打ち、東京オリンピックを順調に開催することを心より祈っている。再来年、北京では冬季オリンピックが開催される。双方がお互いに支え合い、関連する協力を進めるべきである。双方が共にオリンピックの勢いを追い風に、交流協力をいっそう強め、自国および地域のさらなる発展を実現することを希望する」と、両国の相互交流に期待を寄せた。 

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